日本で毎年世界大会が行われるバレーボールで、スポンサー獲得に苦労するのは止むを得ないこと

 朝日新聞によりますと、バレーボールの世界選手権(= 世界バレー)を共催・中継する TBS が今大会の収支で大幅な赤字を計上するとのことです。

 この状況に陥ることは時間の問題だっただけに、TBS が “ババ” を引いたに過ぎません。他の在京キー局も同様のリスクを抱えているだけにビジネス・プランそのものを見直す必要があると言えるでしょう。

 

 20日に横浜アリーナで決勝があるバレーボール女子世界選手権で、競技団体と大会を共催するTBSテレビに億単位の赤字が見込まれることが関係者への取材でわかった。CM収入の低迷が理由という。

 日本バレーボール協会も赤字の見通し。大会は女子の人気が高い日本で頻繁に開催されてきたが、国際バレーボール連盟は次回の2022年以降の開催国決定方法を競争入札制に変更。経済成長が著しい中国、タイなどが乗り出しているといい、テレビマネーが頼りの日本は金額面で対抗できなくなる恐れがある。

 今大会のTBSの支出は国際連盟への放映権料、マーケティング権料などで計20億円以上。企業が広告費を抑えた影響でCM収入が伸びなかったといい、赤字額は10億円近くになるとの見方もある。日本協会は入場料収入が伸び悩み、約6億円の損失が出そうだ。

 

国際連盟が「規模の拡大」に舵を切るのは当然のこと

 国際競技団体が拡大路線を採ることは自然な成り行きです。「競技を世界中に普及させる」という目的をどの競技の国際連盟も持っていますし、主催大会でそのための資金を稼ぐスタイルは一般的な手法だと言えるでしょう。

 “国際連盟が主催する世界大会” なのですから、『主催者により多くの稼ぎを約束する開催地』が選定されやすくなります。

 これに対する唯一とも言える拒否権は「実際にプレーする選手からの不満」でしょう。「試合会場の設備が悪すぎる」や「大会運営があまりに粗末」といった文句が頻出しなければ、主催者が決めた開催地が変更になることはないと考えられるからです。

 また、開催地に立候補した国や協会も「赤字を計上するリスクがある中でも世界大会を誘致する意味はあるのか」という自問自答を強いられます。それでも、開催に踏み切ったのであれば、自己責任と言わざるを得ないでしょう。

 

日本で世界大会が毎年行われていれば、スポンサーに『希少価値』を訴えることは不可能

 TBS が赤字を計上した理由を朝日新聞は「テレビ用 CM の販売不振」と報じています。これは『バレーボールの世界大会』が持つ希少価値が薄れているためでしょう。

 なぜなら、日本では毎年バレーボールの世界大会が行われているからです。

  • 2015 W杯(フジテレビ)
  • 2016 オリンピック世界最終予選兼アジア予選(フジ&TBS)
  • 2017 グラチャン(日テレ)
  • 2018 世界バレー(TBS)

 いずれの世界大会も「4年に1度」のペースで行われていますが、どの大会も日本で開催されています。そのため、「日本で行われるバレーボールの世界大会」という『希少価値』が損なわれているのです。

 これではスポンサーは付きにくいでしょう。毎年開催していれば、新たなファンを掘り起こす余地はほとんど残されていません。チケット争奪戦が勃発することが恒例行事にでもなっていない限り、スポンサー収入の増加は起こり得ないことだと言えるでしょう。

 

日本バレーボール協会が大会発足に関与したグラチャン以外の日本開催保持は現実的に厳しい

 国際競技連盟が「拡大路線」を採ることを考えると、W杯や世界バレーがこれまで日本で開催され続けてきたことが異常なことなのです。それが競争入札制で行われる形になるのですから、一般的な決定方法になっただけと言えるでしょう。

 競争入札による開催地決定に異を唱えられるのはグラチャンぐらいです。グラチャンについては日本バレーボール協会が大会発足のために汗をかき、形にした経緯があるため、「他のバレーボール協会が大会主催権を手にするのはおかしい」と主張できる正当な根拠があるからです。

 スポンサーさえ得られれば、従来どおりに日本でW杯や世界バレーを開催できます。ただ、スポンサーに「毎年日本で開かれているバレーボールの世界大会を支援することでどれだけの見返りがあるのか」を説明し、リターンを渡し続けることは非常に困難です。

 各局で放送しているニュース番組内でのスポーツ・コーナーでバレーボールの扱いはそれほど大きくないのですから、現状を過大評価し過ぎていると言えるでしょう。テレビ局のプライドがある手前、引きにくいと思われますが、適切なサイズにまでダウンサイジングをする必要があると言えるのではないでしょうか。