ガンバの食野が川崎の板倉と同じ形でマンチェスター・シティに移籍、Jリーグで実績を残す前の若手有望株が欧州行きの決断が続く

 NHK によりますと、ガンバ大阪に所属する食野選手がマンチェスター・シティに完全移籍することになったとのことです。

 ただ、食野選手が今シーズンにマンチェスター・シティでプレーすることはないでしょう。なぜなら、プレミアリーグでプレーするために必要な労働ビザを取得できる見込みがないからです。

 その状況でも若手有望株選手が「移籍」を決断しているのですから、Jリーグが向き合わなければならない課題が浮き彫りになりつつあると言えるでしょう。

 

 サッカーJ1のガンバ大阪は21歳のフォワード、食野亮太郎選手がイングランドプレミアリーグの強豪、マンチェスターシティーに完全移籍すると発表しました。

 (中略)

 マンチェスターシティーにはことし1月、22歳のディフェンダーで6月に日本代表も経験した板倉滉選手が完全移籍したうえで、オランダ1部のフローニンゲンに期限付きで移籍していて、関係者によりますと、食野選手も同じように他の海外クラブへの期限付き移籍が見込まれています。

 

プレミアリーグのチームで(日本人選手が)プレーするには「就労ビザ」が必要不可欠

 日本人選手がプレミアリーグに所属するチームでプレーするのは「イギリスの就労ビザ」が必要不可欠です。ただ、これを取得することは簡単ではありません。

  1. 所属する代表チームでの出場時間
  2. 移籍金
  3. 年俸

 イギリス人のプレー機会を奪うことになる訳ですから、“奪う側” の外国人選手に「優秀であること」が求められるのは当然です。

 そのため、上記3項目のいずれかで「規定の数値を上回っていること」がビザ発給の要件になっているのです。ところが、若手有望株選手は「トップレベルでの実績は不足」しており、ビザ発給は難しい状況です。

 だから、イギリス国外の(就労ビザが取得しやすい)リーグに期限付き移籍をすることで研鑽を積むことが規定路線となるのです。

 

オランダやベルギーのチームに期限付き移籍となることが濃厚

 食野選手は「マンチェスター・シティが保有権を持つ」という形で、外国籍選手がプレーしやすいオランダやベルギーなどの “育成に主眼を置いた国” に期限付き移籍することになると思われます。

 これは日本人選手だけでなく、U-23 のリザーブチームに属する多くの選手に採られている手法です。

 若手選手は試合で実践経験を積むことが重要です。試合に出場しなくても飛躍的に成長ができるなら、「他のチームに期限付き移籍をさせる必要はない」と言えるからです。

 しかし、実際にはどのビッグクラブも保有権を持つ若手選手に出場機会を与えられるクラブに選手を送り込むことに熱心になっています。そのため、食野選手も板倉選手の時と同様に期限付き移籍をすることになるでしょう。

 

Jリーグの年俸規定も若手有望株の海外流出を加速させる要因の1つ

 日本代表に定着する前の若手選手が積極的に海外挑戦をするようになっている理由の1つは「Jリーグの年俸規定」です。

 Jリーガー初年度の年俸上限は480万円(C契約)です。A契約では700万円ですが、「代表チームでの出場時間に対する規定を満たす」との条件が付きます。そのため、ほとんどの若手有望株が年俸面で買い叩かれていると言えるでしょう。

 しかし、海外に移籍すれば1部の下位チームでも年俸1000万円超は提示されます。日本代表に招集される選手のほとんどが『海外組』ですから、海外リーグに挑戦する若手有望株選手は今後も続くことが予想されます。

 有望株選手の流出はJリーグの損失となるのですから、少なくとも年俸規定を見直す必要があるでしょう。

 『クラブライセンス制度』で各クラブの財政状況はJリーグ側が把握しているのですから、「新人選手に対する年俸上限を撤廃したこと」がクラブの経営破綻を招く原因になることはありません。

 『夢』を求めて海外挑戦をするならまだしも、報酬や年俸という『現実』でチャンピオンズリーグの下に位置するヨーロッパリーグにすら出場していないクラブに劣っていることへの対策を講じる必要があると言えるのではないでしょうか。