不正統計問題を抱える厚労省、この時期に『認知症患者による注文をまちがえる料理店』を開催して絶望的なセンスを示す

 認知症の高齢者たちが働く『注文をまちがえる料理店』が厚生労働省にオープンしたと NHK が報じています。

 認知症への理解を深めるためのキャンペーンとのことですが、時期と目的・主張が適切とは言えないでしょう。不正統計問題を抱える厚労省で頼んだものと違ったものが来ても、「まっ、いっか」とは受け流せるものではないからです。

 

 今回は厚生労働省の庁舎内にある中国料理店で、4日と5日の2日間開かれ、4日夜は65歳から91歳の認知症の当事者7人が、スタッフとして働きました。

 スタッフたちは注文を取って料理を配膳しますが、どこのテーブルに運ぶのか何度も確認したり、客に聞いたりしながら、注文を間違えないようにして仕事を進めていました。

 認知症の高齢者は2025年には700万人と、高齢者の5人に1人に上ると推計され、認知症になっても普通の暮らしができる社会づくりが大きな課題となっています。

 (中略)

 催しを開いた団体の和田行男理事長は「『認知症になったら間違えることもあるよね』と、寛大な心で社会全体が受け入れられるよう活動を広げていきたい」と話しています。

 

間違いは誰にでもあるが、「損害の免責を要求する姿勢」が世間の理解を得にくくなる要因

 ミスや間違いは誰もがすることです。忘れ物をしたり、テストでケアレスミスをした経験は誰もが持っていることでしょう。そのため、「間違ったこと」を過度に批判すべきではありません

 「間違ったことを過度に批判すべきでない」という意見は世間で多数派になるはずですが、そのためには前提条件を満たす必要があります。

 それは「ミスや間違いをした当事者が責任を取ること」です。当事者が子供も場合は保護者が責任を取る。この条件が満たされた状態にあれば、「間違いやミスを過剰に批判すべきでない」との意見が説得力を持つのです。

 しかし、“特定の要因” を持ち出して「ミスや間違いで生じた損害の免責」を要求し始めると反感を買う結果となります。

 「外国人だから規則やルールを知らないのは当然」、「認知症だから間違えるのは当然」などと主張することで、これらが原因で起きた損害を免責しようとする魂胆が透けて見えるのです。要するに、損害を受けた側が “泣き寝入り” を強いられることになる訳ですから、理解が広がらないのは当然と言えるでしょう。

 

「ルールを守れない人物」が街中に増加する状況で、“秩序が保たれた普通の暮らし” は成り立つとは考えにくい

 様々な人が生活する社会で求められるのは「法律や規則を守ること」です。

 価値観や利害は個人によって異なるのですから、それらが原因でトラブルが発生することは想定の範囲内です。だから、事前にルールが設けられており、人々には「ルールを守ること」が要求されているのです。

 ところが、最近は “弱者への配慮” を掲げ、「ルールを守れない人もいるのだから、それを受け入れた社会を作るべき」との主張が出て来ています。

 この主張は問題と言わざるを得ないでしょう。「『認知症になれば、道路の逆走もあるよね』と寛大な心で社会全体が受け入れるにしたい」と主張していることと同じだからです。

 社会秩序を保つためには『社会の構成員である個人』が規則を守ることが前提です。“規則を守れない人物” を容認するほど、秩序が乱れることになるのですから、現行基準での “普通の暮らし” は不可能と言わざるを得ないでしょう。

 もちろん、「秩序が乱れたことで違反行為が蔓延した社会」が『普通』となれば、間違えることが当たり前の認知症患者も社会で “普通” の暮らしができることでしょう。ただ、「弱者への配慮の喪失」が代償になっているはずですから、この部分を差し引いて考える必要があります。

 

「債務不履行のリスク」の受け入れを求めるなら、「達成度に比例した報酬体系」を導入すべきだ

 『注文を間違える料理店』は「依頼内容を満たさない可能性のある料理店」です。

 注文という『業務命令』を正確に履行できなかったのですから、正規の報酬を支払う責務はありません。これを “認知症への理解を求める団体” が受け入れるのであれば、世間の反発もある程度に限定されると思われます。

 しかし、「要求された内容が満たされていなかったとしても、『認知症では間違いがあるのは当然』ということを加味し、要求を満たした際の報酬を支払うべき」との姿勢が目立っているのですから、理解が広がらないのは当然です。

 “認知症患者への同情” を世間に訴えかけていますが、“認知症患者によって引き起こされた事件・事故の被害に対する補償” にはほとんど言及がされていないからです。「多少のミスは受忍すべき」との主張は反感を招く原因ですから、慎むべきだと言えるでしょう。

 

 もし、『認知症』を理由にミスが免罪されるなら、企業は認知症患者を雇用することでしょう。なぜなら、「認知症になったら間違えることもある」と主張し、「寛大な心で受け入れるべきだ」とミスを認知症患者に押し付けることで誰も責任を取らなくて済むようになるからです。

 不正統計問題で厚労省は矢面に立たされているのです。今度も同様の問題を起こす可能性を考慮すると、『認知症患者に責任転嫁できる仕組み』を構築する価値はあると言えるのではないでしょうか。