自衛隊の日報問題を批判・追求する布施祐仁氏が「韓国軍による火器管制レーダー照射事件は政治問題にすべきでない」と矛盾する主張を展開

 韓国海軍の駆逐艦が自衛隊の哨戒機に火器管制レーダーを照射するという事件が発生しましたが、この問題が思わぬ所にまで飛び火し、矛盾する主張をしていた界隈が存在していたことが浮き彫りとなっています。

 例えば、南スーダンでの自衛隊の活動を記した日報問題を追求していた布施祐仁氏です。

 日報問題では「非公開は許されない」との批判を行っていた布施氏は韓国海軍による火器管制レーダー照射問題では「政治問題にすべきでない(= 表に出さずに処理すべき)」と主張しています。これは明らかなダブルスタンダードであり、矛盾していると言わざるを得ないでしょう。

 

「現場の感情が高ぶっただけの可能性があるから、騒ぎ立てることではない」と主張する布施祐仁氏

 布施祐仁氏は朝日新聞が報じた「駆逐艦乗組員の感情が高ぶった?」との記事の主張内容に賛意を示すツイートを行っています。

画像:布施祐仁氏のツイート

 僕も同じ見解。友軍であり、砲も向けておらず、ロックオンされた海自側の乗組員にも緊迫感はみられない。政治問題化させるようなことではないと思う。

 「軍艦が任務をこなしているなか、日本の自衛隊機が接近してきたことに指揮官以下、乗組員の感情が高ぶり、やってしまったということではないか」

 この主張内容には複数の問題点があります。そのことを認識せずに主張しているなら、「韓国擁護」としては逆効果がもたらされる結果となるのです。

 では、問題点を具体的に指摘することにしましょう。

 

問題点1:「 “感情が高ぶった現場の暴走” を政府が不問とすること」を容認している

 まず、1点目は「感情が高ぶった現場の暴走を容認している」ことです。

 現場の自衛官や韓国軍兵士にも喜怒哀楽の感情はあります。どれだけ訓練しても、感情の起伏を完全に抑え込むことは不可能です。ただ、感情に任せた暴走は止めることができるでしょう。なぜなら、そこは重点的に育成カリキュラムが組まれているはずだからです。

 日中戦争の発端となった盧溝橋事件は「感情が高ぶった現場の暴走」が大きな要因です。これは『先の大戦』で得た教訓と言えるでしょう。

 それだけ「現場の暴走」は起きないように注意を払う必要があるのです。万が一、暴走が発生した場合は「初動対応」が重要になります。少なくとも、問題を起こした側(= 今回の件では韓国側)が「不問」の判断を下すことは論外と言わざるを得ないものなのです。

 

問題点2:『友軍』だからこそ、大きな問題

 次に、火器管制レーダーを照射したのは “日本から見て友軍” である韓国軍という点が問題です。

 敵国や仮想敵国と見なしている国の艦船からレーダーを照射されることは想定の範囲内でしょう。なぜなら、「火器管制レーダーの照射を受けるリスクがある」との認識を持った上で対象の艦船に接近するからです。

 しかし、“友軍” という位置付けの国からレーダーの照射を受けた場合は状況が大きく異なります。これは『友好国』から『仮想敵国・敵国』へと付き合い方を180度転換させる必要が生じるからです。

 「友好関係を構築している企業が敵対的な動きを見せた」となれば、不信感が生じます。

 『友好関係』は「敵対的な動きを見せたこと」を黙認する理由にはなりません。満足な説明すらできないようでは関係悪化は避けられないと言えるでしょう。

 

問題点3:韓国海軍の駆逐艦は「垂直発射型の艦対空ミサイル」を装備済、「砲の向き」は無関係

 3つ目の問題は「砲が向けられていない(から問題ではない)」と主張していることです。

 韓国海軍のセジョン・デワン(世宗大王)級駆逐艦は『艦対空ミサイル』を装備しています。『艦対空ミサイル』の発射には「火器管制レーダーの照射」が不可欠なのですが、発射方式は「垂直発射型(= VLS, Vertical Launching System)」が採用されています。

 つまり、駆逐艦から垂直方向に向かって発射され、空中で方向転換して “目標物” に向かう兵器なのです。

 したがって、「砲の向き」は全く関係ありません。『艦対空ミサイル』を命中させるためには火器管制レーダーを照射することが必須であり、その行為を韓国軍が自衛隊機に行っていたことが問題なのです。

 

問題点4:現場レベルでの対応を拒絶したから、政治問題へと発展した

 4つ目の問題は「布施氏が政治問題化すべきでない」と主張していることです。

 韓国側が「現場での対応」や「日本からの批判を受けた後の対応」に真摯に取り組んでいれば、それほど大事にはならなかったでしょう。現場レベルで対応できなかったから、上位の問題へと発展する結果を招いてしまっただけに過ぎません。

  1. 自衛隊機からの問いかけを無視
  2. レーダー照射問題の非公表を要求
  3. 「火器管制レーダーを照射された」との批判に対する弁解が二転三転

 現場での自衛隊機からの問いかけを無視した上、「レーダー照射は認めない。謝罪もしないが、この件は公表するな」と主張すれば、政治問題と化すのは当然です。

 なぜなら、現場レベルでの問題解決を韓国側がことごとく拒絶しているからです。「手順ミスがあった。攻撃の意図はない」と現場で応答したり、批判が寄せられた時点で謝罪していれば、メディアが報じるような大事にはならなかったでしょう。

 要するに、「日本に頭を下げることなどあり得ない」という立場で対応した韓国側が招いたことなのです。問題行為の発端を含め、責任は韓国にある訳ですから、日本側は韓国を甘やかすような対応を採る必要は全くないと言えるでしょう。

 

 『先の大戦』での反省から、ほとんどの国で「文民統制」が軍に対する統治体系となっています。“軍人レベル” で対処できない問題が起きたのであれば、上位に位置する文民(の代表者で構成される政府)が対応する案件となります。

 これを否定してしまうと、軍に対する文民統制が崩れる要因となってしまうことを忘れるべきではありません。

 韓国も2014年に合意した CUES (Code for Unplanned Encounters at Sea、洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準)に当初から加入しているのです。国際規則を守らずに言い訳を二転三転させている国に理解を示す必要はないと言わざるを得ないのではないでしょうか。