台風20号で淡路島の風力発電用風車が倒れた件、全国一斉の緊急点検が不可避ではないのか

 四国および近畿地方を縦断した台風20号は各地に被害をもたらしましたが、兵庫県・淡路島では風力発電用の風車が根元から倒れたと日本テレビが報じています。

画像:台風20号の影響で倒れた風力発電用の風車(日本テレビより)

 この風車は「風速60メートルにも耐えられる設計」になっていたとのことですが、淡路島で観測された瞬間風速は40メートルにも満たない数値です。そのため、“何らかの問題” があったことは確実であり、緊急点検を視野に入れた確認作業が不可避と言えるでしょう。

 

 兵庫県淡路島の北部にある北淡震災記念公園では、23日から24日朝にかけて、高さ約37メートルの風力発電用の風車が根元から倒れた。近くの建物の屋根も吹き飛んでいて、台風20号の暴風によるとみられる。

 淡路島の洲本市では、23日午後11時ごろに最大瞬間風速38.5メートルを記録。

 台風で樹木が根元から倒れることはあります。今回、淡路島で風力発電用の風車が根元から倒れた件も、原理は同じと言えるでしょう。

 ただ、疑問なのは「根元に鉄筋などが入っているようには見えない点」です。高さ約40メートル(羽根の部分まで入れた高さは約60メートル)の構造物が「自重だけで耐える構造」と見受けられる点は調査が必要と思われます。

 

淡路島で倒れた風車の設計構造に問題はなかったのか

 まずは、「倒れた風車に設計・構造上の問題はなったのか」という点を精査しなければなりません。

 風車は「風速60メートルまで耐える設計」だったのですが、設計値を下回る風速で倒れたのです。この点は「自然災害だから仕方ない」と済まされるものではなく、徹底した原因究明と対策が不可避と言えるでしょう。

 「基礎の部分が脆弱」と映るだけに、この構造で「風速60メートルまで問題ない」とした根拠を設置者が説明することは避けられない状況です。

 

「風を逃す制御ができる前提で風速60メートルに耐えられる」というのは『安全神話』と同じ

 風力発電で気になるのは「風を逃すことができる前提で耐えられる風速が定義されている可能性がある」という点です。これは徳島大・長尾文明教授が FNN で次のように述べているからです。

 (風車を)止めて風を逃すための制御になってたかというのは、もっと近づいて、根元をちゃんと見ればわかるかもしれないが、このあたり、停電になったという話をしてましたので、そういうことがあって制御不能になったのかなと。

 この指摘は重要でしょう。なぜなら、原発事故と同じ原因(= 電源喪失)で問題が生じたと言えるからです。

 風力発電では台風などで “風が強すぎる” 際はブレード(= 羽根)の角度を調整して風を流すように調整します。風のエネルギーは「風を受ける面積に比例」し、「風速の3乗に比例」するからです。

 『風速』は人間がコントロールできませんが、『風を受ける面積』は人がブレードの角度を調整することでコントロール可能です。ただ、動力源が外部電力であり、それが台風で停電でブレードの角度が調整できなかったことで風車が倒れた恐れがあるのです。

 これは原発と同じ『安全神話』が風力発電など再生エネ界隈でも存在していることを示す根拠になる得る問題と言えるはずです。

 

外部から電力供給が止まった際に、風力発電用の風車のブレードがどういう状態なのかが重要である

 今回、淡路島で倒れた風力発電用の風車に構造・建設的な欠陥がないなら、強すぎる風が吹いた際のブレード(= 羽根)の状態が問題となります。

 「外部から電力供給があれば、ブレードの角度を調整できる」という前提で算出された「耐えられる風速」というのは是正する必要があるでしょう。なぜなら、停電が起きた時点で、「耐えられる風速」の値が大きく下がってしまうからです。

 しかも、台風が接近した際は送電線が切れたことが原因の停電は通常よりも起きやすいのです。この点を考慮すると、『耐えられる風速』の基準は「ブレードの角度を最大限調整した数字」ではなく、「ブレードが最も風の影響を受けた場合に耐えられる数字」にする必要があるでしょう。

 全国一斉の緊急点検を実施しなければならない事案だと言えるのではないでしょうか。