『貴乃花憎し』が見え隠れする日本相撲協会、「貴景勝の大関取り」には消極的で「高安の綱取り」には含みを持たせる

 平成30年(= 2018年)九州場所が11月25日に終了し、小結・貴景勝の初優勝で幕を閉じました。

 2場所続けて小結の地位で22勝を上げており、来年の初場所の成績次第で大関・貴景勝が誕生が現実となるでしょう。ただ、『貴乃花憎し』の態度が透けて見える相撲協会は「内容も求める」とのコメントを出す有様です。

 その反面、綱取りの資格すら存在しない大関・高安には「綱取りの可能性」に含みを残しているのです。相撲協会の姿勢は露骨すぎると言わざるを得ないでしょう。

 

 阿武松審判部部長(元関脇益荒雄)は来場所、貴景勝の大関とりに関して「相撲内容と白星を見ながら、判断することになる。何勝とは言えません。(可能性は)ゼロではない、というくらいにとどめさせてください」と話すにとどめた。

 正式な大関とりではないものの内容次第で昇進を判断する。先場所9勝、今場所13勝で来場所11勝なら三役で3場所33勝の昇進目安を満たすことになる。

 優勝次点の大関高安の綱とりに関しては「その辺はもう一回話し合いたいところ。今は軽はずみな発言は出来ない。来場所の相撲だと思う」と話した。

 

来年(= 平成31年)の初場所で貴景勝が11勝以上すれば、大関昇進を見送る理由はどこにもない

 貴景勝は今年九州場所までの直近2場所で小結を務め、22勝を上げています。来場所は関脇に昇進することが確実であり、そこで11勝以上の成績であれば「大関昇進の内規」を満たすことになります。

画像:貴景勝の直近3場所の累積勝利数

 大関昇進の内規は「三役(関脇または小結)の地位を連続3場所を務め、通算33勝以上」となっています。

 貴景勝の九州場所までの3場所での通算勝利数は32勝。また、7月の名古屋場所では前頭3枚目の地位にあったため、大関昇進の内規をまだ満たしていません。そのため、九州場所での初優勝を理由に下駄を履かせてまで大関・貴景勝を誕生させる必要はないです。

 ただ、初場所を関脇の地位で迎えるであろう貴景勝が初場所で11勝以上の成績を残した場合、相撲協会に大関・貴景勝の誕生を拒む理由はありません。ここを無理に歪めると、他に部分に “しわ寄せ” が生じることになってしまうからです。

 

大関・高安に「綱取りの資格」は存在しない

 日本相撲協会がダブルスタンダードなのは「12勝3敗の成績で九州場所の優勝を逃した大関・高安に来場所での綱取りに含みを持たせていること」です。

 横綱への昇進要件は「大関の地位で2場所連続優勝またはそれに準じる成績」です。“準じる成績” というのは「優勝決定戦で敗れた」という意味であり、「次点」という意味ではありません

 しかし、日本相撲協会(≒ 審判部)は「初場所の成績次第では高安の横綱昇進もあり得る」との含みを持たせているのです。貴景勝への対応と比較すると、異常な “忖度” が浮き彫りとなります。

 「横綱不在の場所での好成績」を理由に『貴景勝の大関昇進』には注文を付けて置きながら、同じ場所で貴景勝の後塵を拝した『高安の横綱昇進』には門戸を最大限開いておこうとしている有様です。明らかに異常な対応だと言わざるを得ないでしょう。

 

「13勝2敗での優勝決定戦で、高安が貴景勝を下すこと」が日本相撲協会にとって最高の展開だった

 九州場所の結果が相撲協会が「好まない結末」であったことは否定できないでしょう。なぜなら、決定戦に持ち込まれていれば、以下の事態になっていたはずだからです。

  • 貴景勝:
    • 9月場所と11月場所の通算で22勝
    • 協会は「来場所は大関取りの場所」と公言可能
  • 高安:
    • 「優勝」か「それに準じる成績」で終える
    • 協会は「来場所は綱取りの場所」と公言

 大関昇進に「優勝」は必須条件ではありませんが。綱取りは「優勝」が大前提です。つまり、協会としては「高安が決定戦で優勝を手にする」という展開が「状況を丸く収めることができる最適解」だったのです。

 ところが、結果は貴景勝の単独優勝。しかも、様々な “おまけ” が付く形での初優勝となり、相撲協会が排除した貴乃花親方の手腕が高く評価される皮肉な結果を招いてしまうことになりました。

 しかも、「大関・高安の綱取り場所」とすることで「横綱・稀勢の里の進退が賭かった場所」が注目されるのを避けようとする目論見は頓挫。醜態をさらし続ける日本人横綱の延命を容認し、綱の品格を落とす原因を自ら作り出すこともなっている悲惨な状況となっています。

 

 さて、大関昇進への期待がかかる貴景勝ですが、「来場所は厳しくなる」との予想を口にしています。

 上位勢が貴景勝対策に本腰を入れることに加え、優勝によるメディア対応などで休養・稽古不足が起きることを見越しての発言でしょう。ただ、「目先の勝敗よりも取組内容に重点を置く」との発言があり、不摂生をするようなことがなければ、大崩れが起きる心配はないと考えられます。

 大阪で行われる来年3月の春場所に『大関・貴景勝』として地元・兵庫に凱旋することができる成績を初場所で残すことができるのかに注目と言えるのではないでしょうか。