時事通信が法令に基づく対処をした安倍政権に対し、「後手に回った」との印象操作を行う

 西日本を襲った豪雨災害において、時事通信が「政府の非常災害対策本部会議への格上げが遅く、後手に回った感は否めない」と批判しています。ですが、この記事は事実誤認に基づく内容であり、批判の矛先を間違えています。

画像:時事通信の記事に対するファクトチェック

 

■ 時事通信が報じた内容

 時事通信は9日(火)に報じた記事の中で、安倍首相の対応を次のように批判しました。

 首相は大雨の予報が出ていた5日夜、自民党議員との懇親会に出席。総裁選に向けた地方行脚の一環だった鹿児島、宮崎両県訪問も前日の6日に中止を決めた。関係閣僚会議を非常災害対策本部会議に格上げしたのは、多数の死者が出ていることが判明した後の8日で、後手に回った感は否めない。

 要するに、「安倍首相の対応が後手に回ったため、被害が拡大した」との印象を読者に与えたいのでしょう。『報道』として問題のある内容となっています。

 

■ 事実

1:政府が『非常災害対策本部』を設置できるのは災害発生後

 時事通信が確認しなければならないのは『非常災害対策本部』を設置できる条件です。なぜなら、災害対策基本法(第24条)で次のように定義されているからです。

第二十四条 非常災害が発生した場合において、当該災害の規模その他の状況により当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、内閣府設置法第四十条第二項の規定にかかわらず、臨時に内閣府に非常災害対策本部を設置することができる。

 総理大臣は『非常災害対策本部』を設置できる権限を有していますが、「非常災害が発生した場合」との条件付きです。

 つまり、被害が発生している(= 今回の場合は多数の死者が確認された)ことを確認しなければ、設置することは法的にできないのです。この事実を無視し、「後手に回った」と政府を批判することは論外であると言わざるを得ません。

 

2:「災害発生の恐れ」に対応するのは『都道府県(または市町村)の災害対策本部』である

 では、「災害が発生する恐れがある場合」への対処はどう定められているのか。その点についても、災害対策基本法(第23条)で定められています。

第二十三条 都道府県の地域について災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合において、防災の推進を図るため必要があると認めるときは、都道府県知事は、都道府県地域防災計画の定めるところにより、都道府県災害対策本部を設置することができる。

(中略)

第二十三条の二 市町村の地域について災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合において、防災の推進を図るため必要があると認めるときは、市町村長は、市町村地域防災計画の定めるところにより、市町村災害対策本部を設置することができる。

 「崖崩れが発生しそう」、「河川が氾濫しそう」という “災害が発生するおそれのある場合” は都道府県知事(または市町村長)に『災害対策本部』を設置する権限があると明記されているのです。

 “大雨の予報” が出ていた5日(木)の時点で『災害対策本部』が設置できるのは都道府県か市町村の首長だけです。

 もし、その時点で『非常災害対策本部』が(安倍首相によって)設置されていたのであれば、明確な法令違反に該当する行為であるとの認識を持たなければなりません。時事通信の記事には政権批判のための印象操作が込められていると言えるでしょう。

 

 安倍首相は豪雨災害の規模から外遊を取り止めました。時事通信は「(被災者には)心強い行動だ」、「首相の判断で復旧作業がより迅速なる」などと評価するのでしょうか。

 災害を利用した印象操作を行い、既に政権の足を引っ張り始めている報道が出始めています。そうした報道に対して厳しい批判を向ける必要があると言えるのではないでしょうか。