国際 “反捕鯨” 委員会と化した『国際捕鯨委員会(IWC)』が加盟国に「脱退を検討すべきではない」との議長書簡を送る

 共同通信によりますと、国際捕鯨委員会(IWC)が加盟国に対して「脱退を検討すべきでない」との議長書簡を公開したとのことです。

 「秩序ある捕鯨」を目的に発足した組織であるにも関わらず、「反捕鯨」が目的になったのですから、脱退する国が出てくるのは当然でしょう。捕鯨を希望する国が『反捕鯨組織』に留まることの利益を示せない時点で「無意味な書簡」と言わざるを得ないのです。

 

 国際捕鯨委員会(IWC、本部・英南部ケンブリッジ)は18日、ビビッチ議長(スロベニア)が加盟国に脱退を検討しないように促し残留を訴える、17日付の加盟国宛て書簡を公表した。日本政府が脱退を通告したことに危機感を抱いていることが背景にあるとみられる。

 ビビッチ氏は書簡で、IWCは長い歴史の中で加盟国が幅広い意見を表明し、議論する場を提供してきたと指摘。「多様な意見を持つ活発な組織の一員であることは、われわれ全員に利益があることだと考える」として、加盟国にIWCにとどまるよう訴えた。

 「秩序ある捕鯨」を目的に発足した組織に反捕鯨国が存在することは「多様な意見」とは言いません。

 なぜなら、妨害目的で加盟しているだけだからです。“本来の目的” を見失った組織に留まる意味はなく、(一部の)反捕鯨国の自己満足と言えるでしょう。

 

聞く耳を持たない反捕鯨国を説得するメリットが捕鯨国には存在しない

 IWC において、重要事項を決めるには「4分の3以上の賛成」が必要です。捕鯨・反捕鯨の勢力はどちらも5割ほどであり、両陣営ともに議決を通せない状況なのです。

 そもそも、IWC (= 国際捕鯨委員会)は「秩序ある捕鯨」のために発足した組織です。そこに反捕鯨国が加入して商業捕鯨の一時停止が採択され、以降は動きが(どちらも)取れなくなってしまう結果となりました。

 日本は科学的データを提示することで「捕鯨再開」を訴えていますが、反捕鯨国は聞く耳を持たず、状況は膠着したままです。

 その結果、昨年末に日本は IWC に脱退を通告しました。捕鯨希望国として、日本の判断は妥当なものと言えるでしょう。なぜなら、今の IWC に留まった上で反捕鯨国を説得するメリットが何も見当たらないからです。

 

『商業捕鯨国に制約を課すことができない IWC』から加盟国がドミノ式に離脱する恐れがある

 このタイミングで IWC の議長が「脱退すべきでない」との書簡を加盟国に送った理由は「ドミノ式に離脱が発生することを防ぐため」でしょう。なぜなら、捕鯨・反捕鯨の両陣営に「離脱」を決断するだけの理由があるからです。

  • 捕鯨国:離脱すれば、日本のように商業捕鯨が可能
  • 反捕鯨国:IWC を離脱した国の捕鯨を止める術がない

 日本のように捕鯨をしたい国が IWC に留まる理由はありません。「クジラの完全保護」を要求する反捕鯨国との間で合意点を見つけることは不可能なのですから、行政資源を費やすことすら無駄と言えるのです。

 一方で捕鯨国が離脱すると、反捕鯨国にとっても IWC に留まる根拠が薄れます。IWC で「クジラの完全保護」を可決しても、非加盟国にはそれを守る責務が存在しないのです。

 「 “反捕鯨国の海洋資源である鯨” の完全保護」を訴えている訳ではないのですから、議論は平行線のままとなるでしょう。

 

IWC の加盟国は拠出金を出しており、機能不全に陥っている組織への風当たりは強くなる

 また、忘れてはならないのは「IWC の加盟国は拠出金を分担している」という事実です。IWC が公開している予算額は年160万ポンド(2015年)。日本は加盟国でトップの約13万ポンドを負担しています。

 「自国の排他的経済水域内で捕鯨をする」との姿勢を表明した日本の予算面での負担を反捕鯨国がカバーすることは十分に可能な額でしょう。ただ、反捕鯨国は「分担金を拠出し続ける意味はあるのか」との自国民からの問いが生じた場合に説明することは容易ではありません。

 なぜなら、「IWC を離脱した日本の捕鯨活動を止めれないなら、拠出金を出す意味はない。他の分野に予算を回すべき」との批判を受けることになるからです。

 “本来の目的” から逸脱した活動を続ける組織に留まるメリットはありません。そのことを自覚しているから、議長書簡という形で加盟国の離脱ドミノが発生することを防ごうとしているのでしょう。

 反捕鯨国が乗っ取りに成功した IWC の役目は終わったと言えるのではないでしょうか。