NHK、「加計・獣医学部の『申請』を知った時期」を混同して安倍首相を批判する
NHK が「愛媛県が国会に提出した加計関連の文書で、3年前に安倍首相は獣医学部新設の構想を知っていた」と報じています。「国会での答弁と異なる」と批判したいのでしょうが、『計画』と『申請』を混同しており、問題のある記事と言わざるを得ません。
■ NHK が報じた記事
NHK 社会部が「独自ネタ」とツイートした記事に掲載されている内容は以下のとおりです。
NHKが入手した文書には、当時、県が学園側から受けた報告の内容として、「平成27年2月25日、理事長が首相と15分程度面談。理事長から獣医師養成系大学空白地帯の今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。首相からは『そういう新しい獣医大学の考えはいいね』とのコメントあり」と記載されています。
(中略)
安倍総理大臣は、加計学園の獣医学部新設の計画について初めて知ったのは、学園が国家戦略特区の事業者に選定された去年1月20日だと国会で繰り返し説明してきました。
この記事には問題点が2つ存在します。
1点目は「安倍首相が加計孝太郎氏と平成27年(2015年)2月25日に面談した」というです。もう1点は「加計学園の獣医学部新設の計画について初めて知った〜」という部分です。
前者は事実と異なる可能性が強く、後者は完全な捏造です。NHK の報じた記事には極めて大きな問題があると言えるでしょう。
■ 事実
1:安倍首相が「2017年1月20日に知った」と答弁した理由
安倍首相が「平成29年(2017年)1月20日に知った」と答弁を行ったのは平成29年7月24日に行われた衆院予算委員会でです。
大串博志議員が「加計の(3度目の国家戦略特区)申請を知ったのはいつか」と質問したのです。回答として、極めて当然で真っ当なものと言えるでしょう。
なぜなら、獣医学部の運営者になることを希望する加計学園が『申請』を行うには「獣医学部新設の許可を受けた自治体」が存在することが大前提です。そのため、国家戦略特区の諮問会議から総理に報告が上がるまで知りようのないことなのです。
2:愛媛県・今治市と加計学園の関係
愛媛県と今治市は獣医学部を新設することが悲願でした。ところが、運営者にあたる大学法人からは見向きもされず、加計学園だけが賛同してくれたという状況です。
- 今治市が国家戦略特区に3度目の申請(2015年6月)
→ 過去に構造改革特区で10回以上申請も実らず - 国家戦略特区で獣医学部新設が容認(2017年1月20日)
獣医学部が「1校のみ新設可」となったのは獣医師会の “働きかけ” によるものです。また、「是が非でも獣医学部を新設したい」という学校法人があれば、今治市に加計学園を上回る内容を提示していれば運営者になれたのです。
「加計学園が獣医学部新設を主導した」のではないですし、獣医学部の運営候補に新しい学校法人が加えられる可能性もあったのです。メディアが報じる内容に注意する必要があると言えるでしょう。
3:安倍首相も『(加計学園が関わる)構想』は以前から知っている
では、安倍首相が『構想』をいつ知っていたのかと言いますと、平成29年(2017年)5月8日の衆院予算委員会で宮本岳志議員(共産党)の質問に次のように答弁しています。
獣医学部を新設する主体については、平成十九年十一月の今治市等による構造改革特区提案において加計学園が候補として記載されていました。第二次安倍政権発足後も、内閣総理大臣が本部長である構造改革特区本部においてこの提案に対する政府の対応方針を決定しており、他の多くの案件と同様、本件についても知り得る立場にあったというのは御承知のとおりだろうと思いますが、他方、この加計学園から私に依頼等があったことは一切ないということは申し添えておきたいと思います。
平成19年(2007年)の『構造改革特区』での提案で候補として加計学園の名前があったと発言しています。つまり、10年以上も前から “知り得る立場” だったのです。
ただ、「いつから正確に知っていたのか」は不明ですが、2017年1月まで総理と非常に親しい(はずの)加計氏が理事長を務める学校法人の獣医学部新設が阻止され続けてきたことは事実です。「加計ありき」であるなら、第一次安倍政権時に認可を得ていることでしょう。
4:首相動静にも掲載されない形で加計氏と密談する理由はない
NHK が報じた「平成27年(2015年)2月25日に総理と加計氏が面談した」というメモは信憑性が問われます。
まず、総理と加計氏は食事やゴルフをしていると首相動静に度々掲載されています。「堂々と会っている間柄」なのですから、2月25日だけ番記者に見つからないよう密談する理由がないのです。
次に、愛媛県が発表した文書は「又聞きの又聞き」になっています。信憑性が問われるものですし、面談したとされる当事者は否定しています。
記載されていた内容が事実であったとしても、「政治的な処理は難しい」とゼロ回答であることが記されています。また、2015年2月に「いいね」と言った安倍首相が『構造改革特区』の提案をその後に却下しているのですから不正を裏付ける証拠はないと言えるでしょう。
裏付け作業という本分を忘れたメディアによる “雑な疑惑報道” には大きな問題があると言わざるを得ないのではないでしょうか。