朝日新聞のスクープとなった「森友文書の書き換え問題」、政権批判よりも先に批判すべき対象がある

 朝日新聞が報じた「森友文書の書き換え・改ざん疑惑」は財務省が書き換えを認めたため、スクープとなりました。

 ただ、書き換え前の文書にも安倍首相が関与した根拠はありませんでした。「安倍首相が国有地を安価で払い下げるために関与した」というシナリオは改めて否定されており、倒閣運動を現時点で焚きつけることは間違いと言えるでしょう。

 「(不慮・故意に関係なく)官僚のミスで内閣を潰せる」という “悪しき前例” ができてしまう状況が作られることこそ、民主主義の危機と断言できるからです。政権批判よりも優先して批判すべき対象を見落としていることが問題なのです。

 

1:財務省(近畿財務局)

 まずは「決裁文書を書き換えていた」ことが明るみに出た財務省です。

 基本的に “決裁処理が完了した文書” は変更すべきではありません。しかし、記載ミスは起きるものですから、変更するための手順は用意しておくことは必要不可欠です。

 「ミスは絶対許されない」という国民性が問題の一因と言えるでしょう。ミスで懲戒になるのであれば、隠蔽に入る人物が出てきて当然です。『認識ある過失』に手を染めるインセンティブが組織内に存在する状況は解消しなければならないことなのです。

 財務省を含む省庁のほとんどが同様の “修正” を行うことが慣例化していると見るべきです。

 民主党・菅政権時には厚生局で情報公開文書の改ざんが発覚しました。また、文科省でも天下り文書を作成するなど、官僚へのガバナンスが機能しているとは言えない事態が起きています。

 つまり、与野党に関係なく『公文書管理問題』として取り組まなければならないのです。期待されていることは『霞が関の改革・改善』であり、官僚のミスを理由に倒閣運動を煽ることではないのです。

 

2:朝日新聞

 次に、朝日新聞はスクープの根拠となったエビデンスを提示しなければなりません。

 “書き換えた文書” を提示した財務省の姿勢は容認・擁護できるものではありませんが、記事の根拠を示さない朝日新聞の姿勢も同様です。証拠を提示せず、疑惑で国会を止められる状況を容認することは国民生活に悪影響を及ぼすことは明らかだからです。

 なぜ、記事の根拠となった “確認した文書” を開示しないのでしょうか。

 「大阪地検からのリークを基に記事を書いた」のであれば、意地でも “確認した文書” は開示しないでしょう。なぜなら、国家公務員法違反の共犯となるからです。

 つまり、コンプライアンス違反をしている可能性が高く、広告主が逃げ出し、経営が傾くリスクがあるのです。朝日新聞が「法を超える正義がある」と主張して世間に響くかがポイントですが、“疑惑報道” で国会が頻繁に停滞する流れが固まりつつある現状は大きく懸念すべき事態と言えるでしょう。

 

3:大阪地検

 大阪地検も批判を受けるべき対象です。なぜなら、大阪地検は「豊中市の国有地が不当に安く払い下げれた」と近畿財務局職員らを背任罪に問う告発を受理していたからです。

 しかし、国有地が不当に安く払い下げれた背任容疑となるような証拠はなく、不起訴となる可能性が高いでしょう。

 ところが、そのタイミングで背任とは関係のない『決裁文書の書き換え』の疑惑を朝日新聞が報じたのです。

 「不起訴案件であることに不満を覚えた検察関係者からのリーク」という疑いが残っている状態であり、検察不信を招く要因になっています。「背任罪は不起訴だが、決裁文書の書き換えはあった」という形での公式発表とならなかった理由を説明する必要があると言えるでしょう。

 

4:安倍政権

 「官僚が忖度した」との理由で安倍政権に対する倒閣運動をすることは完全に順序が間違っています。

 まずは『公文書管理』の問題での対処を求めた上で、「安倍政権の対応は不十分」となって批判ができるようになるのです。また、「麻生財務大臣の辞任」を求めるにしても、まずは「事実確認」をすることが先決です。

 再発防止策を何も策定せず、「綱紀粛正を図る」と述べるだけでは意味がありません。

 「綱紀粛正を図る」という言葉で「官僚の隠蔽行為」を黙認することの方が、忖度という形で “貸し” を作る行為になるからです。これは『古い政治手法』であり、政治不信を呼ぶ原因となるでしょう。

 順番を間違った批判では何も生み出さないという現実を見据える必要があると言えるのではないでしょうか。