愛媛県が韓国との国際線を維持するために「職員の私費利用と各部局から報告」を求めていた事態が明らかになる

 毎日新聞によりますと、愛媛県が『松山・ソウル便』の搭乗率を上げるために県職員に私費利用を促し、各部局には利用予定者数の報告を求めていたことが明らかになったとのことです。

 業務上優位にある者が「私的財産の使い方」に介入しているのですから、強要に該当する行為と言わざるを得ないでしょう。ところが、中村知事は「何が問題なのか分からない」と記者会見で述べる有様です。

 利用予定者数の報告を求めておきながら、「問題なのか分からない」は通用しないと言えるでしょう。

 

 日韓関係が悪化する中、松山市とソウルを結ぶ航空路線の搭乗率を上げようと、愛媛県の国際交流部門が部局ごとの目標人数を示して、私費での韓国旅行を職員に促していたことが1日、県への取材で判明した。「目安」として掲げた目標は10~12月の3カ月間で660人とし、各部局から利用予定者数の報告も求めていた。

 

松山空港は「国内線に依存する地方空港」という現実

 松山空港は2018年の利用者数が300万人を超える空港ですが、利用者の大部分が国内線を使っています。羽田便が156万人、伊丹便が56万人と東京や大阪への移動ニーズで利用されている地方空港と言えるでしょう。

 国際線は言いますと、愛媛県が発表した数字で約10万人という状況です。就航先はソウル便(チェジュ航空・週3〜5便)、上海便(中国東方航空・週2便)、台北便(エバー航空・週2便)の3つのみとなっています。

 上述のように、松山空港の国際線は韓国便に依存しています。

 過去にはアシアナ航空が松山空港への路線を運行していましたが、2016年に撤退。この時は前年は約4万人だった国際線の乗客数が3万人にまで落ち込んでおり、これが愛媛県のトラウマとなったことで、職員に「私費での利用」を要求している可能性は十分にあると言えるでしょう。

 

問題は「なぜ、ソウル線の私費による利用だけの強いるのか」ということ

 県が職員に対し、松山空港を発着するソウル線の私費利用を求めることは問題です。なぜなら、職員を雇用するという優位性にある県が “私費を” 県政のために拠出せよと要求していることと同じだからです。

 この批判に対し、県は「強制ではない」と弁解するでしょう。しかし、利用予定者数の報告を “県が” 要求しているのですから、拒否した職員に対し、人事や査定などで報復することは目に見えています

 「松山空港の国際線利用を活発化させること」が目的なら、韓国・ソウル線に特化する必要はありません。上海線でも台北(=台湾)線でも問題はないはずです。

 人気路線となれば、就航させている航空会社が増便させます。逆に市場で不人気となれば、減便を決定するでしょう。韓国が日本ボイコットをする中で就航先の日本が路線維持のために利用を強いること事態が滑稽なことと言わざるを得ないでしょう。

 

愛媛県は「汗をかく方向」を間違えている

 愛媛県の中村時広知事は記者会見で以下のように言及したと報じられています。

 中村時広知事は5日、「何が問題なのか分からない。県民の皆さんにソウル線の利用を呼びかける我々が汗をかくということが大事だ」と述べ、ノルマやペナルティーはなく問題はないとの認識を示した。定例記者会見で質問に答えた。

 「県の職員がソウル線を私費で利用すること」を “汗をかく行為” と正当化しようとしていますが、そこに県からの強要が入っているから問題なのです。

 愛媛県がすべきは「県民にソウル線の利用を呼びかける(広告を出す)」までであり、「私費で利用すべき」と職員に要望することは一線を越えています。しかも、利用予定者数の報告まで求めているのですから、これは問題です。

 ただ、韓国は「リピーター客が絶望的に少ない」という問題を抱えており、訪韓外国人観光客数に苦戦しているという実情があります。そのため、県民にソウル線の利用を呼びかけたところで効果が得られないという現実を直視しなければ、行き詰まるリスクは高い状況だったのです。

 

 市場で人気がない中で県が税金を投入する形で維持する必要があるのは公共サービスに限定されます。「公共交通機関の維持」もそれに該当しますが、「国際線の維持」はそれには該当しないはずです。

 経営面での逆風に直面している韓国の航空会社が路線縮小に走るのは予想されたことです。それによって松山線を減便されると愛媛県のインバウンドにマイナスが生じることで選挙の際に逆風が吹くことを嫌った知事の “要望” が思わぬ形で露呈した一件と言えるのではないでしょうか。