朝日新聞、7月9日の一面記事で「元ハンセン病患者家族への賠償を命じた判決に対して国が控訴へ」と大誤報を流す
朝日新聞が7月9日の一面で「元ハンセン病患者家族への賠償命じた判決、国が控訴へ」との記事をトップ扱いで報じましたが、これが大誤報になるという事態が発生しています。
朝刊の一面トップで報じた記事が午前中に誤報であることが判明したのです。朝日新聞は記事の内容をどのように裏付けを取ったのかを明らかにし、再発防止策を提示する必要があると言えるでしょう。
朝日新聞が報じた記事の内容
朝日新聞は7月9日の朝刊一面で以下の記事を報じました。
元ハンセン病患者の家族への賠償を国に命じた熊本地裁判決について、政府は控訴して高裁で争う方針を固めた。一方、家族に対する経済的な支援は別途、検討する。政府関係者が8日、明らかにした。
“政府関係者” の話として、「政府は元ハンセン病患者家族への賠償を命じた判決に対して控訴する」と報じたのですが、これが完全な誤報となりました。
報道機関として当たり前の「裏付け作業」を怠っていた可能性があるのです。お詫びと訂正で済むレベルの誤報ではありませんし、原因を特定した上で再発防止策を講じることは不可避と言わざるを得ないでしょう。
NHK は9日の午前2時に「控訴断念へ」と報じ、9日の午前に安倍首相が「控訴しない」と表明
『元ハンセン病患者家族への賠償を命じた判決』への政府対応が取材したメディアで異なっていたことは事実でしょう。NHK は次のように報じていました。
安倍総理大臣は、元患者だけでなく家族の被害も深刻に受け止める必要があるとして控訴を断念する方針を固めました。
そして今週12日の控訴期限を前に、安倍総理大臣は9日、根本厚生労働大臣、山下法務大臣らと最終的な協議を行い、控訴の断念を正式に決定することにしています。
9日の午前2時の時点で NHK は「控訴断念へ」と報じていました。その根拠は「安倍首相が控訴を断念する方針を持っている」というものです。
つまり、控訴断念の意向を持つ安倍首相が9日に関係大臣(= 厚労相と法務相)と調整した後に期限の12日までに「控訴断念」を発表すると NHK は読んでいたのでしょう。ただ、9日の午前中に「控訴断念」が発表され、NHK も “読み” は外す結果になったと言えるはずです。
しかし、政権の方針は正確に把握することはできていたのですから、この点は信頼に値すると言えるでしょう。
政権内の「控訴すべき」との声を聞いて “先走った” のが誤報の原因ではないか
朝日新聞が大誤報を出した原因は「先走り」でしょう。政権内に「控訴すべきだ」との意見があったことは NHK も認識しています。
おそらく、朝日新聞は「控訴すべきだ」との意見を『政権の総意』と決め付け、一面でスクープ記事として報じたのだと考えられます。ただ、裏付け作業を怠っていたことで誤報となりました。
「ギャンブルに失敗した」と言うこともできますが、報道機関として「致命的な失態」であることは否定できません。速報性でテレビやネットに勝てない新聞社が「スクープを速報する意義」は薄れていることを認識する必要があります。
朝日新聞は今回の誤報問題を起こした原因を認識し、世間に公表すべきです。その上で、同じ原因による誤報を繰り返さない再発防止策を発表できなければ、読者離れに拍車をかける要因となるでしょう。
匿名の編集者が出す「お詫び」では済まない問題です。トップが記名で「原因と対策を示した謝罪記事」を出し、信頼回復に務める必要があると言えるのではないでしょうか。