「中国の法に触れる行為をした容疑者を引き渡せ」との要求が通しやすくなる条例案に対し、香港の住民が大規模デモ運動を起こす

 NHK によりますと、香港政府が容疑者の身柄を中国本土に引き渡すことを可能にする条例が議会で審議されることを前に住民らによる大規模デモが発生しているとのことです。

 中国が “欠席裁判で有罪を確定させた容疑者” に対して正面から引き渡しを要求できるようになるのです。反対運動が起きるのは当然と言えるでしょう。

 

 香港政府は、香港の外で事件を起こしたあと、逃げて来た容疑者について、個別に身柄の引渡し協定を結んでいない中国本土などに引き渡すことができるようにする条例の改正案を議会に当たる立法会に提出し、審議が行われています。

 本会議での審議が12日から始まるのを前に、民主派の団体がデモを呼びかけました。

 民主派の政党や団体は「中国の当局が事件をでっちあげ、香港で中国に批判的な活動をする人などの引き渡しを求めるおそれがある」などとして、改正に猛反発しています。

 

『引渡し協定』が締結されると、海外で有罪となった容疑者が引き渡されることになる

 香港で揉めているのは「中国との引渡し協定が締結されることが現実味を帯びているから」です。中国の影響下に入ることになるのですから、反発が起きるのは当然と言えるでしょう。

 なぜなら、中国が国内法で有罪判決を下した人物の身柄を要求できるようになるからです。この件については「殺人事件や傷害事件を起こした人物の身柄は引き渡されるべき」と考える人が多いはずです。

 しかし、「国内の秩序を乱した」との理由で “中国の裁判所が” 有罪判決を下せば、香港を拠点に活動する反政府運動家を拘束することが可能になります。反対運動が活発になることは当然と言えるでしょう。

 

一国二制度が崩壊する要因になり得る制度変更

 中国が「容疑者認定」をすれば、香港にいる活動家の身柄を自由に拘束することが可能です。これは民主主義が脅かさせる大きな理由になるでしょう。

 例えば、「中国の新疆ウイグル自治区への非人道的な政策に反対」と香港で主張した場合でも、中国本土の裁判所で「国家の治安を乱したため有罪」との判決で、主張した人物の身柄は中国に引き渡されることになります。

 つまり、身柄が中国に引き渡せることで『一国二制度』が無形化するのです。

 『中国の制度』が『香港の独自制度』の上位に位置することになるのですから、『一国二制度』とは到底言えないでしょう。このことを理解しているから、香港で民主化運動をする人々が大規模なデモ活動を展開しているのです。

 

 要するに、中国が気に入らない活動をする人物・団体を “中国国内の裁判所で” 有罪としてしまえば、その人物が香港にいる時点で中国国内と同じように身柄を拘束できるようになるのです。

 欠席裁判で被告を犯罪者に “でっち上げる” ことは容易です。「対岸の火事」で済む問題ではなく、火の粉は台湾に飛んでいるため、日本政府は「静観」を決め込むことはできない状況になりつつあります。

 日頃から「表現の自由」を主張するリベラル派こそ、中国政府に接近する香港当局に対して厳しい批判の声を出す必要があります。踏み絵が嫌との理由で『報道しない自由』を発動させているメディアがあるなら、それに対しても批判を向ける必要があると言えるのではないでしょうか。