イランによるタンカー拿捕で緊張が高まるホルムズ海峡の安全確保に向けた有志連合構想をアメリカ政府が日本などに説明

 NHK によりますと、ホルムズ海峡での緊張が高まる中で航行の安全を確保するため、アメリカ政府が同盟国などに有志連合の結成に対する説明を行ったとのことです。

 イランがイギリス籍のタンカーを拿捕するなどホルムズ海峡では緊張が高まっています。そのため、どの政党も参院選終了後に「中東から石油資源を安全かつ安定して輸入するためにどうするのか」を表明する必要があると言えるでしょう。

 

 アメリカとイランの間で緊張が高まる中、トランプ政権はホルムズ海峡の安全を確保するため、同盟国などと有志連合の結成を検討しています。

 この新たな構想についてアメリカ政府は19日、各国の外交関係者を国務省に招いて会合を開き、ワシントンの日本大使館の担当者も出席しました。

 会合は非公開で行われ、詳しい内容は明らかにされていませんが、国務省と国防総省の高官が有志連合の必要性や参加国に求める役割などについて説明したものとみられます。

 会合のあと、日本大使館の市川恵一政務公使は記者団に対し「東京にきちんと報告する。それだけです」と述べ、足早に国務省をあとにしました。

 

他人事では済まされない「ホルムズ海峡通過時の安全確保」

 “日本向けのタンカー” がホルムズ海峡で何者かに攻撃されてから、アメリカは「安全を確保するための有志連合の結成」を訴えています。

 この呼びかけは妥当なものですし、日本政府が先に呼びかけているべきものと言えるでしょう。なぜなら、日本が当事者だからです。

 攻撃されたタンカーが日本船籍ではなかったことは事実です。これは税金等の問題から『パナマ船籍』で登録することが一般的であり、日本が「我、関せず」の姿勢を採っても良い理由にはなりません。

 また、乗組員が(フィリピン人を中心とした)外国人で占められていた事実もありますが、これも海運業でも一般的なことです。

 重要なのは 「日本の企業が発注した日本向けのタンカー船が何者かに攻撃された」ことであり、その対策を採ることは日本政府の責務と言えるでしょう。

 

アメリカが提唱した有志連合の構想を確認することは当然の責務

 アメリカ政府が提唱した「ホルムズ海峡の安全を確保するための有志連合」についての説明会に日本大使館からも出席があったと NHK は伝えています。

 「有志連合に参加するか」は有志連合の『目的』と『役割分担』によって左右されるため、説明会に出席して情報収集することは当然の責務です。現時点で「参加」や「見送り」という結論を声高に主張している人物や団体を信頼すべきではありません。

 なぜなら、「有志連合に参加する合理性があるかが分からない状態だから」です。

 ただ、現状では「有志連合に参加せざるを得ない」となるでしょう。日本はエネルギー源を中東からの石油資源に大きく依存していますし、その供給に不安が生じることは経済に大きな影響を及ぼす恐れがあるからです。

 原発が止まっている現状では「ホルムズ海峡を通過して日本に輸送される石油資源」は “日本の生命線” です。

 原発再稼働推進派の政党であっても、「即座に原発再稼働は難しいため、有志連合への一定期間の参加は避けられない」との結論にならざるを得ないため、『拒否』という選択肢はない状態だと言えるでしょう。

 

『外国人技能実習生問題』に心を痛めている人々は “危険な海域” の航行を余儀なくされているタンカー船員も同様に問題視すべき

 アメリカ政府が提唱する有志連合に対しては野党も賛意を示すべきでしょう。なぜなら、技能実習生問題と同様に「日本のために働いている外国人」が危険にさらされているからです。

 ホルムズ海峡を通過する日本向けのタンカー船員の大部分は外国人です。「日本のために働く」という点では技能実習生と変わりありませんし、 “過酷な環境” に置かれていることも同じです。

 「労働環境の改善」を左派やリベラルは要求しているのですから、安全問題が浮上したことによる有志連合の結成に対し、野党が『有志連合の構想』に反対する理由はどこにも存在しないのです。

 有志連合の構想内容が不明瞭な現状では「安全な航行が重要なのはもちろん理解している。まずは構想の中身を詳しく知りたい」と述べておくべきでしょう。

 構想に反対するなら、「結論を出す上で必要な情報が提示されていない」や「日本が負担すべき役割を大きく上回っている」など具体的な理由を掲げてからでなければ逆効果になってしまいます。

 

 イギリスがイラン籍のタンカーをジブラルタルで拿捕し、イランはイギリス籍のタンカーをホルムズ海峡で拿捕するなど緊張は高まっています。そのため、「日本は無関係」との “事勿れ主義” を採ることは難しい状況です。

 この問題は「 “ぬるま湯体質” がマスコミや野党にどれだけ染み付いているか」を示すリトマス紙になる可能性があると言えるのではないでしょうか。