FIT の買取額が年2兆4000億円を突破、標準家庭での負担額が年1万円を突破することは時間の問題

 NHK によりますと、経産省が発表した FIT (= 全量固定買取制度)による再生可能エネルギーの年間買取金額が2019年度は約2兆4300億円になるとのことです。

 これは昨年度よりも600億円増えており、電気利用者の負担はさらに増加することが既定路線です。2年前の時点で「買取額が2兆円を超えそう」という状況だったのですから、早急に上限を設けなければならない事案だと言わざるを得ないでしょう。

 

 経済産業省が22日に発表した新年度の上乗せ額は、太陽光発電などの導入がさらに進むとみられるため、全体では約2兆4300億円となり、今年度よりも約600億円増加しました。

 これに伴い、電気の使用量が標準的な家庭の負担額が、現在よりも2%増えて1か月で767円、年間では9204円となり、ことし5月分の電気料金から適用されます。

 再生可能エネルギーについて、経済産業省は、電源に占める割合を今の16.1%から、2030年度には22%から24%にする目標を掲げていて、家庭や企業の負担の増加を抑えながら導入を拡大できるかが課題となっています。

 

標準家庭での FIT 負担額が「年1万円」を超えるのは時間の問題

 2017年7月に NHK は「FIT の負担額が導入当初の10倍になった」との記事を掲載し、その中で「年間の負担総額は2兆円を超える見込み」と報じていたのです。

 それが2年も経過していない2019年3月には2兆4300億円にまで達したのです。再生可能エネルギーのメインは太陽光ですが、風力などの他電源も高値で買い取ることが保証されている上、“未稼働の案件” も存在しているのです。

 「年間の負担総額が3兆円を超える」のは確実ですし、それと近い時期に「標準家庭での FIT の年間負担額が1万円を超える」ことになるでしょう。

 その後は「月の FIT 負担額が1000円を超えることになる」と予想されます。月の負担額が「50円」だった FIT 導入時と比較すると、200倍もの負担を強いられることが現実味を帯びているのです。

 この置き土産をした旧・民主党政権の責任は極めて重いと言わざるを得ないでしょう。

 

「再生可能エネが占める割合」を経産省が “決定” した以上、業者側がコスト削減に励む理由など存在しない

 NHK は「家庭や企業の負担の増加を抑えながら導入を拡大できるかが課題」と述べていますが、再生エネ事業者が課題解決に取り組むことはないでしょう。

 なぜなら、再生可能エネルギーの供給力は “将来的な割り当て分” を下回っており、事業者側に「値下げをする動機」が存在しないからです。

 再生可能エネルギーによる発電のメインは水力です。しかし、日本に「新たな水力発電所を建設できる場所」は皆無に近く、再生エネの割合を高めるのであれば、太陽光か風力に注力せざるを得ません。

 経産省が「現状よりも 10% 弱は割合を増やす」と “決定” した以上、割高な買取価格が利用者に転嫁されることになるのです。

 経済性の乏しい再生可能エネを重視する現行方針から撤退をしないかぎり、経済の落ち込みが深刻化することは避けられそうにないと言えるでしょう。

 

「家庭用や業務用での自産自消」からの逸脱を後押しする FIT は是正対象とすべきだ

 再生可能エネルギーで意味があるのは「家庭用や業務用での自産自消」です。「自家消費を基本とし、余剰分は買い取る」という形であれば、持続することは可能でしょう。

 しかし、現状は「高価格での全量買取」が保証されているため、売電がメインになっています。これでは電気代が上昇するのは当然です。この傾向を政府が後押ししているのですから、方針転換をしなければ弱者にとっては厳しい環境になることが予想されます。

画像:電源構成を変化させた際の影響

 家庭や企業の負担を抑えるのであれば、「既存の原発を活用すること」が最も現実的で効果のある方法です。これで数兆円の電気代が下がるのですから、現行の FIT による負担分と同額の値下げが期待できるのです。

 また、FIT の制度そのものを是正にすることで兆単位の額を引き下げることができるのですから、検討・実施に踏み切るべき事案だと言えるでしょう。

 

 「『再生可能エネルギーの割合を増加させる』と決定し、覚悟を決めれば実現は可能」と主張するのは第二次世界大戦の時の失敗と同じです。先の大戦から何も学んでいないのは再生可能エネを盲信する反原発派だと言えるのではないでしょうか。