個人的な政治活動に科研費を流用?大阪大学・牟田教授らの研究に疑義が生じる

 文部科学省および日本学術振興会が交付を行う『科学研究費助成事業』という制度が存在します。

 目的は「独創的・先駆的な研究に対する助成を行う」となっていますが、その条件を満たしているのかが疑わしい研究も存在します。個人的な思想や政治的信条のために科研費を使用することは不適切と言えるでしょう。

 文系は個人的なイデオロギーが入りやすく、現行制度には問題がある状況です。例えば、大阪大学・牟田教授らの研究がその典型例となっています。

 

大阪大学・牟田和恵教授らの研究内容

 大阪大学・牟田和恵教授を代表とするメンバーは科研費を受け取り、下表に示す研究を行っていることがデータベースから確認できます。

表1:牟田和恵教授らが受け取った科研費と使い道(概要)
2014年度
(平成26年度)
  • 507万円(直接経費:390万円、間接経費:117万円)
  • 香港での調査研究を実施
  • 文献研究を2度開催
  • チュートリアルサイトの設計
  • WAN のサイト上で公開の予定
  • 動画作成料100万円、サイト構築費95万円の見込み
2015年度
(平成27年度)
  • 585万円(直接経費:450万円、間接経費:135万円)
  • 中国およびイタリア・トリノでの調査研究
  • チュートリアルビデオの作成
  • “碧志摩メグ” に関する意見交換
  • セミナー開催
  • サイト公開は親サイトである WAN のサイトリニューアルにより延期
2016年度
(平成28年度)
  • 364万円(直接経費:280万円、間接経費:84万円)
  • チュートリアルサイトを公開
  • 自前のサーバーで運用
  • 中国や台湾で “慰安婦問題” の支援運動に対する調査・交流・連携を実施
2017年度
(平成29年度)
  • 299万円(直接経費:230万円、間接経費:69万円)
累積
  • 1755万円(直接経費:1350万円、間接経費:405万円)
  • チュートリアルサイトの作成・公開
  • 海外フェミニストとの交流
  • “慰安婦問題” への参画
  • “萌えキャラ” に対する意見交換

 1755万円も投じる必要性があったと言えるのでしょうか。牟田教授らの研究が “独創的で先駆的” と呼べるものではないという内容・成果であるからです。

 しかも、いくつかの問題点があるため、それらを指摘しておくことにしましょう。

 

問題点1:『牟田教授らの研究グループ』と『WAN』の関係性

 まず、この研究そのものが私的流用疑惑のあるものです。

 牟田教授らの研究は認定NPO法人『ウィメンズアクションネットワーク(WAN)』との連携がメインとしてスタートしていますが、牟田教授は WAN の理事です。また、研究分担者として名を連ねる全員が WAN で下表の役割を担っています。

表2:牟田和恵教授らの研究チームの WAN での肩書き
副理事長
(サイト担当)
伊田久美子(大阪府大・教授)
理事 岡野八代(同志社大・教授)、古久保さくら(大阪市大・准教授)、牟田和恵(大阪大・教授)
サイトディレクションチーム 熱田敬子(早稲田大学)、荒木菜穂(大阪府大・研究員)、伊田久美子、岡野八代、古久保さくら、牟田和恵
B-Wan
(書籍担当)
荒木菜穂、岡野八代
W-Wan
(英語担当)
北村文(津田塾大・講師)

 認定NPO法人『ウィメンズアクションネットワーク(WAN)』でサイト運営などを担当する責任者クラスが「科研費を使って同様のサイトを構築・運営する」という申請が認められているのです。

 ちなみに、牟田教授らの研究グループの成果物である movie-tutorial.info のドメインを保持しているのは『エックスポイントワン』であり、『WAN』から有償でサイトの管理を請け負っている会社です。なお、2017年度のサイト運営費は140万4000円であると活動報告書(PDF)に記載されています。

 わざわざ、科研費を使って新規サイトを構築する必要があったのでしょうか。サイト運営費として2016年度が約120万円、2017年度は約140万円をつぎ込める資金力があることは明確なのですから「科研費の不適切な利用」との疑念を抱かれて当然と言えるはずです。

 

問題点2:『科研費で作成したサイト』

 次に、『科研費で作成したサイト』そのものも問題視されるべき水準です。

 2016年度に構築されたにもかかわらず、スマホには未対応。提供されているコンテンツも、「動画サイトへのアップロード方法」と Youtuber やガジェット好きな人が既に良質なコンテンツを公開済のネタばかりです。

 しかも、動画作成料100万円・サイト構築費95万円と自ら言及しているのです。「本当にこれだけの金額を投じたのか」という点で疑問が残ると言えるでしょう。

 また、科研費で作成されたサイトである movie-tutorial.info は休眠状態となっています。「サイト作成」を facebook や twitter で紹介することもなければ、運用されている様子すら伺えないのです。

 これでは「サイト作成はダミー(=アリバイ作り)で、科研費を別の項目に使うことが本命」という疑惑を持たれることは仕方のないことです。税金が原資となっている科研費を使っている以上、成果などは誰でも簡単に確認できるよう情報公開をする必要があると言えるはずです。

 

「理系分野の独創的・先駆的な研究」に科研費を重点投下すべきだ

 科研費は「独創的・先駆的な研究」のための制度ですから、それに応じた運用をしなければなりません。

 当然、文系分野より理系分野に多く配分されているべきものです。しかし、ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授でさえ、寄付を募っている現状なのです。

 現在進行形で “独創的・先駆的な研究” を行っている・行おうとしている理系研究者(特に若手)は資金難で苦境に立たされている可能性があると言えるでしょう。

 その反面、評価基準があやふやな文系研究者は私的流用と疑われる内容でも豊富な資金が流れています。

 大阪大学の牟田教授を代表者とする研究内容はまさにその典型例です。自らが理事を務める認定NPO法人の活動と内容が重複する研究のために科研費を使っているのです。このようなケースは氷山の一角と言えるでしょう。

 文系の研究では用途外使用が簡単にできてしまうため、適正な執行がされているかの確認は必須です。私的流用などが疑われるケースでは精査の上、問題があった際は責任を取らせる体制を構築・運営することが必要と言えるのではないでしょうか。