TPP に反対する立憲民主党枝野代表が「2国間の通商交渉は良くない、マルチで進めるべき」と矛盾する発言を行う
NHK によりますと、ニューヨークで行われた日米の閣僚級の通商交渉に対し、立憲民主党の枝野代表が2国間の通商交渉は良くない、マルチで進めるべき」と述べたとのことです。
枝野氏は多国間経済協定である TPP に反対したのですから、2国間で交渉を進めることしか選択肢はありません。にもかかわらず、「2国間の通商交渉は良くない」はあまりに無責任な主張と言わざるを得ないでしょう。
立憲民主党の枝野代表は26日、記者団に対し「2国間の通商交渉は世界経済にとっても日米にとってもよくないので、マルチで進めていくべきだ、とアメリカに強く言わなければいけなかった」と述べました。
そのうえで「2国間の枠組みに引きずり込まれるのは経済・通商政策として大失敗だ。理不尽なことを言われて唯々諾々と応じるのならば、誰がやっても一緒だ」と述べ、政府の対応を批判しました。
『2国間の通商交渉』は “当該国の国力” が交渉結果に現れます。
現時点でアメリカの国力に1国で対抗できる国は存在しないでしょう。唯一の対抗手段は「EU のような複数国で利害を調整する経済協定」です。日本の場合は TPP がアメリカに対抗する術なのですが、枝野代表は TPP に反対しています。
「2国間の通商交渉は良くない、マルチで進めるべき」と主張することは過去の発言と矛盾が生じていると言えるでしょう。
立憲民主党も枝野代表も TPP に反対している
枝野幸男議員も立憲民主党も TPP に反対していると自らツイートしています。
『多国間の経済協定』に反対しておきながら、「マルチで進めていくべき」は通用しません。それとも、「TPP11 ではなく、アメリカを入れて TPP 交渉をゼロからやり直せ」とでも主張しているのでしょうか。
残念ですが、その主張は通用しないでしょう。なぜなら、交渉をやり直すメリットがないからです。TPP 締結国はアメリカに2国間の通商交渉を迫られても、『TPP の合意内容』を理由にした交渉ができるのです。この視点を持たない枝野代表の経済センスは問題ありと言わざるを得ません。
「TPP で開放する項目」を『アメリカとの2国間通商交渉』で合意すれば、TPP11 にアメリカが加入したことと同じ
枝野代表は「誰がやっても同じ」と主張していますが、それは大きな間違いです。なぜなら、TPP11 の存在を『アメリカとの2国間通商交渉』で使えるからです。
- 『アメリカとの2国間通商交渉』の席に着く
- アメリカからの市場開放要求は「TPP で開放する基準と同程度」まで譲歩
→ TPP で米国産は豪州産などに比べて競争力が低下 - 「自動車などへの関税は到底容認できない」と締結の条件を出す
アメリカは農作物などを日本に売りたいのです。ところが、TPP が正式に発効すると、“関税が効いたままの米国産” は日本市場で豪州産などの後塵を拝することになるでしょう。なぜなら、オーストラリアなど TPP 加盟国からの農作物は関税が撤廃されるからです。
つまり、アメリカには交渉で成果を出さなければ、TPP で自国産業の競争力が落ちる状況にあるのです。この事実を『アメリカとの2国間通商交渉』で活かすことが日本には重要なのです。
“TPP を否定する枝野代表” と “TPP をテコにした交渉ができる政治家” とでは「誰がやっても同じ」にはなりません。表向きは『トランプ氏が希望する2国間協定』が締結と発表されるも、内容は『TPP11 の内容をアメリカが受諾』であれば、素晴らしい外交成果と言えるからです。
「反対」の声をあげていれば、相手が配慮してくれることを期待することはできません。特に、外交の場面では相手国は「自国の国益」を確保するためにあらゆる手段を講じてくることが予想されるため、『結果』が何よりも重要なのです。
「多国間協定」に反対する国政政党の代表が「2国間協定」も否定すれば、支離滅裂です。これが野党第1党なのですから、能力不足は深刻と言わざるを得ないでしょう。
“真っ当な野党” を期待しても、徒労に終わることでしょう。せめて、“マシな野党” が根付くためにトンチンカンな主張を展開する政党や政治家には厳しい批判を向ける必要があると言えるのではないでしょうか。