WWE 並みの “悪の会長” が日本ボクシング連盟のトップに君臨していると告発され、大混乱が生じる

 アマチュアボクシングを統括する日本ボクシング連盟の山根明会長が「助成金の流用」や「試合判定の不正疑惑」を指摘され、混乱が生じていると日経新聞が伝えています。

 会長自身が「助成金の流用」を認めている時点で組織のトップに立つ者として不適格です。キャラクターである “WWE の悪徳会長” を現実化してしまったのですから、責任を取る必要があると言えるでしょう。

 

 各都道府県の連盟会長ら333人が名を連ねた告発状では、リオデジャネイロ五輪代表の成松大介選手が交付を受けた日本スポーツ振興センター(JSC)からのアスリート助成金240万円を山根会長の指示で3選手で分け合った事実や、同会長がかつて役員を務めた奈良県の選手に勝たせるように審判への圧力があったこと、会長への過剰な接待の強要などを指摘している。

 山根会長は共同通信などの取材に助成金の流用は認めたが、それ以外の疑義は否定している。

 JSC からの助成金を流用することは禁じられています。山根明会長は「ある個人の選手に支給された助成金を3選手で分け合うよう指示した」のですから、この行為を理由に解任されるべき立場なのです。

 また、他にも複数の “疑惑” を抱えた立場であり、このまま会長の椅子に座り続けることはマイナスしかもたらさないと言えるでしょう。

 

金とポストの配分権限が強くて営業力が不要な組織ほど、トップの独裁力は強くなる

 トップの独裁による不正行為はスポーツ界では珍しいことではありません。サッカーの国際団体である FIFA でも発生したことですし、起きやすい理由があるからです。

  • 組織が収益を上げるための営業を必要としない
    • 国や上位団体から補助金を受け取る立場
    • 人気スポーツの管轄を独占する立場
  • 金とポストの配分権限をトップが持っている

 組織を運営するには「資金」が必要です。会社では商品や製品を販売することで資金を得るのですが、スポーツ団体(特にアマチュア)だと補助金が唯一の収益源となっている場合があります。

 この場合、団体の運営資金が枯渇する事態は起こり得ない訳ですから、トップが「金」と「ポスト」の配分で絶対的な権力を手にすることが極めて容易になるのです。組織運営の才能がなくても経営に行き詰まらないのですから、組織の腐敗が進むことは当然と言えるでしょう。

 

禁じられた助成金の流用を指示する人物に公的組織のトップに立つ資格はない

 「会長の指示を素直に実行する」という点では組織統治は機能していると言えるでしょう。しかし、これは “指示の内容が適切だった場合” の話です。

 今回の山根明会長のように “禁じられた行為を強要する” という指示を出すことは論外です。なぜなら、法的にも問題のあるトップからの指示を組織の構成員が忠実に実行してしまうと、組織全体が間違った方向に進んでしまうことになるからです。

 そのため、山根会長がトップに今までと同様に君臨することはあってはなりません。山根会長の同調者も共犯関係であり、影響力を排除することは不可避と言えるでしょう。

 

ボクシンググローブの連盟認定・販売を行う『杉スポーツ』との契約関係も問題である

 また、山根会長は『杉スポーツ』との契約関係についても説明を行わなければならない立場にあります。

  • 『杉スポーツ』がボクシンググローブの連盟認定および販売を独占的に行っている
  • グローブ購入費の振込先が山根会長の孫の口座になっていた時期がある

 1社が用具提供の独占契約を結ぶことは起こり得ます。ただ、日本ボクシング連盟は一般社団法人ですから、公募によって選定されていなければなりません。

 果たして、『杉スポーツ』はそうしたプロセスを経たのでしょうか。また、振込先が「山根会長の孫名義の口座」であったことも大きな問題です。『杉スポーツ』がコンプライアンスを遵守する組織なら、“他人名義の口座” に振込先を行うことはしないでしょう。

 山根会長の行為は複数の点で問題があることは明らかと言わざるを得ません。

 

 アメリカの人気プロレス WWE は実際の会長が “悪のオーナー” というキャラクターを演じるから面白いのであって、実際の経営で “悪の会長” ぶりを発揮されると大きな問題が起きることとなります。

 そうした事態が生じていることが明るみに出たのが日本ボクシング連盟でした。一発退場でも止むを得ない行為が複数指摘されているのですから、しばらくは問題が尾を引く結果となるでしょう。

 問題行為に手を染めた責任は会長自らが取らなければならないのです。組織内部での権力闘争に力を入れ、独裁者として好き勝手に振舞ってきたことによる問題を押し付けられることになるのは無関係の選手であるとの自覚を持つ必要があると言えるのではないでしょうか。