ボーイング、インドネシアとエチオピアでの墜落事故で自動制御システムの誤作動を認める

 NHK によりますと、ボーイングのマレンバーグ CEO がインドネシアとエチオピアで発生した墜落事故で「自動制御システムが誤作動した」と認めるメッセージを発表したとのことです。

 最終報告書の内容が明らかになっていませんが、システムの欠陥が事故に大きな影響を与えたことは否定できないでしょう。また、機体に運行許可を与えた安全検査も見直す必要もあると言えるはずです。

 

 ボーイングのマレンバーグCEOは4日、ビデオメッセージを公表し、この中で、先月エチオピアで起きた墜落事故について「エチオピア政府が公表した報告書によれば、去年インドネシアで起きた墜落事故と同様に、今回の事故でも、機首の傾きを感知するセンサーの誤った情報によって自動制御システムが作動したことは明らかだ」と述べました。

 (中略)

 ただマレンバーグCEOは、このシステムが墜落の原因になったのかについては「最終的な報告書はまだ明らかになっていない」としています。

 

システムが「異常値」を「正常値」として認識し、機体制御を行ったことが問題

 ボーイングの墜落事故で問題なのは「『異常値』を『正常値』と認識したシステム」でしょう。機体制御が行われたことは問題ではありません。

 機首が上がり過ぎているなら、“適切な角度” にまで下げる必要があります。これを自動制御で行うことは理に叶っていますし、問題箇所を切り分けて議論する必要があると言えるでしょう。

 エチオピアでの墜落事故では離陸直後に機首の傾きを検知するセンサーが「左:74.5度(異常値)」、「右:15.3度(適正値)」を示したことで自動制御システムが作動しました。

 おそらく、システムには「高い方の数値を参照して、機首を下げる」という動作が書かれていたのでしょう。(「左:14.5度」・「右:15.3度」なら、自動制御システムは作動しなかったと考えられるため)

 ところが現実には “あり得ない数値” が検出され、その数値を鵜呑みにした自動制御システムが機首を下げ続けたことで墜落事故が起きた可能性が極めて高いのです。

 システムの修正とともに、「承認」を与えた航空当局による安全検査も体制を見直さなければならないと言えるでしょう。

 

「自動制御システムの誤作動が墜落原因とは言い切れない」との主張は心象を悪くするだけ

 ボーイングのマレンバーグ CEO は「最終的な報告書はまだ明らかになっていない」と述べ、原因が自動制御システム以外の可能性も残されているとの姿勢を示しています。

 現時点での会社の姿勢として間違いではありませんが、“撤退戦” に向けた準備をしていなければなりません。なぜなら、「自動制御システムの誤作動で、機体が墜落しやすい状況に置かれていた」ことは確定的だからです。

 したがって、「開き直り」との印象を与える発言は逆効果になってしまいます。『ボーイング737』には『エアバスA320』というライバル機が存在するため、経営陣の “軽率な発言” でシェアを失うことは絶対に避けなければならないでしょう。

 問題解決に加え、信頼回復も並行して行わなければならない状況にあるのです。

 

欠陥のある自動制御システムを許可してしまった連邦航空局が「検査体制の現状維持」なら問題視されるべき

 インドネシアとエチオピアで発生した墜落事故は『ボーイング社の自動制御システム』にある “バグ” が大きな割合を占めていますが、「許可」を与えた連邦航空局も検査体制の見直しをする必要があるでしょう。

 なぜなら、「誤った検知データが『自動制御システム』に “正しい情報” として認識される」という欠陥を容認してしまう検査体制だからです。

 「自動制御システムの挙動」は結果を確認しやすいため、検査は十分に行われていたことでしょう。しかし、「自動制御システムに引き渡すデータの正確性」はプログラム内部の処理に該当するため、チェックや確認作業が疎かになりやすい状況にあります。

 この点は改善する必要があることは明白ですし、少なくとも許認可権を持つ連邦航空局が現状維持とすることは問題と言わざるを得ないでしょう。

 ボーイングと連邦航空局が今回の問題に対し、どのような解決策を打ち出すかが最初の注目点になるでしょう。“落ち度” があったと見なされる問題であるだけに状況に注視する必要があると言えるのではないでしょうか。