デマを発信した人も拡散させた人も罪に問われる可能性。ただし、マスコミ様は適用対象外

 「インターネットや SNS でデマ情報を発信したり、拡散させた人も偽計業務妨害罪に問われる可能性がある」と菊地幸夫弁護士が大阪の関西テレビで法律解説を行った番組内容を Yahoo! が掲載しています。

 ただ、この説明にも抜けている部分を知っておく必要があるでしょう。なぜなら、デマを発信・拡散させてもテレビや新聞は『偽計業務妨害罪』に問われたことはないからです。

 「テレビや新聞が伝える情報は正確」という先入観を持つことはリスクが極めて高いだけに、ネット情報と同様に鵜呑みにすることは控える必要があると言えるでしょう。

 

菊地幸夫弁護士が関西テレビの番組内で述べた見解

 見解を述べたのは日本テレビ系列『行列のできる法律相談所』にも出演する菊地幸夫弁護士です。6月20日に放送されたフジテレビ系列の関西テレビの番組『報道ランナー』で以下の内容を述べました。

  • デマを発信した人も、“拡散した人” も偽計業務妨害罪に問われる可能性がある
  • 拡散した人は言わば「共犯」。立件された事例は存在する
  • 「わざと偽の情報を流してやる!」という人は罪なる可能性がある
  • 偽の情報と知らなかった場合は罪には該当しないと考えられる

 要するに、「意図的に偽情報やデマを流す、または拡散させると、偽計業務妨害罪に問われる可能性が高い」と言う説明です。

 菊地弁護士の説明は論理的ですし、間違ったものはないと言えるでしょう。ただ、対象がインターネットに限定されていることが疑念を抱かせる要因になっているのです。

 

誤情報(≒デマ)を流したテレビや新聞は罪に問われないのか

 ネット上には「デマ情報」が流れています。この点は否定することのできない事実です。

 「誰でも情報発信ができる」のですから、デマを流す輩も一定数存在することまで否定できないでしょう。ただし、それは既存メディアにも言えることです。

 ところが、テレビや新聞などのマスコミはデマを発信・拡散したことが理由で偽計業務妨害罪に問われたことはあるでしょうか。

 訂正があれば良い方で、ほとんどは “野放し状態” です。「デマ・偽情報とは知らなかった」、「取材対象者の発言を流しただけ」との理由で黙認されている現状は是正する必要があると言えるでしょう。

 

既存メディアとインターネットの双方に同じ基準を設ける必要がある

 新聞やテレビがネットに攻撃的な姿勢を採る理由は「シェアを奪っているライバルだから」でしょう。

 既存メディアは SNS アカウントを使ってネットユーザーに情報の独占提供を依頼し、その情報を自社で扱うニュース素材に使っています。個人アカウントのネット上での行為だけが法律で規制されることは奇妙なことです。

 メディアもネットも、情報を扱っていることは同じです。伝達経路が異なるだけですから、「デマや誤情報を拡散させた行為」についても同じ基準による処罰に科すべきです。

 特に、“拡散” という点で既存メディアが厳罰に処されない訳ですから、ネットの個人ユーザーに自制を促しても効果は低いと考えられます。

 

 東日本大震災に関する福島県や放射能デマを報じたり、拡散したりする既存メディアこそ、『偽計業務妨害罪』に問われるべきと言えるでしょう。ネットだけを悪者にしても、既存メディアの信頼度が上がることはないという現実に目を向けるべきと言えるのではないでしょうか。