春節を前に中国で新型ウイルス肺炎が拡大、習近平総書記が対策を指示する事態となる

 NHK によりますと、中国で新型のコロナウイルスが原因と見られる肺炎の感染が拡大していることを受け、習近平総書記が対策を指示したとのことです。

 中国では24日から帰省や旅行などで大勢の人々が移動する『春節』が始まります。そのため、国内での感染拡大を予防するための措置を講じることを習総書記自らが指示したのでしょう。日本の関係機関も同様の措置を講じておく必要があるはずです。

 

 国営の中国中央テレビは20日夜のメインニュースで、新型のコロナウイルスによるとみられる肺炎の感染が広がっていることについて、習主席が旧正月の「春節」の前後は多くの人が密集して移動し予防対策が非常に重要だと指摘したうえで「効果的な措置をとって断固、感染拡大を抑えるよう」関係部門に重要指示を出したと伝えました。

 

『ヒトからヒトへの感染』が疑われるが、「患者との濃厚接触」が条件である可能性が高い

 中国で猛威を振るいつつある『新型コロナウイルスによる(と見られる)肺炎』ですが、厄介な点は「ヒトからヒトへの感染」が疑われる状況にあるからです。

 WHO が22日にスイス・ジュネーブで緊急会合を開くを報じられており、最上級の警戒が必要な状況と言えるでしょう。中国も「ヒトからヒトへの感染」を疑っていますから、日本の関係当局も “その前提” で動く必要があります。

 ただ、注意すべきは『ヒトからヒトへの感染』が起きている可能性が高いものの、インフルエンザほどの感染力は現時点ではないということです。

 『ヒトへの感染』が確認されたのは「医療関係者」や「患者の見舞いに訪れた家族」です。密室に近い状況で患者と長時間の接触をしていますから、恐怖を覚えるような感染力ではないことを念頭に置く必要があると言えるでしょう。

 

鉄道や航空機での移動時は「乗客同士の濃厚接触」が起きやすく、感染拡大のリスクが高くなる

 習総書記が関係部門に「『新型コロナウイルスによる(と見られる)肺炎』への対応を指示」したと CCTV が報じた理由は感染拡大のリスクが現実にあるからでしょう。

 24日から中国では春節に入ります。つまり、中国の大都市から人々が鉄道や航空機などを利用して一斉に移動する時期を迎えるのです。

 鉄道や航空機は「密室に近い状態」で乗客が「長時間接触」することになります。これは「患者の見舞いに病院を訪れた家族」と “ほぼ同じ環境” ですから、『新型コロナウイルスに感染した乗客』がいれば感染拡大は防ぐことが難しくなります。

 日本で確認された症例は「中国・武漢に家族の見舞いで訪れた在日中国人」でした。

 発熱の症状がある中で日本での医療サービスを利用するために解熱剤を服用することで空港での検疫を誤魔化して突破したのですから、同様の行為をする人物が現れる前提での水際対応が重要になると言えるでしょう。

 

人の移動が容易になるほど、「自覚症状のない患者」が移動することによる問題に直面することになる

 航空便が整備されたことで海外旅行へのハードルが下がりました。どの国の庶民に対しても航空機を利用した旅行が容易になったからです。

 つまり、移動する人の絶対数が増えたのです。どの国も “お金を落とす外国人旅行者” を歓迎します。旅行者の増加を止める政策を積極的に行う政府はないでしょう。

 ただ、旅行客の数が増えると、何らかの病気や疾患を抱えた人が含まれる確率が高くなります。日本国内では感染例が長く発生していない病気や疾患を外国人旅行者が日本で発症する可能性があるのです。

 自覚症状のないままで入国したケースや日本の医療制度を利用する目的で検疫を誤魔化すケースが出てくることでしょう。したがって、入国時の検疫体制だけでなく、国内の衛生管理体制も見直す必要がある状況なのです。

 現状は『中国からの観光客が日本にウイルスなどを持ち込む事例』が懸念されていますが、『中国からの観光客がウイルスなどを持ち帰る事例』も懸念されることになるでしょう。

 

 習総書記が来日するなら、後者の事例を念頭に置いた衛生管理体制の強化で歩調を合わせる価値はあると言えるのではないでしょうか。