人道上の問題を抱えるベネズエラが『国連人権理事会』の理事国に選出され、人権派のメンツが丸つぶれとなる

 国連総会で行われた『人権理事会』の理事国を選ぶ投票で人権侵害が問題視されているベネズエラが理事国に選出されたと朝日新聞が報じています。

 人権状況を審査する理事会の理事国に「人道上の問題で批判される国」が選出されたのですから、『人権』を語るに値しない組織であることは明らかです。勧告を気にするのは外国からの視線を気にする日本のような国に限定されるため、コスト削減の対象とすべき組織と言えるでしょう。

 

 政情不安が続く南米ベネズエラが17日、国連総会(193カ国)の投票で、加盟国の人権状況を審査する「人権理事会」の理事国に選ばれた。任期は来年1月から3年間。

 (中略)

 ベネズエラが属する「ラテンアメリカ・カリブ海諸国」の今回の理事国改選数は2カ国で、ブラジルが153票、ベネズエラが105票を得てそれぞれ当選した。ベネズエラの選出を阻止するため、今月3日にコスタリカが急きょ立候補したが、96票で及ばなかった。

 投票後、米国のクラフト国連大使はツイッターで「ひどい人権侵害者が人権理事会に加わることが許されるなんて、不当としか言いようがない」と非難した。

 

人権派リベラルの自己満足に過ぎない国連人権理事会

 国連加盟国の人権状況を審査する『人権理事会』ですが、実態は「人権派リベラルが自己満足をする場」に留まっていると言わざるを得ません。これは「人権」に対する価値観が加盟国によって異なるため、足並みがそろうテーマが限られるからです。

 おそらく、加盟国の足並みが揃うのは「自らの意見を述べることすら制限されている事例」でしょう。

 「政府は貧困問題を訴える国民の声を無視している。その証拠に対策について何ら議論すらしていない」との不満すら述べられない国があるなら、ほぼ全会一致で批判されるはずです。

 ですが、“不満の内容” が政権転覆を呼びかける内容であったり、発言者が国際テロ組織との関係が疑われる場合に「『自由な発言』をどこまで許容するか」は各国によって線引きが異なります。

 また、タブー視されている案件も国によって異なるのですから、「人権」というオブラートに包むことには限界があります。その結果、上っ面だけの当たり障りのない提言となるため、『国連』の看板が使いたい活動家以外は距離を置く結果を招いてしまっていると言えるでしょう。

 

隣国からの支援物資の受け入れを拒否するベネズエラでも人権理事会の理事国に就任できる

 人権理事会の存在が低いのは「加盟国の多くが必要としていないから」でしょう。理事国になるメリットを見出している国が少ないなら、ベネズエラのような国が無投票に近い形で理事国に選出される事態を招くのです。

 一方で他国から人権侵害を批判されている国は『人権理事会の理事国』になるメリットはあります。これは理事国という立場から人権理事会で発表される提言を骨抜きにする動きをできるからです。

 具体的には「人権侵害を批判される理事国同士で結託し、人権理事会の活動成果をゼロにしてしまう」という手法です。

 審査結果を発表できなければ、人権理事会の存在価値はゼロになります。つまり、審査結果を出せないように「審査」や「報告書の取りまとめ」の段階で紛糾させれば、“目的” を達成することは容易になるのです。

 その結果、猛反発を受ける「現実に起きている人権侵害」に対する追求は及び腰となり、「現実には存在しない漫画などの表現上の人権侵害」を追求することで成果を出したと言い張る茶番が続出するのです。このような運営が常態化するのですから、国連が資金難に陥ったところで誰も同情しないのです。

 

諸外国から見た「ベネズエラ国内の人権侵害」は対応の優先順位は低いという現実

 人権派リベラルは『国連人権理事会』を重要視していますが、「一部の加盟国しか重要視していない」という現実に目を向ける必要があります。

 「人権侵害が問題視されるベネズエラが理事国に選出されるのはおかしい」との主張には多くの国が賛同するでしょう。しかし、その状況を是正するために外交資源を費やす国は少数になるはずです。

 これは「ベネズエラ政府がベネズエラ国民の人権を侵害していること」に対処する優先度が高い諸外国は少ないことが理由です。「ベネズエラ政府がベネズエラに駐在中の自国民の人権を侵害している」こととは事情が異なるため、揉め事に介入する動機がどの国にも低いためです。

 他国の問題に介入するほど国内情勢が安定している国はないでしょう。日本を含め、多くの国が「遠い国の人権侵害問題よりも優先的に対応すべき国内問題」を複数抱えています。そのため、見向きされる可能性が低い現状を変えることは困難なのです。

 

 少なくとも、活動家や人権侵害(が疑われる)国が私物化している現状を自浄できなければ、人権理事会は解散を迫られることになるでしょう。ベネズエラ以外にも人権侵害が問題視されている国が理事国を務めている状況を是正することが人権派の役割と言えるのではないでしょうか。