ロシアのピョンチャン(平昌)五輪出場は不可は理解できるが、個人資格での出場条件は不公平

 組織的なドーピングが行われていたとされるロシアがリオ五輪(夏期)に続き、ピョンチャン五輪(冬期)でも選手団としての出場は認められないと IOC が決定したと NHK が伝えています。

 組織ドーピングの代償として、選手団の出場が認められないという判定は理解できます。しかし、個人資格で出場する選手に対して要求される条件は不公平だと言えるでしょう。

 

 IOCとして、ロシアが組織的なドーピングとその隠蔽を行っていたと結論づけ、ロシアオリンピック委員会の資格を停止し、来年2月のピョンチャンオリンピックへの出場をロシア選手団として認めないことを発表しました。

 一方で、厳しい条件を満たした選手に限っては、個人の資格での出場を認めるとしています。

 IOCはその条件として、過去にあらゆるドーピング規定に違反していないことや、IOCの作業部会でピョンチャン大会までに合わせて2万件実施するドーピング検査を受けることなどを求めるとしています。

 

 

1:ドーピングはアンフェアなものだが、なくなることはない

 オリンピックは「公平に競い合うこと」が求められますが、勝つことに対する見返りが大きいこともあり、不正を働く選手・団体・国家で出てくることは防ぎようがありません。

 したがって、主催者に求められるのは「フェアな環境を用意すること」であり、不正に手を染めたことが明らかになった選手・団体・国家などを追放することが責務なのです。その点において、IOC が下したロシアへの処分は適切なものと言えるでしょう。

 また、「個人資格での出場」という形で救済ルートを作っていることも評価されるべき点です。

 しかし、その条件は不公平だと言わざるを得ません。なぜなら、IOC が提示した個人資格での参加条件はオリンピック・パラリンピックに参加する全選手に適応されているべきものだからです。

 

2:「潔白を求められるロシア人選手」と「真っ黒でも出場できる非ロシア人選手」

 IOC の決定で疑問に感じるのはロシア人選手にのみ、参加に当たって厳しい条件が科されていることです。これは非常に不公平と言えるでしょう。

  • 過去にあらゆるドーピング規定に違反していないこと
  • 事前のドーピング検査を受けること

 「フェアな環境」を用意する必要がある訳ですから、オリンピック・パラリンピックに参加する全選手に同じ条件を適用すべきです。ロシア人選手には性悪説で対応し、ロシア人選手以外には性善説で対応するという姿勢はあまりに不公平だと言えるでしょう。

 五輪から本気でドーピングを排除するつもりであるなら、全選手を対象にしなければなりません。予算に限りがあるなら、出場する選手数を大幅に削減するなどの選択肢は存在します。対策に乗り出すのであれば、検査体制や処分に至るプロセスなどを抜本的に見直す必要があるのです。

 

 特定の国だけに批判の矛先を向けるだけでは不十分であることを IOC や WADA は認識しなければならない状況になっていることが現実です。

 少なくとも、ロシア人のオリンピック選手が個人資格で参加する際に要求される水準は全参加選手に適用されるべきでしょう。そうした対策に乗り出す必要があると言えるのではないでしょうか。