在韓米軍の駐留費を巡るアメリカと韓国の隔たりは埋まらず、年内の妥結は難しい状況に

 在韓米軍の来年の駐留費を巡るアメリカと韓国の協議が依然として続いていると NHK が報じています。

 協議が妥結しない理由は「韓国がアメリカの要求する負担増を拒んでいるから」です。アメリカが “中国や北朝鮮への傾倒が強まる韓国” に配慮する安全保障上の理由は見当たらないのですから、韓国が譲歩するか次第と言えるでしょう。

 

 アメリカと韓国は、韓国に駐留するアメリカ軍の来年の経費の負担をめぐって、ことし9月から協議を続けていて、4回目の協議が4日までの2日間、ワシントンで行われました。

 (中略)

 韓国の連合ニュースによりますと、アメリカ側は新たにアメリカ軍の人件費や家族を支援する費用などの負担を求めていて、韓国側に求める負担額は、ことしの5倍以上に上るとしています。

 これに対し韓国側は、これまでの枠組みを維持すべきだとして難色を示し、双方の主張の隔たりは埋まらなかったものとみられます。

 

アメリカ側は「交渉決裂なら基地で雇用中の韓国人職員は解雇」と恫喝

 韓国が在韓米軍の駐留費として負担しているのは年間で約1000億円です。この現状に対し、アメリカは「年50億ドル(約5400億円)の負担」を要求したため、韓国が拒絶している状態です。

 要求を高めに提示するのは交渉時によくあることです。韓国側が「拒否」することをアメリカは “織り込み済み” でしょうし、「韓国がどれだけ譲歩して駐留費を出すか」が注目点と言えるでしょう。

 ただ、アメリカは韓国に対して圧力を加えています。『楽韓web』が紹介している今年10月に朝鮮日報が報じた記事によりますと「アメリカは交渉が年内に妥結しないなら、来年4月から在韓米軍基地で働く韓国人は無休休暇と通告」したとのこと。

 韓国とアメリカは「在韓米軍は不要」という方向性で両国政府が一致してしまっています。不要と考える理由は異なるものの、方向性が一致しているのです。在韓米軍の規模縮小は避けようがない状況と言えるでしょう。

 

「『自主国防』を掲げる韓国(の左派)」と「韓国への信頼が揺らぐアメリカ」

 まず、韓国の左派は『自主国防』を悲願としています。だから、ムン・ジェイン政権下で国防費が伸び続け、間も無く『日本の防衛費』を上回る状況です。

 ただ、自主国防をしようとすると在韓米軍が「目の上のたんこぶ」となります。ですから、韓国は「在韓米軍に出て行って欲しい」と思っていますし、そのように仕向けるための態度を採っているのです。

 一方でアメリカの韓国に対する信頼も大きく毀損しています。

 “北朝鮮の利益となるように奔走するムン・ジェイン政権” にアメリカ兵の安全を任せる訳には行きませんし、GSOMIA を破棄してアメリカのメンツを潰す有様です。

 また、ムン・ジェイン政権の外交アドバイザーであるムン・ジョンイン特別補佐官が「中国の核の傘に加わるのが良い」との発言をするのですから、懐疑心が芽生えるのは当然のことでしょう。だから、アメリカは韓国に対して強硬な姿勢を持ち続けているのです。したがって、米韓両国が妥協点を見出すことは簡単ではないと考えられます。

 

“裏切りに走った韓国” が期待する「現状の枠組みを維持」が実現する可能性は低い

 政府間で「在韓米軍は不要」との方向性が一致してしまっているのですから、妥結に達することは簡単ではありません。

 アメリカは「韓国の負担分が “アメリカの希望額” を下回ったままなら、交渉の打ち切り」を決断するでしょう。一方で韓国は「韓国の負担が “韓国の希望上限額” を超過するなら、交渉の打ち切り」を決断すると予想されます。

 つまり、両国政府が自国民に対して「相手の主張は受け入れられないほど身勝手なものだった」と説明することが可能で、交渉決裂の責任を相手国に転嫁できる状況にあるのです。これでは妥結の見通しが立たないことは当然と言えるでしょう。

 韓国は「米韓同盟は『血盟』だから、この程度の “要求” で揺らぐことはない」と高を括っていますが、アメリカから見れば「同盟国であるにも関わらず、裏切る真似を平気でするのは理解不能」となるのです。

 在韓米軍基地という利権を持つアメリカ軍は「規模縮小」に反対するでしょう。しかし、これは「制服組」の視点であり、裏切られた際に大損害を被る「現場組」の視点は含まれているとは言えません。

 日本の隣国で安全保障上の駆け引きが現在進行形で行われている現状を把握しておく必要はあると言えるのではないでしょうか。