MLB で1億ドルを超える大型契約の締結が敬遠されている理由とは
日本のプロ野球はキャンプインをしましたが、メジャーリーグも2月中旬にはキャンプインが始まる日程となっています。
ただ、FA で総額1億ドルを超える大型契約が見込める選手の所属先が軒並み決まっていないことが予想外だと言えるでしょう。その理由は以下の要素をあげることができます。
1:金額に見合ったパフォーマンスを継続する選手が極めて限定的
大型契約が引き出せない理由は「コストパフォーマンスが悪い選手が目立つこと」です。過去に総額1億ドルを超える契約を締結した投手を例に出して見ることにしましょう。
- 契約内容に見合った活躍をしている投手
- C・カーショー(ドジャース)
- M・シャーザー(ナショナルズ)
- J・バーランダー(タイガース → アストロズ)
- S・ストラスバーグ(ナショナルズ)
- やや割高な契約となりつつある投手
- Z・グリンキー(ドジャース → ダイヤモンドバックス)
- F・ヘルナンデス(マリナーズ)
- 田中 将大(ヤンキース)
- D・プライス(レッドソックス)
- J・レスター(カブス)
- 不良債権と批判されても仕方のない成績の投手
- CC サバシア(ヤンキース)
- J・クエト(ジャイアンツ)
- M・ケイン(ジャイアンツ)
「契約内容に見合った投手」もいますが、「不良債権になる投手」もいるのです。そのため、球団側が巨額投資に慎重になることは自然な流れと言えるでしょう。
「良い契約だったと言える投手:2」、「契約内容がやや割高:6」、「不良債権と化す投手:2」という割合で分布する傾向がデータで示されているのであれば、球団側の財布の紐は引き締められて当然だと考えられます。
2:“ぜいたく税” は払いたくないし、来年用に予算を確保したい
各球団側が今年のオフに積極的に資金を投じようとしないのは2つの理由があります。1つは「ぜいたく税の回避」であり、もう1つは「来年のオフ用に浪費を避ける」というものです。
総年俸で基準値を超えると “ぜいたく税” の支払いが必要になります。1年目は 20% ですが3年連続となると、50% にまで上昇する仕組みです。
球場などの設備投資やファンサービスに使うべき資本を “ぜいたく税” という形で MLB に納付することは球団経営として好ましいことではありません。そのため、「どのタイミングで年俸総額の超過分をリセットするのか」が経営上の課題となるのです。
メジャーリーグではトレードが活発ですし、ワールドシリーズ制覇を狙うのであれば、シーズン中に戦力不足を補うトレードを敢行することが必要不可欠です。
“シーズン中” に動くことが定番化しているのですから、開幕前に FA 市場で選手を大型契約で無理に確保する必要性は低くなっていると言えるでしょう。こうした理由から球団側の動きが非常に重くなっているのです。
総額で1億ドルを超える大型契約を締結することは「今後最低5年はその選手(または投手)と一蓮托生」という意味を持ちます。
言い換えれば、「今後5年は FA 市場でポジション・役割が重なる選手の争奪戦には参加しない」と宣言していることになるのです。来年の FA に出てくる目ぼしい選手・投手に興味を示している球団は今年は支出を抑え、資金を来年用に回すでしょう。
ワールドシリーズ制覇の可能性があるなら、シーズン中のトレードで本気になれば良いという選択肢が球団には存在しているのです。極寒のストーブリーグになる可能性が極めて高くなったと言えるのではないでしょうか。