経産省が太陽光発電の買取価格引き下げを決定するも、“焼け石に水” 感は払拭できず

 NHK によりますと、経産省の有識者会議で太陽光発電による買取価格が2019年度は14円(500kW未満)に引き下げられることが決定したとのことです。

 FIT (= 全量固定買取制度)が原因の負担は少しは抑制されることになるでしょう。ただ、40円ほどの高額買取の保証期間は20年と長期であり、“焼け石に水” 程度である現状は厳しい批判を向けられるべきものと言えるはずです。

 

 9日開かれた経済産業省の有識者会議で新年度・2019年度の買い取り価格が決まりました。

 それによりますと、最も件数が多い、発電能力が500キロワット未満の太陽光については1キロワットアワー当たり14円とし、現在の18円から4円、率にして22%引き下げるとしています。

 また、より安い価格を示した事業者から順番に電気を買い取る入札制度の対象を、これまでの大規模発電所から発電能力が500キロワット以上の中規模発電所まで拡大し、一段の価格低下を促します。

 FIT には「電気代上昇」という弊害があるのは導入前の段階から分かっていたことです。是正に向けた動きがあるのは当然と言えるでしょう。

 「月にコーヒー1杯分」と言われていた負担額が今では「月額1000円になるのは時間の問題」となっているのです。買取価格のさらなる引き下げは不可避と言えるはずです。

 

ヨーロッパでの太陽光発電による買取価格は10円/kWh を下回っている

 NHK が報じた経産省の有識者会議で議論された内容は公開されています。

 事業用太陽光発電(2000kW)の買取価格の推移も資料(PDF)の中で示されているのですが、日本の買取価格は欧州の約2倍であると読み取ることができます。

画像:太陽光発電の買取価格の推移

 再生可能エネルギーではドイツが事例として取り上げられますが、2011年の時点でドイツの買取価格は 30円/kWh 程度でした。しかし、40円/kWh という “割高な買取価格” が決定したのです。

 『全量固定買取』である上、期間も20年と長期に渡ります。認定されたものの未稼働という発電施設も数多くあるだけに、買取価格の引き下げについては “あるとあらゆる手段” を用いて継続する必要があると言えるでしょう。

 

FIT の認定件数は 10〜50kW が圧倒的に多い

 FIT の認定件数も経産省の有識者会議が公開している上述の資料から確認することは可能です。

画像:FITの認定数(件数ベース)

 最も多いカテゴリは 10〜50kW で、約68万件が認定され、約49万件が導入されています。導入されている全体数は約52万件ですから、約 94% の割合に相当します。

 そのため、買取金額が18円から14円に引き下げられるのは妥当なものと言えるはずです。ただ、注意する必要があるのは「容量ベースでは 36% ほど」であるという事実です。

 そのため、500kW 以上の発電能力を持つ施設からの買取は「入札」という形で是正されることが決定したのです。

 

500kW 以上の発電能力を有する太陽光発電所から FIT を通して買い取られている電力は容量ベースで 50% 超

 事業用の太陽光発電を容量ベースで見た数値は以下のとおりです。

画像:FITの認定数(容量ベース)
  • 全体:33,519 MW
    • 入札対象:52.6%
      • 2000kW 超:5,411 MW
      • 1000〜2000kW:8,425 MW
      • 750〜1000kW:2,051 MW
      • 500〜750kW:1,744 MW
    • 10〜50kW:12,347 MW (= 36.8%)

 500kW 以上の発電能力を有する太陽光発電所から FIT を通して買い取られている電力量は容量ベースで 52.6% になるのです。件数ベースでは 5% にも満たないのですから、買取手法を「入札」に変更しても対応できる範囲内と判断したのでしょう。

 いずれの規模の発電所においても、FIT 導入から間もない時期に認定された発電所による容量が大きく、高額な電気代を引き起こす原因となっています。

 「入札」に加え、「電力取引市場でマイナス価格(= 発電事業者が引き取り料を支払う)」を積極的に運用し、電気代の引き下げを図ることが経産省の責務と言えるのではないでしょうか。