「最低賃金を引き上げた韓国で低所得層の所得が落ち込み、格差が拡大することになった」という現実

 日本では一部の “市民団体” が「最低賃金の引き上げ」を要求する活動を行っています。ただ、その政策を実施したところで、“市民団体” が期待する成果は得られないでしょう。

 なぜなら、ムン・ジェイン政権(韓国)が「最低賃金の引き上げ」を実施しましたが、低所得層の収入が落ち込み、格差が拡大した朝鮮日報が報じているからです。

 

 韓国政府は庶民生活を改善するためだとして、今年から最低賃金を大幅に引き上げたが、1ー3月期の低所得層の所得は2003年の統計開始以来、最大の落ち込みを示した。そして、高所得層の所得は過去最大の伸びを記録した。庶民の懐を満たし、消費を刺激し、それを通じて経済成長をけん引するという現政権の「所得主導成長」政策が期待とは正反対の結果をもたらしたことで、その効果をめぐる論争がさらにエスカレートしそうだ。

 「本末転倒の結果」と呼ぶに相応しい結果が現れたと言えるでしょう。

 「低所得層を救済するため」との目的で実施された “最低賃金の引き上げ” が「低所得層の所得を減らし、逆に高所得者層に恩恵を与えた」からです。なぜ、このような事態が起きたのかを『最低賃金の引き上げを要求する界隈』が説明しなければなりません。

 それができなければ、支持が広がることはないと言えるからです。

 

最低賃金の引き上げで「低所得層の生活が厳しくなった」という現実

 朝鮮日報が記事で紹介していた所得変動図を見れは一目瞭然と言えるでしょう。

画像:朝鮮日報が報じた韓国の所得推移

 所得が低いほど減少幅が大きく、逆に所得が多いほど増大幅が大きくなっているのです。これは「最低賃金の引き上げを導入した結果」なのです。

 『弱者のための政策』として日本の野党は「最低賃金の引き上げ」を要求していますが、韓国で起きた現実をどのように分析しているのかを説明する責務があると言えるのです。

 

「賃金に見合わない従業員は切り捨てられる」という事態が韓国で発生

 「時給1000円が最低でも時給1500円」に(法律で)引き上げられることになれば、時給1500円を払う価値のある仕事ができない人材は解雇される結果になります。

  1. 人件費の増加分を『商品価格』に転嫁することは可能
  2. 『商品価格』と『商品価値』は別物
  3. 『商品価格』>『商品価値』では顧客は購入しない

 最低賃金を引き上げた場合、事業者か購入者が負担を引き受けることになります。

 前者の場合、売上高は維持できるでしょうが企業の収益性が悪化します。後者の場合は、『価格』は上がるが『価値』は据え置きという事態が生じるため顧客離れが起きることでしょう。

 つまり、政府が法律で規制する形での賃上げは結果的に従業員の雇用環境を悪化させる原因になり得る極めて危険な手法なのです。

 

 「最低賃金を引き上げた韓国で格差が拡大しているのは例外的な事例」と日本の野党や市民団体が主張するのであれば、例外的な事例であるとする根拠を示さなければなりません。

 “労働貴族” と揶揄される「高給を得ている組合員をさらに裕福にする政策」が推進されるだけになるでしょう。『弱者の味方』を名乗る一方で我田引水を目論むような輩に扇動されることを避ける必要があります。

 問題が指摘される政策を『弱者のため』という理由で採用させようとする活動家に注意する必要があると言えるのではないでしょうか。