日本ハム、北海道・北広島市に建設する新球場のネーミングライツを国内最高額で契約することに成功

 プロ野球・北海道日本ハムファイターズが北広島市に建設する新球場の命名権(ネーミングライツ)を開業の3年前に国内最高額と見られる金額で日本エスコンに売却したと日刊スポーツが報じています。

 年5億円以上ですから、日本国内で過去最高額と言えるでしょう。それだけにファイターズという貴重な優良コンテンツを流出させてしまった札幌市の対応は不適切だったと言わざるを得ません。

 

 日本ハムが29日、北海道・北広島市に23年春開業予定の新球場名が「ES CON FIELD HOKKAIDO(エスコンフィールドHOKKAIDO)」に決まったと発表した。ネーミングライツ契約したのは不動産総合開発事業の日本エスコン(本社・東京)。国内最高額とみられる年間5億円以上、契約期間は20年1月から10数年で総額60億円規模の長期大型契約を着工前に結んだ。

 

「早期公表」だけでなく「発表時期」もしたたかだったファイターズ

 新球場の命名権が販売されるのは「完成後」が中心です。建設中に命名権が取得されたケースはリーバイス・スタジアム(NFL, 49ers)などがありますが、着工前に命名権契約が締結されることは異例です。

 しかも、日本国内での過去最高額に当たる年5億円超であることは発表されています。

 Jリーグのガンバ大阪が本拠地として利用するパナソニック・スタジアムの命名権が年2億円ですから、コンテンツ力の差は大きいと言わざるを得ないでしょう。

 また、発表時期も絶妙でした。プロ野球は2月1日から各球団が一斉にキャンプインします。マスコミが「キャンプ地に選手が到着した」というニュースでプロ野球への注目度を高めている最中に「国内最高額で命名権を販売」との発表したのです。

 発表時期についても宣伝効果が最大となる工夫が施されていたと言えるでしょう。

 

国内最高額だった日産スタジアムの命名権料は2010年の時点で「年1億5000万円」に下がっている

 日本ハムファイターズが日本エスコンに国内最高額で命名権を売却したことを報じるニュースで、日産スタジアムの命名権料が 4.7 億円と紹介されていますが、これは過去の話です。

 確かに、2004年10月に締結された5年間の命名権契約は年 4.7 億円でした。しかし、その契約が満了した後は同額での売却ができず、年 1.5 億円の再公募に日産が応じ、現在も同じ名称が使われています。

 横浜市は2日、日産自動車と結んでいる横浜国際総合競技場(日産スタジアム)など3施設の命名権契約を5年間延長したと発表した。契約金額は年1億5000万円。

 新たな契約期間は2016年3月から21年2月末まで。

 自治体が所有するスタジアムに億単位のネーミングライツを支払ったことで得られるリターンは少ないことが現状です。メディアは「紙面の制約がある」との理由で『略称』を使う傾向が強いですし、露出度はイベントによる稼働率によって左右されるからです。

 プロ野球は露出度が大きいことに加え、ファイターズは “自前のスタジアム” です。したがって、今回のネーミングライツ売却は双方が納得する形になっている可能性が高いと言えるでしょう。

 

「高校野球の試合会場」としての利用価値も意外と大きい

 また、新球場の周囲は「Fビレッジ」と命名されたボールパークになることが確定しています。ホテルなどの複合施設も誘致するでしょうから、プロ野球以外の利用用途も広がると予想されます。

 その中でも高校野球の試合会場としての利用価値はあるはずです。

 高校野球は1年に春・夏・秋の3度の大会が行われ、いずれもトーナメント戦です。準々決勝以降は1週間の集中日程で開催される形が採用されていますが、「準決勝以降はエスコン・フィールドで開催しないか」と高野連に打診する価値はあるでしょう。

 将来のファンを囲い込むことができますし、高校野球の試合前後にFビレッジでの消費活動が期待できます。「試合会場に来るのは選手だけではない」のですから、プロ野球以外ででも『ファイターズ』の価値を高めることは可能なはずです。

 自前スタジアムを保有しているため、ファイターズはチームの価値を高める施策は惜しまないはずです。“殿様商売” をしている札幌市との違いは今後さらに如実になると言えるのではないでしょうか。