トランプ大統領が『パリ協定』からの離脱を国連に正式通告、中国が対象外となっている温室効果ガスの排出量制限は無意味だ

 NHK によりますと、アメリカのトランプ大統領が『パリ協定』からの離脱を国連に正式通告したとのことです。

 二酸化炭素の排出量は中国が約 30% でトップです。アメリカは世界全体の排出量の 15% を占める2位ですが、排出量トップの中国は「努力目標」に過ぎないため、排出量の削減に本腰を入れる責務はありません。

 そのため、世界第2位の “経済大国” である中国に具体的な行動を義務付けることができなければ、『パリ協定』は環境活動家が自己満足するだけのツールになることでしょう。

 

 トランプ政権は4日、パリ協定からの離脱を国連に正式に通告したと発表しました。

 パリ協定は4年前の2015年に国連の会議で採択され、187の国と地域が締結して、世界の温室効果ガスの排出量を2050年以降に実質的にゼロにすることを目標に掲げています。

 トランプ大統領は石炭産業などを意識して就任前から協定からの離脱を公約に掲げていて、4日、支持者を前に演説し「私は、一方的で金がかかり、恐ろしいパリ協定からの離脱を発表した」と述べて公約の実現をアピールしました。

 これに対し野党 民主党の大統領選挙の有力候補は相次いでトランプ大統領の決定を厳しく批判しています。

 

現時点で世界最大の温室効果ガス排出量を誇る中国が「排出量の削減義務」を負っていないことが問題

 トランプ大統領は2017年頃から『パリ協定』に対する不満を公言しており、『パリ協定』からの離脱を正式に通告することは不思議ではなかったと言えるでしょう。

 なぜなら、中国が温室効果ガスの排出量削減義務を負っていないからです。

 中国は世界で最も温室効果ガスを排出している国であり、世界全体の約3割を排出しています。2位に付けるアメリカの排出量が世界全体に占める割合は 15% ですから、中国にも制約を設けようとしない国際協定は守った国が損をすることは目に見えています。

 “経済を重視する国家首脳” が『パリ協定』に対して否定的な見解を示すことは当然と言えるはずです。

 

環境活動家は「コスト増で企業が逃げ出した先進国の雇用問題」には責任と取らない無責任な立場

 トランプ大統領など『パリ協定』に消極的な意見を示す人々が懸念している理由は「電力コストが大きくなり、製造業が逃げ出してしまう」という部分でしょう。

 環境活動家は原子力発電や石炭火力発電という「発電コストが安く、一定量の発電を続けられる電源」に否定的です。その一方で太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーを高く評価していますが、それらは「発電コストが高く、安定した発電ができない電源」という特徴があります。

 『パリ協定』を達成するために環境活動家の提言を受け入れてしまうと、国内の電力事情は一気に脆弱なものになってしまうことでしょう。

 電気代が高額なものになるのですから、製造業は拠点を途上国に移転する動きが加速するはずです。その結果、企業が逃げ出す先進国の雇用情勢は悪化することになるのです。

 この将来が目に見えているから、『パリ協定』に批判的な人がいなくなることはないでしょう。そうした人々は「経済政策にまで責任を持たない無責任な立場の環境活動家」よりも当事者が強いと言えるはずです。

 

“先進国の経済活動に足かせを付けようとする環境活動家” は中国にとって都合の良い存在

 中国政府にとって、先進国で経済性を無視した環境保護を声高に叫ぶ活動家は便利な存在ですなぜなら、「先進国の経済を失速させてくれる」ことに加え、「企業の生産拠点を中国に持ち込んでくれる」からです。

 これほど有能な存在は見当たらないですし、活動家らは「環境保護」という “自らの正義” に酔いしれて突き進んでくれるのですから、(資金援助などで)後方支援をするだけで(中国政府は)最大限の成果を得ることが可能です。

 このような裏事情が存在するのであれば、環境活動家や環境保護団体が中国に対する苦言すら述べない理由を説明することは容易です。

 世界第2位の経済力を持つ国を「途上国」と扱いことは不適切ですし、大国として手本を示すべきと注文を付けることはできるはずです。

 しかし、“地球の環境問題” を取り組む上で絶対に触れなければならない中国による環境汚染に言及することを頑なに避けているのですから、政治的な背景を抱えた活動であることから脱却することは難しいと思われます。

 アメリカの『パリ協定』の脱退を批判するのであれば、「アメリカと中国は『パリ協定』に基づき、排出量の削減義務を負うべき」と要求する必要があると言えるのではないでしょうか。