『伊丹空港の存続』を訴える周辺の10市協が「軍用機のダイバート(= 緊急着陸)は遺憾」と関係各所に抗議文を提出する

 神戸新聞によりますと、アメリカ軍の輸送機オスプレイが伊丹空港に緊急着陸した件を受け、空港周辺の市で作る『大阪国際空港周辺都市対策協議会(= 10市協)』が防衛省や空港運営会社に抗議文を提出したとのことです。

 「緊急着陸の要請を断るべき」と言っていることと同じですから、10市協の姿勢は厳しい批判にさらされるべきでしょう。軍用航空基地が民間機の緊急着陸を受け入れているケースもあります。

 周辺自治体が航空機の安全を守るためのセーフティネットの利用を阻害するのであれば、伊丹空港が持つ機能は速やかに関西国際空港に移転した方が良いと言えるでしょう。

 

 米軍の輸送機MV22オスプレイが大阪(伊丹)空港に緊急着陸したことを受け、同空港の周辺市でつくる大阪国際空港周辺都市対策協議会(10市協)は2日、着陸を許可した国土交通省と防衛省、同空港を運営する関西エアポートに抗議文を提出した。

 (中略)

 抗議文は、10市協会長の藤原保幸兵庫県伊丹市長名で提出。市街地に位置し、安全への配慮が特に求められる空港にもかかわらず、着陸を許可した国交省に疑問を呈した。

 

「緊急着陸要請を受け入れなければ、どういった(最悪の)事態が発生するのか」を考えられない首長は致命的

 10市協による抗議は異様と言わざるをえないでしょう。なぜなら、「緊急着陸が必要な機体の受け入れを拒否せよ」と要求しているからです。

 緊急着陸を要請している段階なら、着陸の順番を入れ替えることで事故は未然に防げる可能性があります。

 しかし、要請を拒否すると、緊急着陸を必要としている機体は「墜落」しか選択肢がなくなってしまうのです。墜落事故が起きれば、“事故の被害者” に同情が寄せられるでしょう。それと同時に事故を起こした加害者への批判が起きるはずです。

 ただ、事故を起こした直接の加害者であっても、「緊急着陸の要請を拒否されたため、手の打ちようがなくなり、結果として墜落した」と判明すれば、世間の風向きは「なぜ緊急着陸要請を拒否したのか」に変わることでしょう。

 「米軍機だから」は拒否の理由にはならないのですが、10市協は「なる」と考えているのでしょう。このような考えを持つ周辺自治体は航空機の安全に悪影響を及ぼすため、伊丹空港の廃港を考えるべきと言えるはずです。

 

「民間機も軍用の航空基地に緊急着陸している」という事実を都合よく無視しているのではないのか

 今回はアメリカ軍の輸送機オスプレイが伊丹空港に緊急着陸しましたが、逆のケースも日常的に起きています。

 例えば、海上自衛隊が管理する硫黄島航空基地にはエンジン不具合が起こした民間機が緊急着陸しています。(アメリカ・デルタ航空と韓国・チェジュ航空)

 これらの件はどちらも「代替機を使って乗客を目的地に運び、緊急着陸した機体はエンジン修理が終わるまで硫黄島に駐機し続ける」という事態となっています。その間は迷惑をかけ続けているのですから、軍用機だけを悪者扱いすることは不適切と言わざるを得ないでしょう。

 点検作業や運行に万全を期していたとしても、不測の事態に見舞われることはあります。その際に「持ちつ持たれつ」で「お互い様」の関係を築いていた方が事故による損害は最小限に食い止めることができるでしょう。

 事故が起きて喜ぶのは「事故による被害や影響を自らの政治運動に利用しようと考えている界隈」ぐらいです。「事故の発生確率を下げる」、「事故が起きた歳の被害・影響を最小限にする」との目的を忘れているようでは支持が広がらないのは当然と言えるでしょう。

 

10市協が「安全への配慮」を求めるなら、関係各所は「伊丹廃港・関空集約」を再発防止策として提示すべき

 伊丹空港周辺の市で構成される『10市協』は「安全への配慮がない」と抗議しています。こうした “パフォーマンス” に対応することは「時間の無駄」であり、抗議文を受け取った関係各所はボールを10市協に投げ返しておく必要があります。

 具体的には再発防止策として「伊丹廃港・関空への機能集約」を『10市協』に提示すれば良いのです。なぜなら、これで『10市協』は身動きが取れなくなるからです。

  • 「伊丹廃港・関空への機能集約」を実施
    • 国内線と国際線の乗り継ぎ(= 利便性)が飛躍的向上
      → 国や運営会社にはプラス
    • 伊丹廃港で「安全への配慮」を実現
      → 周辺自治体は地価下落のリスクを抱える

 「安全への配慮を考えると『伊丹廃港・関空への機能集約』が最適解」と『10市協』に提示し、『10市協』に結論を出させれば良いのです。

 『10市協』からすれば、“飲むことができない再発防止策” を示されている訳ですから、「納得できない」と文句を言ってくるでしょう。その場合は「別の再発防止策を提示するのは『10市協』の仕事」と切り捨てれば済むことです。

 また、「再発防止策を提示できないなら、安全への配慮は口先だけなのだろう」との嫌味を述べても良いでしょう。緊急着陸の要請を拒否することを求めているのですから、『10市協』の安全に対する認識は疑うべきものであると言わざるを得ないのではないでしょうか。