「酷暑で試合中の高校球児が足をつり、相手チームが手を差し伸べたこと」を大会主催者が “美談” として報じるのは如何なものか

 甲子園球場で行われている夏の全国高校野球選手権大会で北照高校(南北海道代表)の選手が試合中に足をつる事態が発生しました。

 「対戦相手の沖学園高校(南福岡代表)の選手が処置に参加したこと」が “美談” として取り上げれているのですが、酷暑の中での試合を余儀なくされたという事実を見落とすべきではありません。少なくとも、大会主催者である朝日新聞がこの出来事を好意的に報じる資格はないと言えるでしょう。

 

大会主催者が “美談” として報じるのは欺瞞

 夏の甲子園を主催しているのは高野連と朝日新聞ですが、朝日新聞はこの出来事を美談として報じています。

画像:朝日新聞が報じた記事

 執筆した合田純奈記者は福岡発の記事を中心に扱っているため、南福岡代表である沖学園高校のエピソードを取り扱うことは自然なことです。ただ、朝日新聞が大会主催者ですので、選手が負傷しやすい環境でプレーを強いたことを問題視しなければなりません。

 また、朝日新聞のグループ企業である日刊スポーツも美談として報じています。

画像:日刊スポーツが報じた記事

 “読者の感動” のために高校生が過酷な環境で試合をすることを強いられている現状に警鐘を鳴らせなければ、「マスコミの使命を果たせている」とは言えないでしょう。

 

「野球の試合中に足をつる選手が出る」のはかなり危険な試合環境

 スポーツ選手が試合中に足をつることは珍しくありません。サッカーの試合ではトップ選手であっても、90分が近くなると、足をつる選手が出てくるからです。

 しかし、攻守交代のある野球では(試合中に)足をつる選手はほとんど出ません。

 これは攻撃中はベンチで給水が可能であり、こまめに水分補給ができるからです。また、酷暑が全国的に問題となる中での大会だったこともあり、どの学校も熱中症対策を準備していたことでしょう。それでも、足をつる選手が出てしまいました。

 この事態を大会主催者は重く受け止めなければならないことなのです。少なくとも、美談として報じるなど論外と言わざるを得ません。

 

テレビが『L字表記』で「熱中症に厳重な注意を」と呼びかけている中に甲子園球場も含まれている

 大阪や神戸では気温が35度を超える猛暑日が続いています。甲子園球場がある西宮市も同様です。

 テレビでは『L字表記』の形で熱中症への注意を呼びかけ、視聴者に「運動を控えること」や「適切な冷房の使用」を訴えています。しかし、高校野球の中継では「高校球児が炎天下での運動する様子が映し出されている」のです。

 これは明らかに矛盾していると言えるでしょう。屋外での運動を控えるように呼びかける一方で、高校球児には運動に適さない環境下で試合をすることを強いているのです。このことに疑問を感じない人は人権などを語る資格はないと言えるでしょう。

 朝日新聞は『サマータイムの導入』に対しては誘導尋問的な質問内容に基づく世論調査を行っているのです。高校野球についても、「気温の低い早朝を有効に使う」や「投手の連投を防ぐため、春と夏の甲子園を統一する」などの抜本的な改革を実施すべきと言えるのではないでしょうか。