厚労省は「感染確認数」を発表するだけでなく、“新型コロナウイルスの患者数” をグラフ化して配信すべきだ

 中国・武漢で確認された新型コロナウイルスによる感染が広がり、厚生労働省による情報公開に不満の声が上がるようになっています。

 特に、「感染確認数だけがメディアで1人歩きしていること」は反省材料と言わざるを得ないでしょう。「過度に心配する必要はない」と言うなら、少なくともグラフ化して説明に当たるべきでした。

 “退院している人” の人数への言及がなければ、『深刻な病』という誤解が生まれることになります。「情報公開の方法」を見直し、『厚労省が公式に作ったグラフ画像』をネットに流すだけでも違いは生まれると言えるでしょう。

 

渡航歴や国籍での条件分けを拒絶し、「国内感染」に一括して感染者数を発表し続けた厚労省が蒔いた種

 マスコミが「パンデミック」と騒ぐための燃料を提供したのは厚労省です。『渡航歴』や『国籍』による条件での “場合分け” をしていれば、「過度にナーバスになる必要はない」との見解に説得力はあったでしょう。

 なぜなら、2月14日までに厚労省が発表した「新型コロナウイルス感染症の現状」から次のようなグラフを作成できたからです。

画像:新型コロナウイルス感染症の感染者の推移

 2月上旬に日本国内で感染したのは「バスの運転手」と「バスガイドの2名」、それに「京都で中国人の接客をしたアルバイト」の4名だけです。

 それ以外は「中国・武漢に渡航歴を持つ人々」でした。“チャーター機で帰国した日本人” や “武漢などからの中国人観光客” などですし、この段階であれば「過度に心配する必要はない」という説明に理解は示されていたと思われます。

 

“日本で発症した中国人観光客” はほとんどが退院している

 『新型コロナウイルス感染症』の感染力は「インフルエンザと同等」と言えるでしょう。中国・湖北省への渡航歴がある人々は日本国内で12名が発症しましたが、9名が既に退院しています。

 厚労省が発表している情報では “働き盛りの年齢” である人が多く、呼吸器系などに疾患を抱えていないのであれば2週間ほどで回復することが期待できます。

 ただし、『新型コロナウイルス感染症』は特効薬が存在しないため、肺炎の症状を抑える『対症療法』に頼らざるを得ません。つまり、医療機関に患者を受け入れる余力がないと重症化する患者が続出することになってしまう恐れがあるのです。

 医療機関の対応能力を維持するために「入国制限」を設けることは適切ですし、無制限で大量の感染者を受け入れる決断を下したクルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス』の受け入れは「失敗」と言わざるを得ないでしょう。

 人道的な理由であれ、外国船籍で発生した患者を “日本の医療機関” に受け入れると患者数だけ病床が埋まります。日本国内の居住者が入院する際の受け入れ先が減少してしまうことは本末転倒ですから、「上限を設ける必要がある」と注文を付ける必要があるでしょう。

 

「マスコミは『退院した感染者』には興味がない」という事実を踏まえた情報発信が必要

 メディアが報じたいのは「感染が拡大している」というニュースです。「収束に向かっている」となると世間からの注目は少なくなるため、“退院した感染者” への興味はありません。

 そのため、厚労省が現状よりも積極的に退院者数を含めた情報を発信する必要があるはずです。ちなみに2月18日に厚労省が発表した『新型コロナウイルス感染症』の情報は次のとおりです。

  1. 国内事例
    • PCR検査実施人数: 523
    • PCR検査陽性者: 53
      • 無症状者: 9
      • 有症状者: 44
        • 退院: 12
        • 入院中: 31
        • 死者: 1
  2. チャーター機による帰国者の事例
    • PCR検査実施人数: 764
    • PCR検査陽性者: 13
      • 無症状者: 4
        • 退院: 2
        • 入院中: 2
      • 有症状者: 9
        • 退院: 4
        • 入院中: 5

 マスコミが報じるのは『PCR検査が陽性となった人の合計値』です。『退院した人の合計値』には興味を示していないのですから、この部分は情報発信をする段階で工夫をする必要があると言えるのではないでしょうか。