韓国が「(2019年の)年末までに日本が “ホワイト国” に戻すと言及した」と声高に主張する理由

 韓国が日本との軍事情報包括保護協定(= GSOMIA)の破棄撤回を表明した際に発表したことに対し、菅官房長官が韓国の主張内容を記者会見で否定したと NHK が報じています。

 GSOMIA と輸出管理強化を絡める形で「日本が輸出管理強化の撤回に取り組むと約束した」と韓国は事実を歪めて発表したのです。日本側が否定するのは当然ですが、韓国がそのような内容を発表した背景に言及することにしましょう。

 

 菅官房長官は、午前の記者会見で、「韓国側の発信の一つ一つについて、コメントすることは生産的ではない。いずれにせよ、政府として謝罪した事実はない」と述べました。

 そのうえで、「輸出管理の見直しは、制度を適切に実施するうえで必要であり、GSOMIAとは全く異なる問題だ。輸出管理については、韓国側からWTOプロセスを中断する通報があったことを受け、今後、関係機関で対応がなされていく」と述べました。

 

『GSOMIA 破棄撤回』を表明した韓国政府が合わせて表明したこと

 韓国政府は『GSOMIA 破棄の撤回』を表明しましたが、「条件付きである」と主張しています。この条件が韓国にとって都合の良い内容になっており、意図的と言わざるを得ないでしょう。

  • 韓国はいつでも GSOMIA を破棄できる
  • 経産省の「個別審査で輸出を許可する方針に変化はない」との発表は事実と異なる
  • 上記に対する抗議を行い、日本側からの謝罪があった
  • 輸出管理強化の撤回には約1ヶ月を要すると述べており、それが実現されなければ GSOMIA の終了を検討

 要するに、「『GSOMIA 破棄の撤回』を行ったのだから、日本側も『輸出管理強化の撤回』を行え」と一方的に要求しているのです。

 GSOMIA と輸出管理を絡めているのは韓国ですし、日本が “韓国が勝手に決めた設定” に配慮する必要はありません。また、「日本側の主張が間違いであることを認めている」とのフェイクニュースを韓国大統領府が流していることも問題視されるべきと言わざるを得ないでしょう。

 

韓国が「年末までに日本が韓国を “ホワイト国” に復帰させる」と主張する背景

 韓国は「12月中に日本が韓国をホワイト国に戻す」と意図的な誤報を流していますが、これは経産省の発言を都合良く切り取ったことが理由でしょう。

  1. 韓国が『グループA(= 旧・ホワイト国)』に復帰には以下の3点を満たすことが必須
    • 両国間での信頼関係の構築
      → 現状では3年間も対話がない
    • 通常兵器に関する輸出管理不備の是正
    • 輸出審査体制および人員の脆弱性の改善
  2. パブリックコメント
  3. 閣議決定
  4. 上記2〜3の手続きを行うために1ヶ月は必要

 経産省は “輸出管理体制に問題がある韓国” への輸出管理を強化する際にパブリックコメントや閣議決定を経る行政手続きに約1ヶ月の時間をかけました。当然、逆のこと(= 輸出管理の緩和)を行う際にも同様の期間が必要となります。

 「輸出管理の緩和には上述した『1』から『4』を行うことが必要」と経産省が説明したところ、韓国側は(肝心の『1』を無視して)最後の『4』で言及された「1ヶ月程度」の文言だけを切り取る形で “成果” として発表したのでしょう。

 日本のマスコミも与党・自民党に属する政治家の発言をこのような形で都合良く切り取って既成事実として報じていますし、それを韓国政府がやっただけです。手口として珍しくはないですが、信頼関係の構築が不可能であることを日本の有権者に韓国政府が突き付けた現実は重く見る必要があると言えるはずです。

 

日本側の歯切れが悪い理由は「韓国の輸出管理体制が日本側の要求を満たす可能性があるから」

 日本政府の発言が韓国と比較して断定形が用いられていない理由は「輸出管理強化を緩和する余地が残されているから」でしょう。

 日本は「韓国の輸出管理体制の不備」を理由に「日本から韓国への輸出管理を強化」しました。つまり、「韓国が自国の輸出管理体制が抱えている不備を改善」することで、日本は「韓国に対する輸出管理基準を緩和」する可能性が現実にあるのです。

 要するに、「韓国に対する輸出管理基準を緩和することはない」と結論づけることは不可能であり、日本側の “公式発言” は含みを持たせた形にならざるを得ません。その結果、世間に「歯切れが悪い」との印象を残すことになるのです。

 “真摯な対応” をしていれば当然のことですが、詐欺師はこれを悪用します。自分たちは「これが正しい」と断言し、相手のことを「言い切れない = 信用できない」とのレッテル貼りをすることで騙そうとすることが常套手段です。

 詐欺師の行為には細心の注意を払う必要がありますが、片棒を担ぐメディアは批判されなければならないと言えるのではないでしょうか。