原監督が3度目の監督就任をした巨人、打撃陣の牽引で好スタートを切るも “投壊” による失速への対処が必要不可欠となる
原辰徳氏を新監督に迎えたジャイアンツが好スタートを切り、4月を首位(16勝10負)で終えました。
しかし、5月は負け越して順位を落としており、「テコ入れが必要」な状況です。ただ、打撃陣はリーグトップの成績を残しているため、立て直しの対象は「投手陣」です。
原監督は打者出身ですが、“全権監督” という立場にあります。そのため、少なくとも方向性に対する責任を負わなければならない立場にあると言えるでしょう。
ジャイアンツは「セリーグ最高の打撃陣」を擁している
まず巨人軍の打撃陣ですが、今季セリーグ最高の成績を記録しています。消化試合がセリーグで最も少ない50試合で、リーグ最高の248点をあげているのですから、十分な働きをしていると言えるはずです。
巨人 (50試合) | 広島 (53試合) | |
---|---|---|
打率 / 出塁率 | .265 / .339 | .259 / .333 |
得点 | 248 | 230 |
本塁打 | 69 | 55 |
四球 / 死球 | 184 / 14 | 185 / 18 |
併殺打 | 45 (ワースト) | 32 |
リーグ首位のカープ打線よりも、ジャイアンツの打撃陣が残している成績の方が良いのです。
これ以上の打撃成績を打者に要求することは非現実的ですし、好不調の波があることを考慮すると「2割6分を上回るチーム打率」は十分すぎるレベルです。したがって、投手陣の状態に着目する必要があると言えるでしょう。
試合を作れていた先発投手陣が5月に入って調子を崩したことが転換点
ジャイアンツが3月と4月に好調だった理由は「先発陣が試合を作っていたから」です。
先発陣 | ブルペン陣 | |
---|---|---|
3・4月 | 3.156 (QS: 26試合で17回) |
4.802 (69.1回 37失点) |
5月 | 4.782 (QS: 23試合で8回) |
3.266 (93.2回 34失点) |
26試合で17回のクオリティー・スタート(= 6回以上を投げて3失点以内)を先発投手が記録しているのです。しかも、打線はリーグ最高ですから、ブルペン陣が崩壊していても勝利を手にすることができたと言えるでしょう。
ところが、今年のゴールデンウィークに組まれていた10連戦で先発投手を中5日で起用したあたりから、先発が試合を作れなくなりました。QS の数が半分に落ち込んだであり、ローテーションを崩した弊害が起きていると考えられます。
動きたがる原監督の采配も “投壊” に拍車をかけた
脆弱なイメージがある巨人のブルペン陣ですが、3月4月より5月の方が好成績であることに違和感を覚える人もいるでしょう。しかし、これにはトリックがあります。
先発陣 | ブルペン陣 | |
---|---|---|
5月前半 (2週目まで) |
4.263 (QS: 10試合で4回) |
1.728 (41.2回 8失点) |
5月後半 | 5.234 (QS: 13試合で4回) |
4.50 (52回 26失点) |
実は5月2週目までの10試合まではブルペン陣が圧倒的な成績を残していたのです。
この成績を見れば、「内容が上がらない先発投手を早めに代える」という采配は理に叶っています。しかし、ブルペン陣の疲労は蓄積します。
“強力ブルペン陣” を擁していなければツケを払うことになる采配を原監督が断行した影響が如実に出ていると言えるでしょう。
あと、「投手の配置転換は禁じ手」との認識を持つ必要があります。先発とブルペンでは調整方法が異なります。配置転換をするにはキャンプなど長期的な時間を要しますし、すぐに効果が出ることは期待薄です。
「配置転換で効果が得られなかったから元に再転換する」との判断は論外です。これをやってしまうと、投手のリズムが完全に狂ってしまいます。怪我のリスクが高くなりますし、残りシーズンで該当の投手が良い投球をすることは望めないでしょう。
野手出身の監督である原監督が「投手起用」という別分野で投手心理を加味し、シーズン全体を見据えた起用方法ができなければ覇権を奪還することは難しいと言えるのではないでしょうか。