朝日新聞の “販売部数” は500万部台であり、「400万部を切った」というのは “実配部数” なのではないか?
朝日新聞で編集委員などを務めた川村二郎氏が『デイリー新潮』で「朝日新聞の社内で部数が400万部を切ったとの噂が流れている」と主張しています。
この「部数」という言葉がどういった定義で用いられているかによるでしょう。なぜなら、朝日新聞の「販売部数」は500万部台であることが確認できますが、一般家庭に「実際に配送されている部数」は400万部を切っていても不思議ではないからです。
記者からのメールは、部数の激減を伝えるもので、「特ダネに浮かれている場合ではないですよ」と言っていた。特ダネが部数増に直結しないことは新聞社の常識だが、それにしてもここまで減ったとは、新聞の将来に悲観的な私にも、想定を越えるものだった。
メールによると、朝日が二月に公表した部数は五百万台だったが、社内では四百万部を切ったというのがもっぱらの噂だという。
新聞に「絶対的な情報源」としての価値を見出している人はいないでしょう。
なぜなら、1日2回の情報発信という制約が存在するため、情報の鮮度が低いからです。また、情報伝達に使える要素は「文字情報」と「画像情報」だけであり、「映像情報」を使えるテレビやインターネットに遅れを取る結果になっているからです。
つまり、“現行のビジネスモデル” を継続する限り、新聞業界が斜陽産業であることは否定できず、苦しい経営状況に置かれているのです。
朝日新聞の販売部数(2018年1月〜3月の平均)
朝日新聞の販売部数ですが、『日本ABC協会』が発行する「新聞発行社レポート」に掲載されている最新販売部数から確認することが可能です。
読売新聞 | 朝日新聞 | |
---|---|---|
2017年 1〜6月平均 |
8,830,415 | 6,258,582 |
2017年 7〜12月平均 |
8,732,512 | 6,113,315 |
2018年1月 | 8,676,028 (前月比:+ 0.18%) |
6,019,682 (前月比:- 0.32%) |
2018年2月 | 8,560,861 (前月比:- 1.33%) |
5,989,345 (前月比:- 0.50%) |
2018年3月 | 8,503,641 (前月比:- 0.67%) |
5,980,497 (前月比:- 0.15%) |
2018年 1〜3月平均 |
8,580,176 | 5,996,508 |
2018年1月から3月までの朝日新聞の販売部数は599万6508部。3ヶ月平均の販売部数で600万部を切り、500万部台に落ち込んでしまいましたが、400万部を切ったという事実はありません。
ただ、新聞業界には「押し紙」という “悪しき制度” が存在します。
そのため、朝日新聞が「押し紙を除いた実際の販売部数(=実際に配送される部数)が400万部を切った」というデータを持っている可能性は残されているだけに、情報公開が待たれるところです。
“押し紙” 問題とは
新聞社は「発行部数>販売部数」という形を採用しています。これは書籍で発生する乱丁・落丁と同様の問題が新聞でも起きる可能性があるため、“ある程度” の余裕を持った形で印刷しておく必要性があるからです。
ところが、業績不振を受けた新聞業界が「押し紙」という形で販売店に損失を押し付けるという “下請けいじめ” に該当する行為に手を染めたのです。
新聞社が「公称」として用いるのは「販売部数」でしょう。しかし、新聞社が新聞販売店にノルマという形で過剰に押し付けていることが “押し紙問題” として起きているのです。
新聞社が取引関係上の優位性を悪用した「下請けいじめ」に手を染めているのですから、この問題の解決に向けて乗り出さない新聞社の姿勢は厳しく非難されるべきものと言えるはずです。
“押し紙”による残紙の割合が 30% 強なら、400万部割れは事実と言える
朝日新聞の2018年1月から3月の平均販売部数は約600万部です。3月は598万部でしたので、残紙の割合次第では部数400万部割れが起きていても、不思議ではありません。
- 残紙率 30%:598 x 0.7 = 418万6000部
- 残紙率 34%:598 x 0.66 = 394万6800部
朝日新聞は「一般家庭に毎朝配達される新聞の販売部数」に対するデータを持っているはずです。新聞広告だけでなく、折り込みチラシによる収入にもなる “ビジネスの根幹” に該当する数字を「経営陣が知らない」ということはあり得ないと言えるからです。
ただ、トップシークレットであることに加え、公称とのズレが発覚すると広告主に対して詐欺行為を働いていたことが明るみに出るというリスクがあります。そのため、「一般家庭に毎朝配達される新聞の販売部数」が公表されることはないと言えるでしょう。
どの新聞社も政治に対し、「徹底した情報公開」を要求しています。それなら、“押し紙問題” という自社が関係するスキャンダルが指摘されている新聞社が「一般家庭に毎朝配達される新聞の販売部数」を率先して公表し、『まず隗より始めよ』を実践すべきと言えるのではないでしょうか。
参考数値
ー 最新販売部数(2018年1月)
ー 最新販売部数(2018年2月)