三菱航空機、大型受注に向けアメリカの『メサ航空』との具体的な協議に入ることで合意

 三菱航空機が70席クラスの機体を受注するためにアメリカの航空会社と協議することで合意したと NHK が伝えています。

 受注すれば、90席クラスに次ぐ2つ目の主力機種となります。70席クラスの機体はアメリカ市場で需要が高まっているため、新たな収益源に育てるきっかけとなるかが注目点と言えるでしょう。

 

 関係者によりますと、三菱航空機はアメリカの航空会社「メサ航空」との間で、座席数70席クラスの機体100機の受注に向け、価格などの具体的な協議を進めることで合意しました。

 2024年の納入を目指して協議を進める方針で、受注が実現すれば4000億円規模の売り上げになると見られます。

 三菱航空機はこれまで、90席クラスの400機余りを受注していますが、現在最大の市場とされるアメリカで需要が高まっている、70席クラスの機体を新たな主力機種と位置づけ、開発に力を入れています。

 

『運用協定』による制限が維持されたアメリカ市場では「70席クラスの機体」に対するニーズが大きい

 アメリカ市場では「大手エアライン」と「地域航空会社」が『運用協定』を締結し、棲み分けを図っています。具体的には「座席:最大76席」と「最大離陸重量:39トン」が地域航空会社に条件として課されています。

 これは「地域航空会社が『基幹路線』に参入することで値下げ合戦が勃発することを防ぐ」という意味合いからできた取り決めです。

 地域航空会社は「ハブ空港と地方空港を結ぶ路線を運行すること」を大手エアラインから委託されることで業績を軌道に乗せたケースも多く、2012年に上述の条件ができた経緯は止むを得ないと言えるでしょう。

 だから、『70席クラスの機体』へのニーズは以前から存在していたのです。

 

当初は『運用協定(= スコープ・クローズ)』の内容が緩和される方向だった

 アメリカの地域航空会社にとっては “足かせ” となっている『運用協定』ですが、当初は座席数や最大離陸重量に関する上限は緩和される予定でした。

 しかし、2019年時点で上限が緩和されることにはなっておらず、地方航空会社は経営戦略の変更を強いられる形となっています。

 三菱航空機の MRJ-90 シリーズは「90席近くの座席数」を前提に設計されているため、座席数を調整しても機体の最大離陸重量に大きな変化はありません。(最大離陸重量が規定にわずかだが超過しているとの指摘もある)

 したがって、座席数の上限規定を定めた『スコープ・クローズ』が緩和されないことが現実味を帯びたため、最初から70席クラスで設計されている MRJ-70 シリーズに該当する機体へのニーズが以前よりもアメリカで高まっているのです。

 

『90席クラスの機体』をアメリカ市場で主力に位置付けるのは現時点では難しい

 なお、三菱航空機が『90席クラスの機体』をアメリカ市場で主力機種に位置付けるのは『スコープ・クローズ』が改定されるまでは難しいでしょう。

 すでに受注を受けている機体分に関しては “発注者” が「『スコープ・クローズ』の緩和を前提に購入契約を締結したのに、一方的に反故にされたことで生じた違約金を負担しろ」と大手エアラインを訴える可能性があり、例外的に運用が容認される可能性は残されています。

 しかし、新規に『90席クラスの機体』を受注することは以前よりも困難になっているため、『70席クラスの機体』に注力することが経営戦略として適切と言えるはずです。

 国産旅客機ビジネスの経営を軌道に乗せることができるのかが注目点と言えるのではないでしょうか。