イタリア・ジェノバでの橋崩落事故、同様の事故が日本で起きないよう事前の対応・対策ができているかを確認すべきだ

 8月14日にイタリア北部にあるジェノバで高速道路の高架橋が崩落し、多数の死傷者が出ていると NHK が伝えています。

画像:イタリア北部ジェノバで橋が崩落した現場

 崩落の原因は「老朽化」、「設計ミス」、「雨で地盤が緩んでいた」など様々な可能性が指摘されています。日本でも同様の事故が起きる可能性があるだけに、予防策や点検・補修作業が適切に実施されているかを確認する必要があると言えるでしょう。

 

 イタリア北部のジェノバで14日、高速道路の高架橋の一部がおよそ200メートルにわたって崩落し、車両およそ30台が巻き込まれ、地元の警察によりますと、これまでに39人の死亡が確認され、16人がけがをしました。

 (中略)

 この高架橋は1960年代に建設されて、これまでも老朽化による危険性がたびたび指摘され、地元のメディアは、おととしイタリア議会でも構造やコンクリートの強度をめぐり議論が行われていたと伝えています。

 現時点では「老朽化」が原因で橋が崩落した可能性が高いと見られています。

 1960年代に建設されたとのことですが、これは日本の高度経済成長期に該当する時代です。つまり、日本では高速道路網の多くが高度経済成長期に整備されているため、同様の事故が起きる可能性は十分にあり得る状況なのです。

 

道路インフラを維持するために必要な措置は取られていたのか

 道路は建設しただけでは意味がありません。必要に応じて補修を行うなど保守作業も不可欠です。

  1. 点検作業に予算が付けられ、適切に行われていたか
  2. 問題が発見・報告された際、補修や補強工事のための予算が確保されていたか
  3. 補修・補強工事は指示書どおりに完遂されていたか

 建設された構造物は時間とともに劣化します。そのため、日本では高速道路が「リフレッシュ工事」といった形で補修作業が行われ、経年劣化による影響が利用者に及ばないようにしているのです。

 しかし、そのためには点検作業や補修作業に費やす予算が必要になります。適切な管理がされていなければ、「いつ問題が発覚してもおかしくない」という状況になるだけに危機感を持つ必要があるでしょう。

 

日本の高度経済成長期は1954年〜1973年

 日本の高度経済成長期は1954年からの約20年間であり、大都市間の高速交通網(新幹線や高速道路)は1960年代に整備が進みました。

 つまり、イタリア・ジェノバで崩落した橋梁と同じ時代に建設された社会インフラが日本にも多数存在しているのです。経年劣化は確実に起きているのですから、「どれだけ劣化を遅らせることができているのか」や「劣化の度合いに応じて、必要な補修・補強はできているのか」を確認する必要があります

 『首都高』は1962年に(京橋 ー 芝浦が)開通し、その後も次々に路線が延伸・新設されてきたという経緯を有しています。

 海岸に近い路線もあるため、劣化は確実に起きていることでしょう。そのため、必要な公共事業への予算投下を渋っていると、ジェノバで起きた事故が日本国内で起きる可能性は年々上昇する結果を招いているのです。

 

「公共事業より社会保障の充実を」を主張した “ツケ” を払うのはこれからである

 橋やトンネルの点検・補修作業は『公共事業』に属します。問題なのは公共事業が “悪者扱い” され、予算が以前ほど配分されにくくなっていることでしょう。

 高齢化が進行したことで社会保障費への支出が増大する一方、公共事業は「無駄の象徴」と糾弾されています。この状況で高度経済成長期に建設されたインフラの老朽化が隠し切れなくなるため、公共事業への予算配分を渋るようだと崩落事故を招くことは目に見えています。

 マスコミは事故が起きた後に「なぜ、適切な管理ができていなかったのか」と自らが公共事業をバッシングしていた過去を棚に上げて批判を展開することでしょう。

 なぜなら、メディアは何の責任も負わない気楽な立場にいるからです。「法律に基づく形でダム運用が行われていたことを無視し、河川氾濫による死者が出たことを理由に住民の感情論を煽る報道姿勢」を見れば、これから “ツケ” を払うことを強いられることは避けられないと思われます。

 

 ジェノバで発生した崩落事故を受け、日本国内の点検や補修といった予防に必要な予算が適切に配分され、対応策が機能しているのかを報じるメディアがどれだけ存在するのかが注目点と言えるのではないでしょうか。