受託収賄で逮捕された文科省局長が容疑を否認するも、弁明の内容から無罪とは言いづらい

 朝日新聞によりますと、受託収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕された文科省の現役局長が容疑を否認しているとのことです。

 事実関係は裁判で争われることになるでしょう。ただ、局長側の主張内容では「受託収賄はなかった」と認定される可能性は低いと思われます。

 

 文部科学省の私立大学支援事業をめぐる汚職事件で、前科学技術・学術政策局長の佐野太容疑者(58)が東京地検特捜部の調べに、不正合格したとされる入試結果について「息子への加点は知らなかった」と供述し、賄賂の認識を否定していることが関係者への取材でわかった。

 (中略)

 佐野前局長は特捜部の調べに、息子は不正合格ではなかったと説明。そのうえで、同大側にアドバイスしたことは認め、「知人として行った。事業選定の職務権限はなかった」と説明し、逮捕容疑を否認しているという。

 おそらく、局長側は「大学側が勝手に点数を加算したのであって、自分は無関係」との立場を主張するでしょう。

 逮捕容疑は『受託収賄』ですから、「収賄(= 賄賂に当たるものを受け取ること)はなかった」と裁判で認定されれば、無罪となります。そのため、容疑を否認しているものと考えられます。

 ただ、否認の説明内容が不味く、墓穴を掘りつつあると言えるでしょう。

 

選定の権限がないにも関わらず、「ある」と見せかけて利益を得る行為は詐欺

 局長は「事業選定の職務権限はなかった」と主張しています。

 もし、選定の権限がないことを自覚しているにも関わらず、相手に「ある」と見せかけて利益を得ていれば、大きな問題となります。なぜなら、典型的な『詐欺行為』に該当するからです。

 局長は「息子の入試点数を上乗せ」という “見返り” を得ています。利益を得ている訳ですから、苦しい弁解をせざるを得ない立場と言えるでしょう。

 

『選定権限』はないが、『選考基準』を知る立場の人物が “アドバイス” をしたという事実

 局長の行為で問題なのは「事業選定の基準を知り得る立場で申請者にアドバイスをしていた」ということでしょう。これは行政官としてアウトです。

  • 入試の場合:
    • 試験問題を知り得る立場の教員が受験生に “傾向と対策” をアドバイス
    • 当該の教員は合格選定者ではない
  • 文科省による事業選定の場合:
    • 事業選定の基準を知り得る立場の官僚が申請大学に “傾向と対策” をアドバイス
    • 当該の官僚は事業選定者ではない

 内部情報を知り得る立場にある人物が申請書類の書き方を “アドバイス” することは極めてアンフェアな行為です。

 入試の情報を知り得る大学教員が受験生に答案の書き方を指導すれば、公平性が歪められることになるでしょう。「権限がなかったこと」だけでは免責事項にはなりません。「合格水準に達するための書き方」を指導した疑いがある訳ですから、問題のある行為と言えるでしょう。

 

 官僚が「自らの利益のために行政を歪めていた」のです。マスコミは文科省の事務次官で天下りに手を染めていた前川喜平氏を持ち上げて政権批判をした手前、批判に対しては消極的になるでしょう。

 マスコミ社員の天下り先を用意してくれる文科省に忖度するため、別の問題を騒ぎ立てることが予想されます。時系列を無視し、難癖を付ける形で政権批判をするでしょうから、マスコミに対しても厳しい批判を向ける必要があると言えるのではないでしょうか。