香川、乾、柴崎 ロシアW杯で躍動したサッカー日本代表選手が所属クラブで苦戦する理由

 ロシアW杯で活躍したサッカー日本代表選手の選手が所属クラブで思うような出場機会を得ることができずに苦労しています。

 香川、乾、柴崎の3選手が代表例と言えるでしょう。2019年の1月からアジアカップが行われるだけに代表チームの主力として期待される選手たちが所属クラブで苦戦している理由を探ることにしましょう。

 

香川 真司(29, ドルトムント)

 香川選手が出場機会を得られていない理由は「ポジション争いで遅れを取っているから」です。ドルトムントはファブレ新監督が就任し、フォーメーションと選手に要求される要素が変わりました。

 開幕当初は 4-3-3 で香川選手が得意とする『トップ下』はなかったのですが、チームの攻撃陣は不調。システム変更が行われ、4-2-3-1 (もしくは 4-4-2)を基調とするチームはリーグ首位に立っています。

 香川選手が得意とするポジションができたのですが、その『トップ下』でロイス選手が躍動。また、センターフォワードには新加入のパコ・アルカセル選手が文句の付けようのない結果を残しており、エリア中央の攻撃的ポジションは埋まってしまいました。

 ドルトムントは過密日程を戦っているため、香川選手にも出場のチャンスは回ってくるでしょう。ただ、「序列が低い」という現実があり、途中出場でゴールを決めるなどゲッツェ選手のように結果を残すことが不可欠です。

 チームが「若手選手にチャンスを与える」という伝統を持っていることを考えると、移籍という選択肢を考えなければならない時期に来ていると言えるでしょう。

 

乾 貴士(30, ベティス)

 乾選手の場合は「新加入で周囲からの信頼を勝ち取れていないこと」が大きな理由でしょう。

 2017-18 シーズンまでエイバルでプレーしていた乾選手は契約満了となり、同じスペインリーグのベティスに移籍しました。ベティスを率いるセティエン監督は『パスサッカー』を強く志向する監督なのですが、ピッチ上での状況判断を選手に要求するタイプです。

 言い換えれば、ハリルホジッチ前日本代表監督のような “現実主義的” な一面を持った指揮官なのです。

 「ショートパスは重要視しているが、より効果的なドリブルやロングパスがある状況なら、そちらを使っても良い」と考える監督だと見なければなりません。そのため、選手からの信頼を得ているホアキン選手が “自身の持ち味” を周囲の選手から活かされ、好成績を残しているのです。

 もちろん、決定機を決め切るなどで周囲の信頼を得ることに成功すれば、乾選手の出場機会は増えるでしょう。(現状は決定機を外したことで周囲が信用せず、ボールを持てない時間が増え、アピールできず悪循環に陥っている)

 ただ、フリー移籍で獲得しているため、選手の価値が下がってもクラブは損失を被ることはありません。(乾選手を獲得した)クラブ上層部からの圧力は期待できませんので、ピッチ上で結果を残せるかが重要と言えるでしょう。

 

柴崎 岳(26, ヘタフェ)

 柴崎選手が出場機会を手にできない理由は「監督が要求するだけの貢献度を示せていないから」です。

 ヘタフェを率いるボルダラス監督は柴崎選手がプレーを希望するボランチにまずは「守備力」を要求します。これは現実的な要求と言えるでしょう。

 ヘタフェはスモールチームであり、DF の前で “盾” として機能する選手がいなければ、勝点を稼ぐことは極めて難しくなります。つまり、中盤で相手選手とのデュエルに挑み、勝利ができる選手が求められているのです。柴崎選手はこの要求水準を満たしていないため、プレー機会が満足に得られない結果になっているのです。

 柴崎選手が持つ攻撃的センスや能力は評価されていますが、“ファイター” と評されるプレースタイルを見せることができなければ、守備的なタスクの多いボランチでのプレーは難しいでしょう。

 

 どの選手も『所属クラブで絶望的な立場』とは言えませんが、『楽観できる立場』ではありません。「変化に適応できる能力を持っているかが問われている」と言えるのではないでしょうか。