反原発派の「北海道胆振東部地震で『泊原発が動いていれば停電はなかった論』は間違い」との主張はデマである

 反原発派はハーバービジネスオンラインに掲載された「北海道胆振東部地震で『泊原発が動いていれば停電はなかった論』は間違い」を全面的に支持しています。

 しかし、この記事で主張されている内容が間違っているのですが、デマと指摘しなければならないでしょう。なぜなら、反原発運動を煽るために事実を都合よく切り貼りしているからです。

 

北海道全域がブラックアウトした理由は「残り35万kW分」を捻出できなかったから

 北海道胆振東部地震で北海道全域がブラックアウトしたことは事実ですが、地震直後にブラックアウトした訳ではありません。なぜなら、北海道電力が対処に当たっていたからです。これは読売新聞が報じています。

 北海道電力などによると、地震発生直後の6日午前3時8分頃、2号機と4号機が地震の揺れで緊急停止。1号機は稼働を続けていた。電力は需要と供給のバランスが崩れると、周波数が乱れて発電機が損傷する恐れがある。このため、北海道電は、失われた供給分(約130万キロ・ワット)に見合うように一部の地域を強制的に停電させて需要を落としバランスの維持を試みた。

 しかし、地震発生から約17分後の午前3時25分頃に何らかの原因で1号機が緊急停止した。強制停電による需給バランスの維持が間に合わなかったとみられ、同時刻に知内、伊達、奈井江の三つの発電所が発電機の損傷を防ぐため自動的に停止。すべての発電所が停止するブラックアウトとなった。

 北海道電は、最大129万キロ・ワット分の発電所の停止までは想定していた。

 図で表記すると以下のようになります。

画像:北海道でブラックアウトが発生した流れ

 電力は「需要と供給のバランス」を保つことが大前提ですが、震源地に近い苫東厚真がダウン。これを受け、約130万kWの供給力を失った北電は “強制停電” を敢行することで、同量の需要電力をカット。「需要と供給のバランス」を一時的に保つことに成功していました。

 しかし、苫東厚真の1号機が地震発生17分後に緊急停止。この分の予備電力(約35万kW)を確保できなかったことで、北海道全域のブラックアウトが発生することになったのです。

 

泊原発が動いていれば、ブラックアウトは発生したのか

 反原発派は「泊原発が稼働していても、ブラックアウトは発生する」との結論が先にあるため、論理が様々な部分で破綻しています。

 まず、今回の地震の揺れで泊原発が停止することはありません。なぜなら、震源から 100km ほど離れていますし、(泊村で観測された)震度2では原子力発電所の運転が停止する地震加速度は観測されないからです。

 そのため、『苫東厚真火力発電所がフル稼働』という前提でシミュレーションをしています。

画像:苫東厚真火力発電所がフル稼働していた場合

 確かに、苫東厚真がフル稼働していれば、泊原発の稼働状況に関係なく、北海道全域がブラックアウトしていたでしょう。ただし、北電が “分散発電” を放棄し、苫東厚真に “一極集中” していることが大前提となります。

 この前提を満たす運用を電力会社がする可能性は低く、実際には「苫東厚真が担う発電量は火力発電全体の50%まで、絶対値でも130万kWまでとする」とのリスク管理がされていたことでしょう。原発稼働時に、苫東厚真火力発電所がフル稼働していた運転実績は見当たらないからです。

 

泊原発3号機が動いていただけでも、北海道全域のブラックアウトは回避できた

 現実的な運用体系としては以下のようになっていたと想定されます。

画像:泊原発が稼働していた場合の現実的なシミュレーション

 苫東厚真に偏重していなければ、今回の地震でのブラックアウトは容易に回避できたでしょう。苫東厚真の脱落によって生まれた不足分は “強制停電” で急場をしのぎ、『北本連絡線(60万kW)』や『苫東厚真以外の火力発電所』を使うことで不足分を補えるからです。

 不足分を補うまでは地域的な停電は発生します。しかし、電力が確保でき次第、供給可能エリアは順次回復していくことになる訳ですから、ブラックアウトに陥ることはなかったと考えられるからです。

 

 北海道電力は『泊原発』、『苫東厚真火発』、『その他』がそれぞれ3分の1ずつ分担して発電することを基本にしていたでしょう。100万kW強がベースで、メンテナンス計画の有無などによって発電量は上下動することになるはずです。

 しかし、反原発運動で “大エース” である『泊原発』が排除されました。そのしわ寄せが『苫東厚真火発』に行っている状況で、地震によって運転不能となり、ブラックアウトが起きたのです。

 「反原発派によって引き起こされたブラックアウト」であることは明らかであり、この事実を反原発派は認めなければなりません。この記事に示した内容に対し、「泊原発が稼働していても、ブラックアウトは起きた」と主張する反原発派は根拠を示して反論する必要があります。

 とは言え、それができる反原発派は「泊原発の重要度」を理解しているでしょうし、「運転停止を主張する以上、具体的な代替電源を確保する責務があること」も認識しているはずです。

 算数すら満足にできないイデオロギーに染まった反原発派の主張に迎合したマスコミや野党に降りました災いが(北海道などで)本格化することはこれからが本番でしょう。無責任なエネルギー政策を続けてきた政治の責任は極めて重いと言わざるを得ないのではないでしょうか。