宮根誠司氏のような「競技の実況ができないアナウンサー」が中継を担当するから、“競技外の目立つ物” に救いを求めるのだろう

 東京オリンピックのマラソンと競歩が札幌で開催されることになりましたが、首都圏のワイドショーが「札幌バッシング」を展開する状況となっています。

 その代表例が『ミヤネ屋(日テレ系)』で MC を務める宮根誠司氏です。「実況アナ泣かせ」と札幌開催に不満を述べていますが、これは競技を実況するだけの能力がないアナウンサーの言い訳に過ぎません。

 古舘伊知郎氏の “プロレス実況” を他の競技に持ち込もうとする悪しき風習を絶たなければ、視聴者からの批判は強くなる一方と言わざるを得ないでしょう。

 

宮根誠司氏が言及した内容

 宮根氏は自身が MC を務める番組『ミヤネ屋』で「東京オリンピックのマラソンと競歩の札幌開催」を取り扱った11月1日の放送で次のように発言しました。

  • (札幌のマラソンコースは)実況アナウンサー泣かせ
  • 東京だったら「雷門が見えてきた」や「東京タワー」見えてきたと名所を言いながら実況できる

 マラソン競技の実況を担当しているアナウンサーであるにも関わらず、視点が「東京の名所紹介」を担当するナレーターになっていることを指摘しなければなりません。

 これは実況アナウンサーが「競技には興味を持っていない」と言っていることと同じです。もしくは、「競技にスポットを当てた実況ができない」のでしょう。だから、旅番組のように沿道の風景に言及することで競技実況を回避しているのです。

 競技よりも明らかに優先度の低い「コース沿道にある名所の有無」を重要視しているのですから、民放のスポーツ中継レベルに視聴者が嫌悪感を抱くことは避けられそうにないと言わざるを得ないでしょう。

 

「展開があまり動かない」と思われがちなマラソン実況では誤魔化しが難しい

 宮根氏のように「マラソンコースの沿道にある名所」を気にするアナウンサーは競技を実況する能力に不安を覚えているのでしょう。だから、実況時に使えるネタを競技以外に求めているのです。

 もし、マラソンの競技にスポットをきちんと当てるなら、以下の項目が実況ネタとなるでしょう。

  • 「コースのコンディション」と「優勝候補の確認」
  • (この後に訪れる)最初の仕掛けどころ
  • 仕掛ける選手がいるとすれば、誰が口火を切りそうか
  • 抜け出した選手と後続選手のギャップ(= 差)の推移

 展開が目まぐるしく動くことが少ないマラソン競技ですが、競技にスポットを当てて実況することは十分に可能です。「集団の様子」に注目しつつ、「その中から誰がどのタイミングで仕掛けるのか」を中心に伝えることが実況ネタになるからです。

 ただし、問題もあります。それはマスコミが “応援実況” という形で肩入れする日本代表選手が脱落してしまうと視聴率的にオイシイ部分が消えてしまうということです。

 レース先頭の実況には面白みがありますが、そこから脱落した選手を画面に長く映し出されると実況的には厳しいものがあります。ただ、日本代表選手は “(実力的に)振り落とされる側” であることを考えると、レースに焦点を当てた中継をするほど日本代表選手が映らないという(テレビ局にとっての)問題があります。

 だから、“競技以外で言及できる要素” をテレビ局のアナウンサーである実況が欲するのでしょう。なぜなら、視聴者が「挽回は無理」と感じてチャンネルを変えられることは避けたいことだからです。

 

首都圏のワイドショーが「マラソンの札幌開催」に文句を言うのは「都内各地の名所で観戦した感想」というコンテンツを失うから

 マラソン競技の札幌開催に否定的なのは『ミヤネ屋』だけではありません。『ひるおび(TBS系)』なども同様です。これは札幌開催によって「自分たちが目論んでいた映像コンテンツ」を失うことになるからでしょう。

 具体的には「マラソンコースの沿道に番組制作陣を送り、都内の名所が見える場所で観戦している人による競技を見た感想を繋ぎ合わせた映像コンテンツ」です。

 制作コストはタダ同然で目論んでいたのでしょうが、札幌開催が決定してしまったことで “当て” が外れてしまいました。だから、自分たちの恨み節が「札幌バッシング」という形で滲み出てしまっているのでしょう。

 既得権益を奪われたことに反感を示すのは自然な反応と言えますが、アナウンサーが自らの実況能力を疑問視させるような発言は迂闊でした。テレビの視聴率が落ち込む原因は「実況する対象を見誤っているテレビ局」が大きな要因になっていると言えるのではないでしょうか。