NHK ですら『処理水』を頑なに『汚染水』と表現し続ける時点で「風評」は発生するし、「事実を報じて風評被害をなくす」という “本来の役目” を忘れている

 NHK が「汚染水の貯水タンクが3年後に満杯になる見通し」と報じています。

画像:『汚染水』と表現し、風評を助長するNHK

 地元からは風評被害を懸念する声が出ていますが、NHK などのマスコミが先頭に立って『汚染水』という表現を使い、風評を引き起こしているのです。

 「『処理水』という正確な表現を使って事実を報じること」がマスコミの責務であるはずです。事実を報道するメディアは自動的に「風評を払拭すること」に携わっているはずですが、それができていないことが問題と言えるでしょう。

 

 福島第一原子力発電所では汚染水を処理したあとに出るトリチウムなどを含む水をタンクに保管し続けていますが、現状の計画では3年後にタンクが満杯になる見通しを8日、東京電力が明らかにしました。タンクを増設する案も検討されていますが、廃炉作業が続く構内の用地には限りがあり、今後、議論になりそうです。

 (中略)

 海などの環境中に放出する方法に対しては汚染を基準以下にしたとしても風評被害を助長するとして地元の漁協や住民などから根強い反対があります。

 

『処理済みの水』を頑なに『汚染水』と表現し、風評の原因を作るマスコミ

 この NHK の記事で問題なのは『処理済みの水』を『汚染水』と表現していることです。事実とは異なりますし、世間が誤解する要因をマスコミが作っていることになるからです。

 したがって、地元(の住民や漁協関係者)が『汚染水』による風評を懸念するのは当然です。

 風評は「事実と異なる情報が流れることでマイナスの印象やイメージが定着すること」で発生します。つまり、「報道機関が本来の役割を果たしているか」で風評被害の規模が決まると言えるでしょう。

 

「世間に対して事実を伝えている」と言うなら、“風評の原因を払拭する内容” がメインの報道になっているはず

 福島第一原発の『処理水』に含まれているのはトリチウムです。“トリチウムが含まれた水” は存在していますし、基準以下の濃度であれば、何らかの問題が生じる原因にはならないからです。

 要するに、自動車などから排出される排気ガスと同じです。排気ガスには『汚染物質』が含まれていますが、基準を下回っていれば大気中に放出することが認められています。

 温暖化や大気汚染を招くことが科学的に証明された物質でも、基準値よりも低い状態なら排出は可能なのです。同じ基準はトリチウムにも採用されるべきですし、トリチウムだけ「排出ゼロ」を要求するのは非現実的と言えるでしょう。

 車両の排気ガスも “フィルター” を通した『処理を施した排気ガス』が実態です。それを『汚染ガス』と表現して風評を煽ることは不適切ですし、そのような問題があるならメディアは風評を払拭する内容の報道を行うことでしょう。

 この方針と同じことを福島第一原発の『処理水』に対しても行うことが報道機関としての責務なのです。

 

「風評を払拭する」と宣言しない時点で、報道機関を名乗る資格はない

 『処理水』や『貯水タンク』の問題でマスコミが罪深いのは「風評を払拭する報道を行う」と宣言していないことでしょう。

 風評は「 “根拠のない噂” が流れることで生じる被害」です。「事実を報じる」と宣言するマスコミが “ファクトチェック” などを使い、徹底的に反論しなければならないものだからです。

 しかし、NHK を含めてマスコミは「地元から風評被害を心配する声がある」と報じるだけです。

 マスコミが『汚染水』という言葉を使って風評を起こし、原発事故の処理に “追加負担” を強いているのです。メディアとしての本分を忘れていますし、自社の収益のためにマッチポンプに手を染めていることは厳しい批判にさらされるべきでしょう。

 風評を払拭する報道ができないマスコミに対し、放送法や軽減税率などによる恩恵を与える必要はないと言えるのではないでしょうか。