南海の特急ラピートよりも大きい亀裂が発見・報告された事例が重大インシデントに認定されなかったことは問題なのでは?

 大阪・難波と関西空港を結ぶ南海電鉄の特急ラピートの台車に亀裂が見つかる事件がありました。亀裂が生じた状態で列車の運行が続いていたことは要改善点です。

 ただ、「南海で見つかった亀裂」よりも「大阪メトロ・御堂筋線で見つかった亀裂」の方が大きく、こちらは『重大インシデント』に認定されていなかったと読売新聞が報じています。

 南海電鉄の対応を批判するだけでなく、大阪メトロからの報告を受けた国交省の対応も批判する必要があると言わざるを得ないでしょう。

 

 大阪メトロで今年7月、御堂筋線の台車に長さ約30センチの亀裂が見つかっていたことがわかった。大阪メトロは国土交通省近畿運輸局に報告したが、運輸安全委員会は重大インシデントに認定しなかったという。

 大阪メトロによると、7月17日に実施した定期検査で、台車の外枠部分に長さ約30センチ、幅1ミリ弱の亀裂が見つかった。長さ約14センチの亀裂が見つかり、重大インシデントに認定された南海電鉄の特急「ラピート」の台車と同じ会社が製造していたという。

 

南海特急『ラピート』で発見された亀裂への事後対応は妥当

 南海特急『ラピート』の台車で亀裂が発見された事件の対処は「妥当」と言えるでしょう。

 もちろん、異音が確認してから運行がしばらく続いたことは改善の余地があります。しかし、これは JR 西日本の新幹線車両で起きた台車の亀裂事故と似たケースであり、改善策を講じることは難しくはないはずです。

 むしろ問題視しなければならないのは「国交省・近畿運輸局の対応」です。

 ラピートの台車から発見されたのは「14cm の亀裂」でしたが、今年7月に大阪メトロから「30cm の亀裂が見つかった」との報告を受けても『重大インシデント』には認定しなかったのです。この対応の違いは大きく問題視されなければならないと言わざるを得ないでしょう。

 

ラピートと御堂筋線の台車を製造したのは同じ会社

 ラプートの台車で亀裂が発見される1ヶ月前に同じ会社が製造した台車を使う大阪メトロから「30cm の亀裂が発見された」と国交省・近畿運輸局に報告がありました。

 この時点で近畿運輸局は「重大インシデントではない」と判断しているのです。これは対応が疑問視されても仕方がないと言えるでしょう。

 大阪メトロは「定期検査で 30cm の亀裂」を見つけましたが、南海は「走行中の異音から 14cm の亀裂」が発覚しました。後者だけを『重大インシデント』と認定するのはリスクが高すぎます。

 もし、近畿運輸局が『重大インシデント』に認定して動いていれば、同じ会社の台車を使用している他社が緊急点検を行い、亀裂が大きくなる前に発見できた可能性があります。

 こうした状況にあるのですから、「近畿運輸局の認定判断が適切であったか」を見直す必要はあると言えるでしょう。

 

走行時の地下鉄車内は騒音が大きく、異音を聞き取りにくいという問題がある

 なぜなら、地下鉄の車内は走行時の騒音が大きく、異音が聞こえにくいという環境だからです。おそらく、南海の『ラピート』と同じ問題が起きていたとしても、「走行時の異音」で台車が気づくことは難しいと思われます。

 そのため、亀裂が一定の大きさを超えていたなら、『重大インシデント』に認定して対応に当たるべきだと言えるでしょう。

 どの鉄道会社も安全面に細心の注意を払っているはずですが、検査は効率的に行うべきです。同業他社で発生したインシデントは条件が揃えば自社でも発生するのですから、事業者に対しては原因と対策の一例を行政が通知しておいて欲しいところです。

 例えば、「特定の条件下では劣化や摩耗のスピードが想定よりも早い」との情報を知っていると知らされていないのでは大きな差が生じるからです。

 インシデントの発生によって明らかになる問題もある訳ですから、闇雲に批判すれば良いというものではない認識を持つ必要もあると言えるのではないでしょうか。