ネーションズリーグの導入に勤しむ FIFA はW杯を「シード枠が設けられた完全トーナメント戦」で開催すべきだ

 国際サッカー連盟(FIFA)が2022年のカタールW杯から48カ国が出場する大会形式に変更しようとしていると読売新聞などが報じています。

 主催者である FIFA の収益を増やすために「拡大路線」に歯止めがかかることはないでしょう。また、代表チーム同士のリーグ戦であるネーションズリーグの導入も検討しているため、W杯を現行方式で開催することの価値が薄れている状況です。

 したがって、W杯は「シード枠が設けられた完全トーナメント戦方式」で開催されるべきと言えるでしょう。

 

 国際サッカー連盟(FIFA)は15日、米フロリダ州マイアミで理事会を開き、現行32のワールドカップ(W杯)出場枠を2022年カタール大会から、48に増やす案について結論を見送った。近隣国との共催を条件に枠拡大は可能とし、カタールとともに本格検討したうえで、6月に最終決定する。

 (中略)

 一方、欧州で先行導入され、FIFAが世界拡大を目指すネーションズリーグの将来像は、継続して話し合うことになった。

 FIFA は “カタール・ゲート” でブラッター前会長が失脚。世界的なスポンサーを失い、中国系企業に支えられる状況に陥っています。

 そのため、財政の立て直しが急務となっており、FIFA の懐を潤す政策が矢継ぎ早に打ち出されることでしょう。「カタールW杯から48カ国」と打ち出しているのはこれが理由です。しかし、過密日程が問題となるため、現行の大会形式では無理があると言わざるを得ません。

 したがって、大会形式そのものを変えるべきと言えるでしょう。

 

テニスの4大大会を参考に、W杯を『シード枠が設けられた完全トーナメント戦方式』とすべき

 どのように変更するのかと言いますと、テニスのメジャー大会を参考に『シード枠を設けた完全トーナメント戦』でW杯を開催するのです。

  • 本戦出場国は128カ国
    • 優勝には7試合が必要(= 現行形式と同じ)
    • 全試合数は127試合(= 試合数は大幅増だが、放映権料も増加)
  • FIFA ランキングに基づき、上位32カ国をシード枠を付与
  • FIFA ランキング100位以下の国は予備予選を戦うことで本戦出場資格を得る

 FIFA の懐を潤すことができるのですから、W杯でグループリーグが行われることに拘る必要は少ないと言えるでしょう。

 全127試合が多すぎるなら、本戦出場国を64カ国とすれば良いのです。そうすれば、優勝まで6試合で全試合数は63試合にまで下げられるからです。

 この場合は上位16カ国をシード枠として扱い、FIFA ランキングで41位以下のチームは予備予選を戦うことで本戦出場資格を得るという形になるでしょう。

 

「W杯出場を賭けた地区予選」は消滅するが、空いた日程で「FIFA ネーションズリーグ」を実施できる

 W杯を現行方式からトーナメント方式に変更すると、本戦出場国を大きく増やすことが可能です。それにより、地区予選の価値が消滅してしまいますが、代わりに『FIFA ネーションズリーグ』を実施することが日程的に可能になります。

 これにより、FIFA の懐は今以上に潤うのですから、導入を検討していても不思議ではありません。

 また、FIFA ランキングの低い国に対しては「『ネーションズリーグ』でグループ上位に付ければ、W杯本戦の出場権が得られる」とすれば、興行面でも成功する可能性は極めて高くなります。

 “夢物語” だったW杯に出場できる可能性があることは大きいですし、欧州の UEFA が実施済みの事例を参考にグループ数や参加国を調整することで新しい予選形式を作ることができるでしょう。FIFA が拡大に踏み切ることを躊躇する理由はどこにも見当たらないのです。

 

 多数の試合を行うための会場整備には多額の費用が必要となりますが、それは「共催」という形で既に有効な解決策が導入されています。

 「単独開催」が非現実的になることは既定路線ですから、W杯は「トーナメント形式」、ネーションズリーグは「リーグ戦形式」という形で “住み分け” が行われるべきだと言えるのではないでしょうか。