「英語が使えること」が “先進国水準の生活を送る上での必須条件” になっていない日本で英語力が低いのは当然のことだろう

 朝日新聞によりますと、スイスに本部を置く国際語学教育会社が世界88カ国および地域を対象に調査を行った『英語能力指数』で日本は「5段階で下から2番目の『低い』」と認定されたとのことです。

 言語や技能の能力は「低い」より「高い」方が望ましいでしょう。ただ、言語に関しては生活水準に直結しない限り、母国語に比重を置かれる傾向にあります。

 そのため、日本語しか話せなくても先進国の生活水準を送ることができる日本で、英語能力を高めることの必要性を見出すことは難しいという現実は認識する必要があるでしょう。

 

 日本の英語力は非英語圏で49位 ーー。スイスに本部のある国際語学教育機関が今月、英語を母語としない88カ国・地域を対象に調べた「英語能力指数」を公表した。日本は3年連続で、5段階で下から2番目の「低い」と認定された。

 世界116カ国・地域で教育事業を展開する「EFエデュケーション・ファースト」はオンライン上で無料の英語力測定テストを実施し、2011年からこの指数を公表。今年は世界で約130万人のデータを分析し、日本は数千人が参加したという。

 測定を行ったのは『EF エデュケーション・ファースト』という言語学習を展開する企業です。自転車ロードレースのワールドツアーに参戦するチームを有しており、そちらの方が知名度が高いと言えるでしょう。

 毎年、「英語能力指数」についてのレポートを発表しており、2018年版(PDF)も公表されています。日本は「低い」と評価されましたが、英語能力については「該当国が抱える事情」を踏まえる必要があります。

 

日本の順位は年々下がり続け、2018年は88カ国で49位

 『EF エデュケーション・ファースト』が行う「英語能力指数」は非英語圏の88カ国・地域を対象に実施し、日本の成績は以下のとおりです。

画像:日本の英語能力指数

 2015年までは「普通(Moderate)」と評価されていましたが、2016年以降は「低い(Low)」となっています。ただ、参加する国や地域が増加する度に日本は順位を下げており、英語力が伸びているとは言えないでしょう。

 しかし、英語は『使う機会』がなければ、学習する価値はありません。日本は『英語を使う必要性』が他国と比較して極端に低く、ほとんどの国民にとっては『高い英語力』を身につけるメリットが見出せないのです。

 この現実を把握しておく必要があると言えるでしょう。

 

英語圏の植民地になった歴史を有するアジアの国は「英語能力指数」が高い

 ちなみに、『EF エデュケーション・ファースト』が発表した英語能力指数(2018年版)で、アジアで上位に付ける国は軒並み「英語を母国語とする植民地になった経歴を有していること」が特筆事項です。

画像:アジアの英語能力指数(2018年版)

 イギリスが植民地にしていたシンガポール・マレーシア・インド・香港、アメリカが統治したフィリピンがトップ5に入っています。

 国民全体に教育が行き届くようになったのは1900年代に入ってからです。その時期は「列強国が植民地を求めていた時代」なのですから、植民地で『宗主国の母国語を使った教育カリキュラム』が実行されることは自然な流れでしょう。

 そのため、日本語での教育が当たり前だった日本で英語力が身につかない(≒ 習得しにくい)のは止むを得ないことなのです。

 

韓国という “特殊な事情” を抱える国と比較することはナンセンス

 「日本の英語能力の低さ」が言及される際、隣国である「韓国」が引き合いに出されるケースが存在します。ただ、戦後に両国が歩むことを決断した道が大きく異なるため、比較することがナンセンスと言えるでしょう。

  • アメリカ寄りの軍事政権が基本
    → 韓国の民主化は1987年のこと
  • キリスト教の信仰者が30%(仏教より多い)
  • 財閥に就職できなければ、先進国水準の生活は難しい
    → 財閥の雇用者は全体の5%ほど

 韓国は「サムスンなどの財閥企業に就職できなければ、悲惨な生活が待っている」という現実があります。採用枠は “極めて狭き門” なのですが、自分(と家族)の生活が賭かっているため、就職試験を突破するための手は尽くします。

 その中で使われるのが「海外留学」です。父親が韓国国内で働き、生活費を切り詰めて捻出した費用で母親と子供の留学費と生活費を捻出するという形態も存在します。

 「ウリ」と認定されていない立場の韓国人が『一発逆転』を果たすには、“箔を付ける” ことしか現実的な選択肢はありません。帰国子女として逆転を狙う立場の人物が増えるほど、英語能力のある人物は絶対数が増加するのです。韓国はこうした側面が多いことを見ておく必要があると言えるでしょう。

 

社会人になってから、「『学生時代に身につけた英語力』をどのぐらいの頻度で使っているのか」という問題

 また、日本の場合は「実務で英語能力はそれほど要求されていない」という点もボディーブローとして効いています。

 これは日本語で最先端技術の研究・論文データが入手できてしまうということが遠因にあるでしょう。もし、英語など外国語でしか存在しない国の場合、「英語などの外国語ができること」が “足切り” の項目になってしまいます。

 そうなると、英語のできない人は高等教育を受けることが困難になり、『格差』が拡大する結果を招いてしまいます。こうした状況はあまり歓迎できることではないと言えるでしょう。

 日本の現実的な問題は「就職試験で英語力が問われるだけ」であることです。要するに、『学生時代に身につけた英語力』を社会人になってから重宝している人が極端に少ないことです。

 “使わない能力” は『体力』と同じで時間の経過とともに劣化して行きますし、外資系企業・外国人上司・海外勤務といった立場でない限り、日常生活で英語を使う機会はほとんどないでしょう。

 それだけ、日本では「英語力を身につけるために費やした労力」に見合うだけの「報酬」が確立されていないことが問題なのです。

 

 日本の英語能力指数を高めたいなら、韓国の VANK のような組織を作ることが有効でしょう。国が運営資金を援助し、日本の情報や主張を英語でアピールするために “英語ができる日本人” を数多く雇用すれば済むからです。

 宣伝広告と言えば、電通のような広告代理店の本業です。ただ、電通が「日本国外の市場」で存在感を発揮しているとは言えず、「日本国内」がメインになっていることが現状を如実に示していると言えるのではないでしょうか。