朝日新聞が社説で『IR 参入を巡る外国企業からの収賄問題』を扱うも、問題点を「IR だけ」に特化した不自然な論調となる

 朝日新聞が12月26日の社説で「収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕された秋元議員」を取り上げ、カジノを含む IR (統合型リゾート)推進に疑問符を投げかけています。

 ただ、この社説には “引っかかり” を覚えることは事実です。なぜなら、政権のスキャンダルを追求する姿勢としては不十分ですし、忖度した論調となっているからです。この姿勢では「権力を監視すること」は不可能と言わざるを得ないでしょう。

 

カジノが容認されていない日本で「ギャンブル依存症の発生原因」には触れない朝日新聞

 朝日新聞の社説で最初に違和感を覚えるのは第2段落で記された以下の部分でしょう。

 ギャンブル依存症の増加や不正な資金洗浄(マネーロンダリング)、治安の悪化といった数々の懸念があるなか、16年12月にIR推進法が成立した際、衆院内閣委員長として採決を強行したのが秋元議員だった。

 まず、日本国内ではカジノは容認されていません。つまり、ギャンブル依存症は日本で存在する状況にあってはならず、この表現自体が不適切なのです。

 もちろん、反社会勢力が運営する「裏カジノ」は存在します。それが原因でギャンブル依存症を発症する人はごくわずかでしょう。したがって、社説で使うなら「ギャンブル依存症の発生や社会問題化が懸念される」という表現であるべきでした。

 しかし、朝日新聞はギャンブル依存症の患者数が現状よりも懸念する表現を社説で用いたのです。これは『ギャンブル依存症の発生源』に言及しておらず、社説で用いる表現として問題と言わざるを得ないでしょう。

 

パチンコや公営競技(= 競馬・競艇・競輪など)がギャンブル依存症の発生源であり、効果的な依存症対策は講じられていない

 日本でギャンブル依存症を発症させる原因は「パチンコと公営競技(= 競馬・競艇・競輪など)」です。これは否定しようのない事実でしょう。

 これが表立って批判されていない理由は「前者(= パチンコ)は『遊戯』であり、後者(= 競馬・競艇・競輪など)は『公営競技』であって『ギャンブル』ではない」という詭弁がまかり通っているからです。

 「アルコールが禁止されているイスラム教の国だからアルコール依存症はない」と言っていることと同じです。アルコール成分を含む飲料を『アルコール以外の別名称』で流通していれば、アルコール依存症は発症します。それと同じなのです。

 「ギャンブルは日本国内で許可されていない」という建前がありますから、当局や政治が依存症対策に本腰を入れる要素は多くない状況です。もし、有用な依存症対策が講じられているなら、「IR 関連法には〇〇と同水準の依存症対策がない」と批判しているはずです。

 そうした “正論” は社説に掲載されていないのですから、「問題を IR (= 統合型リゾート)に押し付けようとしているだけ」と言わざるを得ないでしょう。

 

見直す必要があるのは「IR 法案」ではなく、「外国からの献金」である

 朝日新聞(など左派・リベラル勢)の姿勢に疑問符が付けられる要因は以下のような主張を展開しているからでしょう。

 秋元議員は潔白を主張しており、慎重な捜査が求められる。一方で容疑が事実であれば、副大臣時代に制定されたIR実施法の立案・審議過程や、その後の政府部内の手続きにも、大きな疑問符がつく事態である。

 安倍政権にダメージを与えられる疑惑で「慎重な捜査」を求めているのです。「徹底した捜査」を求めるべき案件ですし、任命責任など「政権の責任」を声高に追求していることでしょう。

 しかし、そうした行動はせずに自重した論調に留まっています。また、『IR 法案』だけを問題していることも不自然です。

 なぜなら、問題視される必要があるのは「外国企業からの収賄」だからです。『カジノを含む IR』だからアウトではありません。外国勢力が工作目的で政治家に資金を渡しているケースもアウトと認定されなければならないからです。

 要するに、『カジノを含む IR』という「受け手」を問題視するのではなく、『外国勢力からの資金提供』という「出し手」に関する規制を強める必要があります。そうしなければ、日本のマスコミが応援する主義・主張には外国政府の影響が入り込みやすくなり、民族自治が脅かされる事態となるからです。

 

 「権力を監視することがマスコミの役割」と豪語するなら、秋元議員が関係する疑惑の全容を報じることが前提です。それができなければ、「忖度しているだけ」と批判されることになるでしょう。

 慎重な捜査ではなく、徹底した捜査を要することは必須です。その上でパチンコなどマスコミ自身が “タブー視” している事案にも切り込むことがジャーナリズムです。

 現時点で強烈な反発を示す関係者の少ない『IR』だけを悪者にした追求は茶番です。茶番は有権者に見透かされる時代ですから、相手の顔色を伺わずに批判をすることができる気骨を持っているかが浮き彫りになると言えるのではないでしょうか。