“お荷物” と化している太陽光など再生エネを普及させるほど、経済に悪影響をもたらしている現状をメディアは報じるべき

 朝日新聞によりますと、九州電力が10月1日に『地域間連系線』を使って太陽光で発電された100万kWの電力を西日本の電力会社に受け取ってもらっていたとのことです。

 電力は需要と供給のバランスを維持することが大前提ですが、供給力の 10% に当たる再生可能エネルギーが余ってしまうことは問題でしょう。高価格な上、発電調整力も持たない電源は明らかに “お荷物” と言わざるを得ないからです。

 

 経済産業省の認可法人、電力広域的運営推進機関(広域機関)が調整した。1日午前9時~午後2時半の間、西日本の地域を結ぶ送電線の「地域間連系線」を使って最大112万5千キロワットを送った。原発1基分、この時期の九電の供給力の1割程度にあたる。広域機関が関西、中部、中国、四国、北陸の五つの電力会社に電力を受け取るように要請した。

 九電によると、台風24号が九州を通過した後の1日は晴れ、太陽光の発電量が増加して供給が需要を超える見通しだった。台風による雨の影響で、昼間の電力を消費する揚水発電のダムに水をくみ上げることができない恐れがあった。気温が下がって冷房の使用が減り、需要はさほど伸びないとも予想されたという。

 このニュースは明らかに「再生可能エネルギーの問題点」が出ていると言えるでしょう。「需要と供給のバランスが維持されたから、特に気にする必要はない」との結論になってはならないからです。

 

高価格での買取が義務づけられた FIT を背景にした “押し売り” が根本的な原因

 電力供給の大前提は「需要と供給のバランスが釣り合っていること」です。これはバランスを崩れると、問題が生じてしまうことが理由です。

  • 需要量 > 供給量
    → 電力の不足分を確保できなければ、停電地域が発生する
  • 需要量 = 供給量:理想
  • 需要量 < 供給量
    → 電力の余剰分を処分できなければ、送電網がダウンする

 「需要」と「供給」のどちらを優先すべきかと言いますと、「電力消費者の『需要量』に合わせて、電力会社が『供給量』を調整する形が理想」と言えるでしょう。そうすることで、消費者が経済活動に専念することが可能になるからです。

 ところが、FIT は全量固定買取制度ですから、需要を上回る供給があっても(電力会社は)買い取らなければなりません。しかも、市場価格よりも高値が設定されている訳ですから、まさに “押し売り” と言えるでしょう。

 その結果、電気代の高騰を招き、自社の管轄内で消費しきれない分の電気が他の電力会社にまで押し付けられるという由々しき事態を招いているのです。

 

「太陽光で発電し、揚水発電で消費する」のは粗末な現状

 今回、九電が『地域間連系線』を使い、余剰電力を西日本の電力各社に引き取ってもらうことになった理由の1つとして「昼間の電力を消費する揚水発電のダムに水をくみ上げる見通しができないこと」があげられています。

 これは大きな問題でしょう。なぜなら、揚水発電は「昼間の電力を消費する」のではなく、「昼間に電力を供給する」目的の施設だからです。この点を指摘できない再生可能エネ推進派は大きな問題と言えるでしょう。

  • 揚水発電の目的:
    • 夜間に原発の電力を使い、ダムに水を汲み上げる
    • 需要がピークを迎える日中に放水し、発電を行う
  • 九州電力管内での揚水発電の使われ方:
    • 太陽光発電による余剰電力を使い、ダムに水を汲み上げる
    • 再生可能エネによる発電がない時間帯に放水し、発電を行う

 要するに、大容量の蓄電池が(現在の技術水準では)存在しないから、蓄電池の代わりに揚水発電を用いているのです。このやり方は正しいように思えますが、エネルギー政策としては間違いです。

 まず、「エネルギー効率が悪い」ことが指摘できます。発電量を調整できないから、蓄電しているのです。エネルギーを変換する際には必ず損失が生じるため、ムダが生じている認識を持つ必要があるでしょう。

 それに加え、「揚水に使う電気代が高い」という問題も見落とすことはできません。原発のように燃料コストが安い電源で揚水するから効果があるのであり、30円以上もの高価格で買い取られる再生エネで発電した電力で揚水する意味はないと言えるでしょう。なぜなら、電気代を支払うのは消費者だからです。

 

 再生可能エネルギーを応援したいのであれば、メディアは再生エネの「良い面」も「悪い面」も正確に報じるべきでしょう。現状では「再生エネ称賛報道」ばかりで、マイナス面は “ひた隠し” にされている状況です。

 再生エネの “お荷物的な要素” を隠したままで、太陽光や風力など自然エネルギーの普及促進を声高に主張するマスコミには大きな問題があると言わざるを得ないのではないでしょうか。