2割弱の私大や短大が経営難に陥っている状況で教育無償化することは大学法人への無意味な延命策だ

 読売新聞が日本私立学校振興・共済事業団に情報開示を要求したことで初公開された財務データから、私立大学や短期大学を運営する法人の 17% が経営困難な状況にあることが判明したとのことです。

画像:私立大学・短大の経営状況(読売新聞より)

 少子化が進行し、学生の奪い合いが起きている状況で教育無償化を進める意味はないでしょう。なぜなら、現状で経営難に陥っている学校法人を税金で延命させるだけに終わる可能性が高いからです。

 

 私立大・短大を運営する全国660法人のうち112法人(17%)は経営困難な状態にあることが日本私立学校振興・共済事業団(東京)の調査でわかった。

 このうち21法人は経営を改善しないと、2019年度末までに破綻する恐れがあるとしている。18年以降は18歳人口が再び減少局面に入り、経営環境の一層の悪化が懸念される。

 

 「経営を改善する」と言っても、簡単なことではありません。「売上を伸ばすか、コストを削減するか」が主な再建策となるのですが、それを実現することは並大抵ではないからです。

 

1:生徒がいなければ、そもそも話にならない

 学校法人の経営状況を改善することは難しくなっています。なぜなら、日本では少子化が進み、生徒の絶対数が減少しているからです。

  • 売上を伸ばす
    • 生徒数を増やす
      → 少子化で日本人の生徒数は減少中
    • 授業料の値上げ
  • コストを減らす
    • 教員の人件費を削減
    • 不人気で不採算の学部を閉鎖

 まず、学生に選ばれない大学・短大の経営状況が苦しくなるのは当然です。「質の高い教育が受けられる学校」や「学費が割に合う学校」でなければ、生徒には魅力的に映らないでしょう。

 独自色を打ち出すことができなかった “Fランク” に位置する学校法人が生徒集めで思うような結果を手にすることができずに苦境に陥っていることが鮮明になっただけと言えるはずです。

 

2:教育無償化は “無能大学” への延命策

 左派を中心に「教育無償化」を主張していますが、これは貧困支援と言うよりも「大学法人への延命策」と言えるでしょう。

 学費は生徒が払うものでしたが、教育無償化で国の税金が投入されることになるのです。これにより、授業料を値上げすることで経営状況の改善を図る学校法人が現れることでしょう。

  • 従来
    • 『生徒の授業料』
  • 教育無償化後
    • 『生徒の授業料』:減
    • 『無償化による国からの収入』:増

 教育無償化で、私立大学にも「国公立大の学費に相当する額」が支給されるようになることが濃厚です。つまり、生徒が支払う学費は下がったが、無償分を加算すると従来の学費よりも高くなっているとの状況が起きることが想定できるのです。

 これが可能なのですから、教育無償化は「経営状況が厳しい “無能大学” への延命策」と言わざるを得ないと言えるでしょう。

 

 加計学園の獣医学部新設の際、多くのマスコミが「大学には国の税金が投入されている」と問題視したのです。現状で経営面での問題を抱える既存大学・短大にも同様の批判を向けてくれることでしょう。

 マスコミや文科省からの “天下り” で教員の人件費が膨らんだ上、学術的にもお荷物になっているという現状があるのです。こうした問題点にメスを入れて解決をした上で教育無償化の対象にすべきと言えるのではないでしょうか。