弘中惇一郎弁護士に懲戒請求、「ゴーン逃亡への理解」と「過失の疑い」がある状況では批判が起きるのは止むを得ない

 カルロス・ゴーン被告の弁護人を務めていた弘中惇一郎弁護士に対し、懲戒請求が所属する東京弁護士会に出されていることが判明したと産経新聞が報じています。

 ゴーン被告の逃亡には「弁護士の働き」が “一定の貢献” をしたことは否定できません。弘中弁護士の行為が「お咎めなし」となるようでは司法への信用は低下することになるでしょう。

 ただ、東京弁護士会は「福島への放射線デマを流す OurPlanet-TV を『人権賞』に選ぶ」ような政治色に染まっています。したがって、懲戒処分が下される可能性はゼロに近いと言えるでしょう。

 

 レバノンに逃亡した日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告(65)の弁護人、弘中惇一郎弁護士に対し「故意か重過失により出国させた」として東京弁護士会に懲戒請求が出されていたことが16日、関係者への取材で分かった。

 (中略)

 弘中氏は逃亡が発覚した当初、「保釈条件に違反する許されない行為だが、気持ちが理解できないかと言えばそれは別問題だ」などと話していた。

 懲戒請求について弘中氏の事務所は産経新聞の取材に対し「コメントすることはない」としている。

 

世間が “弘中弁護士の行為” に理解を示す方が問題

 弘中惇一郎弁護士に対して懲戒請求が出された理由は「批判を呼ぶ行為をしている」と見なされたからでしょう。

  • 保釈を要求
    → 保釈後の所在確認などは「警察」の責務
  • ゴーン被告の逃亡に理解を示す
    • 「気持ちは理解できなくない」とコメント
  • パスポート保持問題
    • 「入管法に抵触する」と訴えてゴーン被告に正規パスポートを所持させる
    • 逃亡発覚時に「有効なパスポートはすべて保管している」と主張
    • 「1通保持していたことを失念していた」と撤回し、「鍵付き」と弁明
  • 日産が手配していた警備会社に対し、「人権侵害」を理由に訴訟をチラつかせて監視を停止させる

 密出国という犯罪行為に理解を示していることは法治国家の否定です。この点を理由に懲戒処分が下されたとしても不思議ではありません。

 次に、ゴーン被告がフランスの正規パスポートを保持していた点でも虚偽発言をしています。当初は「すべて事務所で預かっている」と主張していましたが、実際は自分たちが「裁判所に所持申請」を行っていたのです。

 「イスラエルの入国印が押されていないフランスのパスポート」という “リクエスト” を受けて動いているはずですから、失念しているようでは弁護士としての力量の衰えを指摘せざるを得ないでしょう。

 また、『人権侵害』を理由に “日産が手配していた警備会社” の監視を妨害していることは問題です。なぜなら、このロジックは “警察” にも通用するからです。

 「保釈された者の日常生活を監視するのは人権侵害」と弁護士が主張すれば、保釈者の所在を把握することは困難になります。保釈された者の所在確認に弁護士は何の責任も負っていないのですから、保釈条件そのものを見直さなければならない状況にあると言えるでしょう。

 

自身のブログで「司法制度への不満」と「ゴーン擁護」をした高野隆弁護士の行為も問題

 弁護団の代表だった弘中惇一郎弁護士に懲戒請求が出されていますが、弁護団の一員である高野隆弁護士の行為も同様に問題視されるべきでしょう。

 高野弁護士は自身のブログで「公正な裁判は期待できない」と日本の刑事司法制度を批判。その上で、「ゴーン被告と同じ財力・人脈・行動力がある人が同じ経験をすれば、同じことをすると容易に想像できる」との趣旨を記述しています。

 ゴーン被告は会社の金を私的流用した特別背任の疑いがかけられ、家族名義の口座を使った資金移動が容疑となっているのです。

 『金』と『名声』で判決を買うことができる欧米の先進国で行われている “公平な裁判” を日本では期待できません。セレブの弁護人になれば弁護士が儲けることができるのですから、『弁護士が巨額報酬を得られる司法』へと舵を切らせたい弁護士が世論に訴える姿は今後も続くことになるでしょう。

 「特別背任が発覚して逮捕された外国人経営者が日本の司法判決を受ける前に国外逃亡することは理解できる」と司法制度を全否定する見解を “弁護士資格保持者” が表明しているのですから、弁護士会として支持するのかの立場表明は避けられないはずです。

 

「保釈者自身に所在証明をさせる」など保釈条件を変更させ、姿を消した場合は請求弁護士にも責任を追わせるべき

 保釈された人物が再犯や逃亡をしたとしても、保釈に奔走した弁護士は何の責任も取りません。治安維持を担う警察が批判され、現場の警察官の負担が増すだけです。これはあまりに不公平と言わざるを得ないでしょう。

 したがって、保釈条件を以下のどちらを選択する形に変更すべきです。

  1. 「GPS 装置の着用」
    • GPS 装置着用を義務付け
    • 義務を行った場合は保釈を取り消し
    • 費用は保釈者(または弁護人)が負担
  2. 「居住地の所轄警察署での所在確認」
    • 保釈者が居住する地区を所轄する警察署を訪問し、逃亡していないことを証明する
    • 所在確認の頻度は保釈条件時に決める(例: 1日1回・17時から18時の間に実施)
    • 保釈が責務を怠った場合は保釈を取り消し

 微罪で逮捕された被告が保釈されたケースなら、「居住する地区の所轄警察署に所在確認で本人が訪れる」で十分でしょう。これなら、現場の警察官の負担は大きく増えませんし、保釈者が姿を消した場合は『GPS 装置の着用』など条件を厳しくできるからです。

 一方で(再犯が問題となる)傷害事件や世間の注目度の高い重大事件は『GPS 装置の着用』を基本とすべきです。保釈が認められた人物が再犯や逃亡しても、現状では弁護士の責任が問われることはありません。

 少なくとも、『GPS 装置の着用』を義務付けることで事件の再発や逃亡を防ぐために尽力する責務は弁護士にもあるはずですし、GPS 装置の貸し出し費は「保釈者負担」でも、破損・逃走時の弁済は「弁護士負担」とすべきでしょう。

 そのぐらいの負担は弁護士も負うべきですし、それすら拒むなら弁護士による “政治的要求” は聞く必要すらないはずです。弁護士会が自浄作用を働かせないなら、弁護士自治は「一部弁護士の暴走」にお墨付きを与えるだけです。歯止めが効いているのかが問われていると言えるのではないでしょうか。