政府機関の閉鎖が続くアメリカ、トランプ大統領の妥協案に民主党が応じず事態打開の様相は見えず

 NHK によりますと、新たな予算が成立せずに政府機関の一部閉鎖が続くアメリカでトランプ大統領が妥協案を提示したとのことです。

 ただ、アメリカ議会下院を握る民主党は「壁の建設費」への予算拠出に反対しており、妥協案に応じる構えは見せていません。そのため、“チキンレース” の様相が強まっており、政府機関の閉鎖はさらに続く可能性が高いと言えるでしょう。

 

 トランプ大統領は19日、ホワイトハウスで国民向けに演説し、壁の建設の必要性を改めて訴え、民主党に壁の建設費を含む予算案を認めるよう求めました。

 一方で、子どもの時に親に連れられ不法に入国し、正式な滞在許可を持たない若者たちを強制送還せずに在留資格などを与える措置を3年間、延長する新たな妥協案を示しました。トランプ大統領としては歩み寄りの姿勢を見せることで、見返りとして民主党側に譲歩を迫るねらいです。

 譲歩案として妥当なものと言えるでしょう。そのため、注目点は「妥協案が提示された民主党がどのように振る舞うのか」になります。

 しかし、現状ではトランプ大統領からの提案に応じる意向は示しておらず、結果的に政府機関の閉鎖が続く形になるでしょう。

 

トランプ大統領から提示された『妥協案』は合理的なもの

 トランプ大統領が提示した『妥協案』は以下のものです。

  • 要求:『壁の建設費』を含む予算案の認定
  • 譲歩:不法移民に対する暫定的な在留許可

 “落としどころ” としては「合理的な提案」です。この妥協案でトランプ大統領と民主党が合意に達することができないなら、話し合いによる解決は絶望的と言えるでしょう。

 ただ、両者ともに「相手陣営に譲歩したら敗け」というスタンスを貫いており、政府機関が閉鎖される原因となっています。

 『壁』は完成しなければ、効果は見込めないのです。「建設調査費のみを計上する」などの “嫌がらせ” はできるのですから、予算の決定権を持つ民主党の出方次第なのです。

 

『不法移民』を『新規移民』と “修正” して同情論を煽るリベラル派の戦術では支持は広がらない

 予算案を承認しない民主党ですが、支持が広がらないのは「不法移民への甘い対応」を要求しているからでしょう。

 民主党の支持基盤であるリベラル派は『 “不法” 移民』を『 “新規の” 移民』という扱いで報じ、「合法的な移民が排除される」とのレッテル貼りを行っています。これは不法入国者を容認することと同じなのですから、支持が広がらないのは当然です。

 また、“正規の手法でアメリカ滞在資格を得た移民” にとって、“不法移民” の存在は迷惑以外の何物でもありません。なぜなら、「同じ穴の狢」と見なされる原因となるため、自分たちの社会的信用が損なわれる大きな要因になる恐れがあるからです。

 しかし、リベラル派は「移民を犯罪者として見ることは差別」と批判するでしょう。

 ただ、この主張が説得力を持つのは「不法移民を減らす政策を実施している場合だけ」です。現在のリベラル派のように『不法移民』を『新規移民』と呼ぶことで不法入国・滞在者を増やす政策を推進するようでは「マッチポンプ」と言わざるを得ないのです。

 

政府機関の閉鎖はチキンレースの様相を呈している

 アメリカの予算承認はチキンレースの様相を呈しています。トランプ大統領の提示した妥協案に民主党は消極的で合意に達する見込みがあるようには見えないからです。

 おそらく、民主党は『壁の建設予算』は「ゼロ回答」で行く考えなのでしょう。「トランプ大統領が『壁の建設予算』を入れる限り、いかなる予算案も承認しない」という強行姿勢を採るものと考えられます。

 熱心な支持者には受けることは間違いないのですが、政府機関が閉鎖される中でも警察・消防などは無給で働くことを余儀なくされています。その不満が民主党に向けば、元も子もないだけに繊細な舵取りが必要と言えるでしょう。

 なぜなら、トランプ大統領には「合理的な妥協案は提示した。話し合いにすら応じない民主党の責任が大きい」と主張できるからです。政府機関が閉鎖されていても、経済活動を行う上での弊害が少ないなら、連邦予算の削減も視野に入ると思われます。

 長期戦に入りつつある予算案がどのような形で承認されることになるのか。両者がどういった譲歩を最終的に決断するのかに注目と言えるのではないでしょうか。